国会前デモ、オタクによる反戦デモで出会った「生きた言葉」たち

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「直近ではまったく不要な発言により中国からの資源を途絶えさせ、さらにトランプに媚びて、イランとまともに交渉もせず、生活に不可欠な原油もナフサも枯渇させ、しかも『枯渇ではない目詰まりだ』と言い募って外交的な努力をろくにしていません。 

原発や断層がちりばめられているこの国土、食料自給率も、ものすごく低い。人口も減って高齢化している中で戦争する余力など、この国にあるわけがない。

それなのに、ひとつはアメリカからの要求に応じるため、他方では国政運営の不備や人々の不満を外からの脅威へと逸らすために、『戦争する国への改造』だけを熱心にひたすら進めています。

国家情報局とか国旗損壊罪とか緊急事態条項とか、いずれも剥き出しの弾圧や統制につながるものです。  

愚かな自分たちへの怒りを抑えつけるためだけの施策を自民党は進めようとしているのです」

この言葉は5月29日、国会前で開催された「戦争させない緊急アクション」でマイクを握った東大大学院教授・本田由紀氏のスピーチの一部だ。SNSでも拡散されているのでご存じの方も多いだろう。

この日が5回目となるという「WE WANT OUR FUTURE」による国会前のデモ。もちろん私も駆けつけたのだが、もう「老若男女」としか表現のしようがないくらい、あらゆる世代の人々が集っていた。

ステージ周辺を固めるのは若い世代。その前を親と手を繋いで通り過ぎる子どもがコールのリズムに合わせて踊っているかと思ったら、デモ隊の中にはティラノサウルスやウサギ、カエルなど人類以外の着ぐるみの姿も目立つ。犬を連れた人の姿もあるし、現代が令和であることを忘れるほど、由緒正しいオールドスタイルで古めかしい演説を繰り広げる一団もいる。

この日国会前に集まったのは、主催者発表によると約1万人。同様の取り組みは全国150カ所で開催されていたというのだから、いったいどれほどの人が参加したのだろう。

そんなデモから遡ること6日の23日にも、私は国会前にいた。この日開催されたのは、「オタクによる反戦デモAct2」。3月28日に一度目が開催されてから2カ月、またしてもオタクたちが集まったのだ。

29日と同様、この日の参加者も「多彩」な人々。デモ隊から突き出す幟には、「安心して推し活したいアイドルオタクの会」「攻撃的なコールに乗れない穏健派の会」「平和と人権と完全受注生産をこよなく愛する人の会」「全日本食パン30枚切り推進委員会」などなどの言葉。

この日も多くの漫画家やアニメーターがスピーチしたのだが、印象的だったのは『中国嫁日記』著者である井上純一氏の言葉。

彼は世間の「デモなんて意味がない」という声に対し、デモで社会は変えられる、声は届いていると力強くスピーチ。そうして「世界を見ても同じです」と続けた。

「バングラデシュでは抗議のうねりが首相退陣につながりました。ケニアでは増税法案が止まりました。スリランカでは大統領が去りました。韓国では戒厳令に抗議する市民の声が大統領罷免につながりました。すべて10年以内のできごとです!」

確かに、世界各地で人々の力が政治を確実に変えている。

次に登壇したアニメーターの中野彰子さんは、数年前に見た悲しい光景の話をした。

それはウクライナ戦争の際、首都のキーウが撮影された映像。爆撃された瓦礫の中に、『新世紀エヴァンゲリオン』のキャラクター・綾波レイのイラストがあったのだという。

「そこにいた人はアニメが好きで、日本のアニメを見たり、グッズを買ったりしていたんでしょう。その人は今どうしてるんだろう。すごく心配になりました」

デモ中盤には、一般参加者による「オタクの決意」というスピーチコーナーもあった。

「ミスティックだてぐん」と名乗る男性は、オタクの切実な思いを訴えた。

「例えばプラモデル、例えばフィギュア、例えばドール。その材料は大半がプラスチック、石油です。作っているのは中国や東南アジアの各国です。それらの国と喧嘩をし、仲違いすれば我々の趣味は詰みます、終わるんです。現在、世界経済は世の中が平和であることで最大の効率化がされるようにできているんです。武器を売り買いしていたら一部の人は儲かるかもしれませんが、全体としては経済効率は下がる一方なんです」

「我々は趣味を追求したいんです。推し活をしたいんです。それができない世の中はどんなに言い訳しても、悪です」

また、「推し未亡人組合 ただでさえ心折れてるのにこれ以上折るな」というピンクの幟をはためかせた女性・たかさんは、「どうしても国会議事堂前で政府に抗議したくて」北海道から来たと自己紹介し、国家情報局設置法案を批判。過去に治安維持法でどれほど有望な画家や作家が夢を奪われたかを訴えた。

「手と足をもいだ丸太にしてかへし」
「万歳とあげて行った手を大陸において来た」

この川柳を紹介したのは、川柳で文学系同人誌即売会に参加しているという森砂季さん。同人誌に投稿した反戦川柳によって治安維持法で逮捕され、拷問され獄中で亡くなった鶴彬について、語ってくれた。

この日は多くの著名人からのメッセージも読み上げられたのだが、記憶に残っているのは翻訳家の岸本佐知子氏からのメッセージ。

「私がツイッターで最初に『国が悪の組織でつらい』と呟いたのは、かれこれ3年くらい前だったかと思います」から始まるメッセージで、岸本氏は、少し前まで日本にはいろいろ問題はあるけれど、「基本、自分は結構いい国に生まれたなと思っていました」と続けた。

「インフラはしっかりしてるし、世界に誇れる国民皆保険はあるし言論の自由はあるし銃もない。何より絶対に戦争しないと誓った美しい憲法を持っている」

だけど「国くん」はちょっと「ドジっ子」だから国民を幸せにしそこなっているんだな……と生暖かく見守る気持ちでいたという。

「あれ、なんか違うかもと思い始めたきっかけがなんだったのか思い出せません。

コロナの時のお肉券だったかもしれません。それともアベノマスク? モリカケ問題? インボイス? 中抜き? オリンピック? 紙の保険証廃止? 裏金議員? 統一教会? 国くんは全然私たちを幸せにしようとはしてくれてないじゃん。というか積極的に私たちが嫌がること、苦しむことばかりやってるじゃん。しかも資金源、全部私たちの税金じゃん。やってること、まんま悪の組織じゃん」

そうして「国が悪の組織でつらい」と呟く回数は、高市政権になってから飛躍的に増えたという。

そんな「オタクによる反戦デモ」があった日、ある数字が「過去最多」となった。

それは毎週土曜日、「もやい」と「新宿ごはんプラス」によって都庁下で開催されている食品配布。コロナ前、近隣の野宿者数十人が並んでいたその場にコロナ禍で「住まいはあるものの一食でも節約したい人」が増え続け、なんとこの日、初めて1000人を突破したのだ。

背景を見れば、4年に渡る物価高騰に追い討ちをかけるホルムズ海峡封鎖の影響があるわけである。並んでいる中には、コロナ禍で生活が破綻し、そこからの立て直しに時間がかかっているケースも少なくない。世論調査の結果を見るまでもなく、一般庶民のもっとも大きな関心事は「物価高」だ。この1、2年の家賃・住宅費の高騰も大打撃である。

それなのに国会で議論されていることといえば、国旗損壊罪において、お子さまランチの旗はその対象に含まれるか含まれないかなどといった「貴族の遊び?」みたいなこと。

それだけではない。国家情報局設置法や高額療養費の自己負担引き上げ、また外国人に関するさまざまな制度の厳格化――ほとんど嫌がらせというか、「国民の不満」をガス抜きするためのツールのようにしか思えない――などなど「よりによって今これ?」みたいなことばかり。

冷静に考えるとゾッとするほどに、高市政権には庶民の生活が「見えていない」のである。だからこそ、改憲の「時は来た」なんて言えるのだろう。

と、書けば書くほど空しくなってくるが、そんな状況だからこそ、デモ現場で出会う言葉に救われ、勇気づけられている。そう、本当に生きた言葉が、血の通った人間の言葉がそこには無数に散らばっているのだ。スピーチだけではない。手書きのプラカードに、印刷された幟に、一人ひとりの悲願が焼き付けられている。

そんな大規模デモ、私はこれまでイラク反戦や脱原発デモなど何度か経験があるわけだが、過去の状況と比較しても、あらゆることが悪化している。

例えば「生きさせろ!」系のデモをよくしていた頃に開催された年越し派遣村。もちろんリーマンショックで放り出された人たちは本当に大変な目に遭ったわけだが、十数年前と比較して、現在、ホームレス状態にある人はびっくりするほど若年化し、女性も増えた。20年近くかけて、この社会は「若者」や「女性」を守る余力すら失ったのだ。

一方、15年には安保法制反対デモが盛り上がったわけだが、あの頃、世界は今ほど戦禍に包まれておらず、またこれほど先行き不透明で不安定な情勢ではなかった。何しろまだトランプ氏が大統領になっていなかったのだ。

こうして振り返ると、状況がいかに悪化しているかがよくわかる。いったい、どこが底なんだろう――そう遠い目になりそうなほどだ。そんな中、株価だけが異様に高いという現実に、最悪がまた更新された気分になっている。 

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