『星か獣になる季節』(筑摩書房) - 著者: 最果 タヒ - 陣野 俊史による書評

3 週間前 10
星か獣になる季節
『星か獣になる季節』(筑摩書房)著者:最果 タヒ

心の揺れを正確に表現

詩人とは、言葉を摑(つか)まえる人のことである。中原中也賞を若くして受賞した詩人・最果タヒの初の小説集を読んで、その思いを強くした。

表題作は書簡の形式。地方都市で冴(さ)えない学生生活を送る「ぼく」こと山城翔太が、地下アイドル「ラブきみミキサー」のメンバー、愛野真実に送った、長い長い手紙である。

ぼくは真実ちゃんを応援することを生きがいにしていたが、ある日、彼女が殺人を犯したというニュースがネット上を駆け巡る。ぼくは、クラスメートの森下とともに、真相を探り出そうとするのだが……。

冒頭。「きみはかわいいだけだ。凡庸で貧弱な精神、友達だけが社会で、ぼくらのことを光のかたまりぐらいにしか見ていない。だからぼくは軽蔑が出来(でき)た。遠くにいたって踊っていたって、きみのことを好きだと思えたんです。どうして、人を殺したんですか」。

小説の構成要素は限定されている。人物たちの心中と会話に小説のかなりの部分が割かれている。

だが、彼らの、絶え間なく動く心の揺れを、最果タヒは、言葉として正確に表現し得ている。
【初出メディア】
日本経済新聞 2015年3月25日

http://www.nikkei.com/
記事全体を読む