ワクチン接種率が毎年1%下がるだけで2030年に甚大な被害
日本でも報告があるように、近年、麻疹などの感染症のワクチン接種率が世界的に低下傾向にあると言われています。
アメリカでも同様の問題があり、公的医療保険の仕組みが変わったり、コロナ禍以降ワクチンへの信頼が揺らいでおり、感染症に対するワクチン接種率の低下が大きな問題となっています。
イェール大学の研究チームは、こうした「接種率の低下」が将来的にどれほどの代償を社会に強いるのかを明らかにするため、膨大なデータを用いた分析を行いました。
彼らはまず、アメリカ全土の3,000以上の郡(日本の市区町村に近い単位)ごとに、子供たちのワクチン接種率を推定する「回帰モデル(Regression model)」を構築しました。
このモデルには、家族の所得や保険の有無といった経済的な要因も細かく組み込まれています。
さらに研究チームは、ウイルスが地域を越えてどのように広がるかを予測するために「重力モデル(Gravity framework)」という手法を用いました。
これは、都市間の距離や人口の多さに応じて、人々の移動とそれに伴うウイルスの伝播(でんぱ:病気が広まること)をシミュレートするものです。
これらの高度な「伝播モデル(Transmission model)」を組み合わせることで、単なる予測を超えた、地域ごとの詳細な流行のリスクと、それにかかる経済的な損失を導くことができます。
その結果、浮かび上がってきたのは驚くべきシナリオでした。
2025年時点の推計で、米国内ですでに2,181件の症例が発生しており、その社会的コストは約2億4,420万ドル(約370億円)に達しているとされます。
驚くべきことに、麻疹患者がたった1人出るたびに、社会全体では平均10万4,629ドル(約1,600万円)もの費用を支払っている計算になります。
このコストは地域によって大きく異なり、周囲の免疫力が低い地域ほど、1人あたりのコストが跳ね上がるという強い相関関係(-0.75)が確認されました。
さらに子供たち(0~6歳)の接種率が今の水準から毎年たった1%ずつ下がり続けた場合、2030年には麻疹の発生件数は1万7,232件と、現在の7倍以上に急増すると予測されました。
そして、その5年間で社会が支払うことになるコストは、累計で約77億7,000万ドル、日本円にして1兆円を超える莫大な金額に達することが分かったのです。









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