米国によるカーグ島制圧、リスクはどの程度か トランプ氏が検討する理由は

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2026.03.27 Fri posted at 12:40 JST

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米軍が制圧計画を立てているとも目されるイラン沖カーグ島の衛星写真/Gallo Images/Orbital Horizon/Copernicus Sentinel Data 2024/Getty Images via CNN Newsource

米軍が制圧計画を立てているとも目されるイラン沖カーグ島の衛星写真/Gallo Images/Orbital Horizon/Copernicus Sentinel Data 2024/Getty Images via CNN Newsource

(CNN) トランプ米大統領がイランとの「戦争に勝利した」と宣言する一方で、強襲揚陸艦、上陸用舟艇、そして数千人の海兵隊員と海軍兵士が同地域に展開されている。

この展開を受けて、米国がイラン沿岸沖に位置するサンゴ礁の島、カーグ島を占領する計画があるのではないかという臆測が飛び交っている。カーグ島はイラン経済の生命線で、同国の原油輸出の約90%を担う。

たとえ米国がこの小さくも戦略的に重要な島を占領できたとしても、果たしてそれが米国に十分な影響力をもたらし、イランに対してホルムズ海峡の再開を強要できる流れに至るのかどうか、専門家らは疑問視している。同海峡の事実上の封鎖により、現在世界的なエネルギー危機が深刻化している。

想定される地上作戦とそのリスクについて、分かっていることを以下にまとめる。

カーグ島とは

カーグ島はイラン沿岸沖合約8キロメートルに位置する細長い島で、大きさはマンハッタン島の約3分の1。米国当局は「イランの石油供給の要衝」と表現している。

島からは複数の長い桟橋が突き出す。周囲の海は大型石油タンカーが停泊できるほど水深が深いため、石油輸送にとって極めて重要な拠点を形成する。

イラン・カーグ島の石油施設/WANA via Reuters

カーグ島は長年にわたりイラン経済の要となってきた。1984年に機密解除されオンラインで公開された米中央情報局(CIA)文書は、同島の施設について「イランの石油システムにおいて最も重要な施設であり、その継続的な稼働はイランの経済的繁栄に不可欠」と記述している。

国際エネルギー機関(IEA)によると、ホルムズ海峡を迂回(うかい)する代替輸出ルートは存在するもののその数は限られており、大規模な実証試験は行われていない。

カーグ島の原油の貯蔵容量は推定約3000万バレル。データ分析企業ケプラーによれば、現在約1800万バレルの原油が現地に貯蔵されているという。ロイター通信が報じた。

今月初め、イスラエルの野党指導者ヤイル・ラピド氏は、このターミナルを破壊すれば「イラン経済は麻痺し、政権は崩壊する」と指摘。その上でイスラエルは「イランの油田並びにカーグ島にあるエネルギー産業をすべて破壊しなければならない」と宣言した。

米軍による地上攻撃はどれほど危険なのか

海軍の揚陸艦からの迅速な水陸両用作戦、襲撃、強襲任務を専門とする海兵遠征部隊(MEU)2個部隊が最近、中東に展開した。

MEUが参加した過去の軍事演習では、空を飛ぶ攻撃ヘリコプター、海岸に展開する部隊、そして海上に浮かぶ巨大な強襲艦艇の壮観な光景が繰り広げられていた。

北大西洋条約機構(NATO)の元最高司令官ジェームズ・スタブリディス氏は24日、MEUの艦艇は「非常に高い戦闘能力を備えている」と述べた。

しかしスタブリディス氏はブルームバーグの記事で、地上作戦を開始する前に、ホルムズ海峡を通過してペルシャ湾北部へ進軍する必要があると指摘。その過程でイランのドローン(無人機)、弾道ミサイル、そして海峡に敷設された機雷に対処しなければならないと警告した。

「カーグ島沖に展開した後も、海兵隊は島の周囲少なくとも約160キロで、制空権と制海権を確固たるものにする必要がある」(スタブリディス氏)

重大なリスクの一つは、イランが揚陸艦を攻撃する可能性があることだ。もう一つの懸念は、数千人と推定される島の住民(ほぼ全員が石油労働者)の処遇であり、彼らを「封じ込める」か避難させる必要があるとスタブリディス氏は付け加えた。

さらにこのような作戦が米国にもたらす戦略的影響力についても疑問を呈し、「仮にホルムズ海峡の開放についてイラン政府と交渉する意図があるとしても、残存する政権指導者たちがカーグ島を失うという脅威に屈するかどうかは不透明だ」と述べた。

「彼らはカーグ島のために何かを放棄することには難色を示すかもしれない」(スタブリディス氏)

米軍の犠牲者が出る可能性に加え、米シンクタンク「外交問題評議会(CFR)」の元会長リチャード・ハース氏は先週、カーグ島への作戦で「米国のミサイル備蓄がさらに減少する公算が大きい」との見方を示した。

米国がカーグ島制圧を検討している正確な理由は不明だが、ハース氏はオンラインプラットフォーム「Substack(サブスタック)」の自身のページに、「現地のみならず世界中の多くの人々が、これを米国によるイラン石油の奪取の試みと見なすだろう」と書き込んだ。

人工衛星画像が捉えたカーグ島と石油ターミナル=2月25日/Planet Labs PBC/Reuters
人工衛星画像が捉えたカーグ島と石油ターミナル=2月25日/Planet Labs PBC/Reuters

イランは米国の攻撃に備えているのか

イランのモハマド・バゲル・ガリバフ国会議長は25日、「イランの敵が、地域諸国の一つから支援を受けて」、イランの島の一つを占領する準備をしていると述べたが、具体的な島名は挙げなかった。

「敵のあらゆる動きは、我が軍の完全な監視下にある。もし彼らが一線を越えれば、当該地域の国の全重要インフラは、無制限かつ無慈悲な攻撃の標的となるだろう」。ガリバフ氏は25日、X(旧ツイッター)にそう投稿した。

これより前には「我々はこの地域における米国のあらゆる動き、特に部隊の展開を綿密に監視している」とも述べていた。

この問題に関する米情報機関の報告に詳しい複数の関係者によると、イランはここ数週間、カーグ島への米軍の侵攻作戦に備え、同島に罠(わな)を仕掛け、追加の軍事要員と防空システムを配備している。

関係者によると、同島には既に多層的な防衛網が敷かれており、イランはここ数週間で携帯式地対空ミサイルシステム(MANPADS)を追加配備したという。

また、イランは対人地雷や対装甲地雷などの罠を、海岸線を含む島周辺に仕掛けていると関係者は述べている。

米国が同島を攻撃したことはあるのか

既に攻撃している。今月初め、トランプ氏は、米国がカーグ島の「すべての軍事目標」を爆撃したと述べ、イランがホルムズ海峡の船舶航行を妨害し続けるならば、同島の石油インフラを攻撃すると脅迫した。

トランプ氏のSNSトゥルース・ソーシャルに投稿され、CNNが位置情報を特定した動画には、米軍が島の空港施設を攻撃する様子が映っており、映像全体を通して大きな爆発と黒煙が確認できる。

トランプ氏が13日夜にSNSトゥルース・ソーシャルに投稿し、CNNが位置情報を特定した映像には、カーグ島に対する米国の攻撃の光景が映っている@realDonaldTrump/Truth Social

トランプ氏は同日、カーグ島について「優先順位は高くないが、様々な選択肢の一つではある。私の考えもすぐ変わるかもしれない」と述べた。

しかし実際のところトランプ氏は、大統領になる数十年前の1988年前後、カーグ島侵攻に言及していた。当時の英紙ガーディアンとのインタビューでは「我が軍の兵士や艦船に一発でも弾丸が当たれば、カーグ島を徹底的に攻撃する。侵攻して占領するだろう」と語っている。

ある当局者が明かしたところによると、ホワイトハウスの複数の当局者らは、カーグ島を占領すればイランの精鋭部隊、イスラム革命防衛隊(IRGC)が「完全に破綻」すると考えている。それにより戦争の早期終結が実現するかもしれないとの認識を示しているという。

とはいえ政権内部では、こうした動きに慎重な向きも多い。とりわけ相当数の地上部隊の投入が必要となることを考えればなおさらだ。

地域諸国はどう反応するか

湾岸諸国の高官によると、域内の提携国はトランプ政権に非公式に働きかけ、戦争を長引かせないよう求めている。具体的には地上部隊を派遣してカーグ島を占領することに異議を唱えているという。

同高官は、米軍によるカーグ島占領は多数の死傷者を生み、イランによる湾岸諸国のインフラへの報復攻撃を招き、紛争を長期化させる恐れがあると懸念している。

イラン当局者も同様の警告を発している。

イスラエルが26日に殺害したと主張するIRGC海軍司令官のアリレザ・タングシリ氏は、昨年11月、ペルシャ湾に浮かぶイランの島々は「要塞(ようさい)化された拠点」だと述べていた。

「敵が過ちを犯せば、そこで決定的な報復を受けることになるだろう」。タングシリ氏はそう警鐘を鳴らしていた。

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