7月1日に開かれた福島県議会6月定例会で、ハフポスト日本版が問題を追及してきた“福島映画”が取り上げられる場面があった。
自民党・渡辺康平県議が一般質問で映画名を明示し、「震災と原発事故から15年が経過しても、いまだに『誤った福島像』が国内外に発信されてしまう現実が浮き彫りとなった」などと指摘した。
これに対し、福島県は「当該事案を含め、社会的反響や県民の影響を見定めながら対応していく」と答弁。
県が公の場で同映画を含む情報発信について触れるのは初めてだったが、具体的にどう対応するのか見えない回答が続き、議場がざわつく場面もあった。
経緯を振り返る
問題の映画は、“東日本大震災から10年後の福島”を舞台とした「こんな事があった」。
有名俳優が多数出演し、2025年9月から全国20カ所以上の映画館で公開されている。オランダ・ロッテルダム国際映画祭でも招待作品として上映された。
一方、作中には、原発事故の被曝によって主人公の母親が死亡したとする設定や、若い男性が鼻血を出して死亡するなど、現在の科学的知見と整合しない描写が複数盛り込まれている。
これらの描写について、記者が松井良彦監督に取材したところ、「事実と違ったことは描いてない」と明言。トークショーでは、「線量が1ベクレルでも反応する人もいる」などと主張していた。
問題はこれにとどまらず、大手新聞など少なくとも10メディアが、同映画の“宣伝記事”を掲載していたことも判明した。
福島を研究する社会学者で、東京大学大学院の開沼博准教授は取材に、映画を十分に検証しないまま記事として掲載・拡散したメディアの姿勢について、「福島の人々への差別や偏見の再生産に加担した可能性がある」と指摘している。

Keita Aimoto
「こんな事があった」議会で問題視
しかし、誤・偽情報を担当する福島県風評・風化戦略室は、この映画や“宣伝記事”を書いたメディアへの対応を公にしてこなかった。
ハフポストの取材に対しても、「国と情報共有した」とコメントするにとどめ、SNS上では県の対応を疑問視する声もあがっていた。
こうした状況の中で開かれた県議会6月定例会。一般質問に立った渡辺県議は7月1日、「震災から15年が経過した今日も、誤った福島像が映画やネット番組で拡散されている」と指摘した。
議会の場で「こんな事があった」という映画名を挙げ、科学的根拠に基づかない情報や描写が複数盛り込まれた問題ある映画だ、と断じた。
同映画が国内外で上映され、新聞社などメディア10社が“宣伝記事”を書いていた実態も説明した。
また、ハフポストが開沼准教授にインタビューした記事も引用。「誤りを正していく文化が十分に根付いてこなかった」という見解を紹介した上で、「なぜ福島に対してだけは、人権侵害につながりかねない情報発信が許されるのか」と投げかけた。
そして、「これまで福島県が(同種の情報発信に対して)主体的に抗議の声を上げ、誤った情報を指摘した、という話はほとんど聞かない」「県民の誇りを傷つけ、県民の努力を踏みにじる風評加害がなぜ放置されてきたのか」と尋ねた。
県の回答に議場ざわつく
県は内堀雅雄知事ではなく、風評・風化戦略担当兼原子力損害対策担当の半澤浩司理事が登壇。
「誤解や偏見に基づく情報が拡散されることで風評の影響が拡大する。国に万全な風評対策を求め、社会的反響や県民への影響を考慮しながら様々な形で情報発信を行う」と答弁した。
渡辺県議が再質問で、具体性に欠く答弁が議会のたびに繰り返されていると指摘すると、半澤理事は「正確な情報を粘り強く発信し続け、適切に対応していく」などと述べるにとどめた。
さらに渡辺県議は「適切に対応するとは具体的にどういうことか」と迫ったが、半澤理事は「当該事案を含め、誤った情報発信については、社会的反響や県民への影響を見定めながら対応していく」と答えるのみ。
煮え切らない答弁に、議場がざわついた。

6 日前
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