曲げると電気を生む「毛」のしくみ
口の中の菌が付いた、平たい上皮細胞(体の表面をおおう細胞)の写真です。今回の研究のものではありませんが、歯や歯ぐきのまわりには、こうした菌がすんでいます。Credit: Microrao / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)まず、磨き残した菌がなぜしぶといのかを見ておきましょう。
歯や歯ぐきにすむ菌は、互いにくっつき合ってネバネバした膜を作ります。
この菌の集まりはバイオフィルムと呼ばれ、歯垢もその仲間です。
膜があるので、つばを飲み込んだり舌でなめたりする程度では流されません。
歯磨きのあとに洗口液を使えば菌の戻りは遅れますが、体にとって良い菌にもきつく当たることがあります。
これまでにも、歯ブラシを強くする工夫は試されてきました。
たとえば、電気を帯びた粒を出して歯垢を寄せつけにくくする歯ブラシや、毛に殺菌成分を織り込んだ歯ブラシです。
ただ、前者は電源が必要で、後者は効き目が長く続くかに疑問が残っていました。
今回のチームは、曲げると電気を生むプラスチック「ポリフッ化ビニリデン(PVDF)」で毛を作りました。
馬の毛を植えた昔の歯ブラシです(イギリス・ロンドン、1870年以降のもの)。馬の毛は歯や歯ぐきにかなり硬かったとみられ、いまの歯ブラシの毛にはナイロンが使われています。今回のチームは、その毛を、曲げると電気を生むプラスチックに替えました。Credit: 作者不明 / Wikimedia Commons(CC BY 4.0)こうした性質を持つ素材は、圧電(あつでん)材料と呼ばれます。
磨くたびに毛がしなると、毛に電気が生まれ、つばや水の中で化学反応が起きます。
その反応で生まれるのが、活性酸素と呼ばれる、とても反応しやすい分子です。
活性酸素には、菌の細胞を傷つける力があります。
さらに、磨いていない間も毛の表面にかすかな電気を残し、菌がくっつくのを防ぐ狙いもあります。
つまりこの歯ブラシは、「動いている間の電気」と「止まっている間の電気」の2段構えで菌に向き合う設計なのです。






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