(CNN) 第98回アカデミー賞の授賞式が15日、米ロサンゼルスで行われ、ハリウッドの大スターたちが一堂に会した。スターらが素晴らしい映画作品の数々と映画そのものの持つ力を称賛する一方、現状世界で起きている苦難を忘れることはたとえ一晩だけであっても不可能なのだということを痛感させられる場にもなった。
歴史的な受賞や感動的な音楽パフォーマンスなど、喜びにあふれた瞬間はあった。しかし同時に、悲しみの要素もそこには確かに存在した。今年亡くなった偉大な俳優たちを追悼する時間が長く設けられた他、司会のコナン・オブライエンまでもが、「非常に混沌とした、恐ろしい時代」に生きていることを認める一幕もあった。
果たして今年のオスカーは、時を経てどのように評価されるのだろうか。国内外の混乱の中で開催されたこの授賞式は、困難な時代こそが素晴らしい芸術を生み出すこと、そして共に祝福することがいかに大切かを教えてくれたのかもしれない。
では授賞式の見どころを振り返っていこう。

「ハムネット」で主演女優賞を獲得したジェシー・バックリー/Mario Anzuoni/Reuters
栄冠逃すも敗北はせず
ホラー映画というジャンルを超えて創造性と文化の領域で偉業を成し遂げた「罪人たち」が、今回の圧倒的な栄光を勝ち取ると期待していた人は手を挙げてほしい。残念ながら、そうはならなかった。
結局、多くの点で受賞に値するもう一つの作品、「ワン・バトル・アフター・アナザー」が作品賞に輝いた。しかし、「罪人たち」が敗者というわけでは決してない。
合計16部門にノミネートされた「罪人たち」は、アカデミー賞98年の歴史の中で最多ノミネート作品として、授賞式に臨んだ。批評家から絶賛され、文化的に重要な作品であるだけでなく、興行収入でも大成功を収める作品は数少ない。それがホラー映画であり、黒人男性が脚本・監督を務め、主要キャストのほとんどが黒人だというのは、まさに別次元の偉業と言える。
トロフィーを手にすることは確かに素晴らしいが、本作は最も重要な点で成功を収めた。それこそが、最大の勝利と言えるだろう。
「ワン・バトル・アフター・アナザー」は作品賞以外にも監督賞など6部門で受賞を果たした。
主演男優賞はマイケル・B・ジョーダン

接戦とみられた主演男優賞レースは、「罪人たち」のマイケル・B・ジョーダンが制した/Kevin Winter/Getty Images via CNN Newsource
明確な最有力候補がいないことで注目を集めた今年の主演男優賞レースは、「罪人たち」で主人公の双子を一人二役で演じたマイケル・B・ジョーダンが栄冠に輝いた。
名前が読み上げられた時、ジョーダンは驚きを隠せない様子だった、子役出身のジョーダンが初めてオスカー像を手にすると、会場は割れんばかりの拍手に包まれた。
会場にいた家族に感謝の言葉を述べた後、ジョーダンは、これまで全ての作品で自身を起用したライアン・クーグラー監督に謝意を伝えた。
またシドニー・ポワチエ、デンゼル・ワシントン、ジェイミー・フォックス、ハル・ベリーなど、自身より前にオスカーを受賞した黒人俳優たちの名前を挙げ、「偉大な俳優たち、偉大な先人たちの中に立つことができて、とても光栄だ」と述べた。
主演女優賞は「ハムネット」のジェシー・バックリーに贈られた。
「プラダを着た悪魔2」のプロモーションは成功

オスカーのステージにサプライズ登場したアナ・ウィンター(左)とアン・ハサウェイ/Patrick T.Fallon/AFP/Getty Images
授賞式の途中で実質的にコマーシャルを挟むなら、これくらいのクオリティーは必要だろう。
今回はヴォーグ誌のアナ・ウィンター元編集長がオスカーのステージにサプライズ登場。トレードマークのサングラスも、少なくともしばらくの間は外していた。
伝説的な編集長であるウィンターはアン・ハサウェイと共に登壇し、衣装デザイン賞とメイクアップ&ヘアスタイリング賞の2つの賞をプレゼンターとして発表。賞はどちらも「フランケンシュタイン」に贈られた。
ウィンターとハサウェイは、マドンナの「Vogue」に乗って登場。この曲は、ハサウェイがメリル・ストリープと共演した映画「プラダを着た悪魔」で有名な楽曲だ。ストリープ演じるミランダ・プリーストリーは、ウィンターをモデルにしたキャラクターと言われている。 2006年の人気映画の続編が、5月1日に劇場公開される。
同点
短編実写映画賞では2作品が受賞を分け合うというアカデミー賞史上7度目となる珍事が起きた。同点での受賞となったのは「歌うたい」と「Two People Exchanging Saliva」の両作品。
アカデミー賞の歴史上、同点受賞は7回あるが、真の意味での同点受賞は今回で6回目だ。1930年代には、「ジキル博士とハイド氏」と「チャンプ」の2作品が主演男優賞を同時受賞した。当時の規定では、2人の候補者の得票数が3票以内であれば、両者が受賞することになっていた。現在では、得票数が完全に一致した場合のみ同点となる。
政治にも触れた司会者

下ネタのジョークから現実社会への深刻な洞察まで様々な話題に触れて観客の心をつかんだ司会のコナン・オブライエン/Kevin Winter/Getty Images
司会のコナン・オブライエンの仕事ぶりはなかなか見事だった。ユーモアを交えつつも自分なりのやり方で、我々が極めて奇妙な時代に生きていることを再確認させた。エプスタイン文書に関するジョークでは、会場から驚きや戸惑いの声が上がった。
しかし、露骨な政治的発言はほぼそこで止まり、以降は比較的無難な範囲に収めていた。
オブライエンの狙いは、自分の発言によって自身の考える授賞式の使命が覆い隠されてしまうのを避けることにあったようだ。それは「今は非常に混沌とした、恐ろしい時代」という事実を認めつつ、そこにこだわりすぎない姿勢を示すということに他ならない。
「このような時こそ、アカデミー賞は特に意義深いものになると思う」「今夜、私たちが敬意を表するのは映画だけではない。世界的な芸術性や協力、忍耐、回復力、そして今日最も稀有(けう)な資質である楽観主義といった理想にも称賛を贈っている」(オブライエン)
プレゼンターや受賞者の中には時事問題に触れた発言をした人もいたが、とりわけ印象的だったのはハビエル・バルデムが壇上に上がり、「戦争反対、パレスチナ解放」という力強いメッセージを発した場面だった。
レジェンドたちへの感動的な弔辞

バーブラ・ストライサンドが昨年死去したロバート・レッドフォードを追悼する場面/Mike Blake/Reuters
式では、前回の授賞式以降に亡くなった多くのハリウッドの伝説的人物たちを追悼する時間も設けられた。
ビリー・クリスタルは、友人であり共同制作者でもあったロブ・ライナーとミシェル・ライナー夫妻に敬意を表し、感動的な追悼メッセージを贈った。スピーチの途中からはロブ・ライナー監督の作品に出演した俳優たちが次々とステージに上がった。その中には「プリンセス・ブライド」のケイリー・エルウィス、キャロル・ケイン、フレッド・サべージ、「ミザリー」のキャシー・ベイツ、「スパイナル・タップ」のクリストファー・ゲスト、マイケル・マッキーン、「スタンド・バイ・ミー」のジェリー・オコンネル、ウィル・ウィートンらがいた。
レイチェル・マクアダムスは、2005年のホリデーシーズンを彩った名作「幸せのポートレート」で共演した偉大なダイアン・キートンに敬意を表し、「スクリーン上で輝きを放った、人生において忘れられない存在」と称賛した。
その直後にはバーブラ・ストライサンドがステージに上がり、1973年のアカデミー賞受賞作「追憶」で共演した友人ロバート・レッドフォードを追悼した。
ストライサンドはレッドフォードを「独自の道を切り開いた知的なカウボーイ」と称賛。映画と同名の主題歌を歌って観客を魅了した。

1 ヶ月前
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