「許せる嘘」と「許せない嘘」の境界線
「許せる嘘」と「許せない嘘」の境界線 / Credit:Canvaプロフィール写真に一番よく撮れた奇跡の1枚を選ぶ。
年齢を1〜2歳だけ若く、身長をちょっとだけ盛る——出会い系アプリのプロフィールには、多かれ少なかれ「演出」が入り込むことがあります。
自分のプロフィールであれ相手のプロフィールであれ、この空気感は、利用経験者ならある程度想像しやすいものかもしれません。
では、どこからが「許せない嘘」になるのか。
ボゴリュボワ氏は、出会い系アプリの現在または過去の利用者796人に対し、年齢、性別、容姿、体重、経済力(社会経済的地位)、交際状況という6種類の嘘を描いた架空のシナリオを読ませ、それぞれの許容度を7段階(1が「全く容認できない」、7が「全く容認できる」)で評価してもらいました。
各シナリオには男性版と女性版が用意され、参加者はどちらかをランダムに読んでいます。
結果は鮮明でした。
最も強い拒絶を受けたのは性別の偽装で、93.1%が7段階の1〜2、つまり「許せない」側と回答しています。
これは退屈しのぎで異性になりすまし、相手を信じ込ませて楽しんだうえ、時には待ち合わせ場所まで相手の顔を見に行くというシナリオでした。
次いで、ネット上の他人の写真を自分として使う容姿の偽装が90.6%、12歳のサバ読みが81.6%、既婚なのに「独身」と偽る交際状況の偽装が78.5%、無職なのに弁護士を名乗る経済力の偽装が71%と続きます。
ところが体重の嘘だけは、拒絶率が37.7%に急落します。
許せる度合いを示す7段階の平均スコアで見ると落差はもっと明白で、他の5つが1.39から2.08の許せない側の範囲に収まる中、体重だけが3.03と唯一、許せる側に飛び出していました。
このシナリオの中身は「実際より約18kg少なく申告し、全身写真の投稿を避ける」というもので、単なる奇跡の1枚よりは踏み込んだ偽装です。
それでも強く拒否しなかった人は472人と、2位の経済力(223人)の倍以上に達しました。
18kgは、会えば一目でわかる差です。
それでも大目に見られたのはなぜか。
ボゴリュボワ氏の分析を追うと、参加者が重く見ていたのは嘘の大きさではなく、その嘘が「別の誰か」を作り出しているかどうかだったことが見えてきます。
他人の写真を使えば、待ち合わせ場所に現れるのは文字通り別人です。
性別を偽れば、そもそも探していた相手ではありません。
既婚を隠せば、築けるはずの関係そのものが最初から成立していません。
ところが体重の場合、目の前に現れるのはやはり同じ人物です。
ボゴリュボワ氏は、他人の写真を丸ごと使うような正体そのものを偽る嘘と比べれば、体重の差は程度の問題に見えた可能性があると指摘しています。
実際、オンラインデートの嘘は身元の根本的な偽装より、軽い脚色のほうが主流だと先行研究は示しており、参加者の線引きはその実態とよく重なっていました。
嘘にも「越えてはいけない線」があり、多くの人はほぼ同じ位置にその線を引いていた。
嘘の種類によって寛容さがここまで変わるとすれば、次に浮かぶ疑問があります。
嘘を評価する側の性格は、この線引きにどう影響するのか、という問題です。






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