東京(CNN) 観光客の一団がガイドに導かれて建物の中へ入る。ガイドは目の前の光景について、その歴史や背景を説明し、日本語の表示を英語に翻訳していく。
目を輝かせた旅行者たちは、物に触れたり写真を撮ったりしてよいか丁寧に尋ねる。やがて自由に見て回れることになり、故郷の家族や友人への贈り物を買い求める。
ここは神社ではない。日本のコンビニエンスストア「ファミリーマート」だ。
こうしたツアーを考案したのは、日本の飲食店予約プラットフォーム「byFood(バイフード)」を創業したトソ・セルカン氏。観光客がコンビニを探検し、さまざまなスナックを紹介するSNS動画が数多く投稿されているのを見て、ひらめきを得た。そこにビジネスチャンスがあると感じ、イトウ・リョウさんを雇って、同社として(そしておそらく日本初の)「コンビニツアー」を実施した。
東京出身のイトウさんは、歯ブラシなどの日用品を買ったり、昼食用のおにぎりを手に入れたりするために、1日に何度もコンビニに立ち寄ることを特別だとは思っていない。ツアーでは、少人数の参加者が午後に複数のコンビニや食料品店、百貨店を回る。
数年間ハワイで暮らした後、日本に戻ったイトウさんにとって、ツアーの目的は、日本でコンビニがどのように利用され、生活とどのように関わっているかを伝えることだという。
旅行サイト「エクスペディア」によると、旅行者の39%が旅行中に食料品店やスーパーを訪れ、44%は自国では手に入らない地元の商品を探しているという。
日本のコンビニ市場の大手3社は、セブン―イレブン、ローソン、ファミリーマートだ。店舗数ではセブン―イレブンが最大で、ファミリーマートがそれに続く。
ファミリーマートの1号店は1973年、埼玉県狭山市でオープン。現在、国内に約1万6400店を展開し、台湾やインドネシア、ベトナムなど海外にも進出している。

ファミリーマートの明るいネオンライト/Macky Albor/Alamy Stock Photo
日本ではコンビニ各社の競争は激しい。一方で、オーバーツーリズム(観光公害)やSNSの広がりにより、コンビニは観光客やインフルエンサーにとっても注目の場所になっている。
ツアー参加者の多くは、コンビニの商品を組み合わせたオススメの「裏技」を尋ねてくる。イトウさんのお気に入りは、缶コーヒーを氷に注ぎ、その上にプリンをトッピングするものだ。
外国人観光客も、人気商品の「ファミチキ」を使ったアレンジを楽しんでいる。
動画投稿アプリTikTokには、ファミチキをパンケーキで挟んで甘辛い味を楽しむものや、チーズバーガーに挟む米国風の豪快な食べ方など、無数のアレンジが並ぶ。
コンビニに便利さを
香港出身のカーレン・チョンさんは、日本旅行にコンビニ訪問は欠かせないと話す。
「ファミリーマートでの体験はいつも良いもの」。年に2~3回日本を訪れるチョンさんは、最近の滞在中も、ファミリーマートで買った品々を紹介する動画をインスタグラムに投稿した。
「たぶん、日本に着いたらまず誰もが行く場所だろう。到着したばかりで、おなかが空いて、朝食が食べたくなる。まずコンビニを思い浮かべる」(チョンさん)
日本のコンビニに関する書籍の共著者であるキャリン・ンさんは、byFoodが提供するツアーについて聞いても驚かないという。

京都のファミリーマートの店内の様子/Nano Calvo/VWPics/Alamy Stock Photo

コンビニの店舗は駅構内にあるものも多い/Woohyeok Choi/Alamy Stock Photo
ただし、コンビニがそれ自体で観光名所になる前、外国人観光客が訪れていた理由は、単純に「便利」だったからだとンさんは指摘する。
「少し前まで、観光客が旅の途中で現金を引き出せる数少ない場所がコンビニだった。新幹線に乗る前に、おにぎりやサンドイッチ、飲み物、軽食を手軽に買える場所だった」(ンさん)
実際、東京駅など主要な観光地の近くにあるコンビニでは、定番のお茶やティッシュペーパーと並んで、マグネットやキーホルダーといった土産物が置かれていることも多い。
食器用洗剤のような基本的な商品でさえ何十ものブランドをそろえる大型店に慣れた米国人にとって、コンビニの洗練された優雅さは、伝統的な茶室を訪れるのと同じくらい、日本のライフスタイルを垣間見る体験だ。
「私にとってコンビニ自体が魅力だ」とンさんは言う。「コンビニの魅力は、おそらくその規模と品ぞろえにあるのだろう。決して押し付けがましいものではない。コンパクトで完璧、そしてすっきりとした空間の中に、日本の生活の一端が垣間見える」
秘密を靴下に忍ばせて
ファミチキだけではなく、ファミリーマートの覇権争いは意外な食品以外の商品によって勢いを増している。それは、ソックスだ。
ファミリーマートは2021年、大手コンビニ3社の中で初めて自社の衣料品ブランドを立ち上げた。クリエーティブディレクターに起用したのは、インディーズ系ファッションブランド「ファセッタズム」を手がける落合宏理さんだ。

パリ・メンズ・ファッション・ウィークに登場した著名ファッションデザイナーの落合宏理さん/Virgil Claisse/Gamma-Rapho/Getty Images
「コンビニエンスウェア」の商品は下着やTシャツ、靴下といったシンプルながらも、しっかりとしたつくりだった。ロゴは入っていないが、ブランドの特徴である鮮やかなブルーとグリーンのシンプルなストライプ柄が特徴的な商品も多い。ライン入りのデザインから「ラインソックス」と呼ばれ、価格は390円(約2ドル)だ。
この靴下は瞬く間に人気商品となった。
カルチャー誌モノクルによると、白のユニセックス仕様のチューブソックスは、発売初年度に140万足を売り上げた。
落合さんは同誌に対し、ソックスのデザインにあたって、見た目だけを重視したわけではないと語った。抗菌・防臭加工されているほか、空港でミニサイズの洗面用品を持ち運ぶのにちょうど良いサイズの再利用可能なポリ袋に入って販売されている。
ファミリーマートの担当者はCNNの取材に対し、従来、コンビニで販売される衣料品は、急な必要性から購入されるケースが中心だったと述べた。そこで、品質やデザインにこだわった商品を開発することで、コンビニで衣料品を買うという新しい文化をつくりたいと考えた。「いい素材、いい技術、いいデザイン。」をコンセプトに、あらゆる年齢層の人々が毎日使える商品を開発したという。
この靴下のファンの一人が、CNN Styleのプロデューサー、オスカー・ホランドさんだ。
ホランドさんは、ファミリーマートがコンビニ各社の中で特別お気に入りというわけではないと認める。それでも、この靴下の魅力にはあらがえなかったという。

CNNスタッフが着用しているユニセックスのソックス/Bertha Wang/CNN
「熱帯気候に住んでいて、短パンをよくはく。ただの白いソックスより、ちょっとだけ刺激的で、目新しさも控えめだ」とシンガポール在住のホランドさんは語る。目立つロゴがないので、自分の靴下がどこのブランドのものか分かるのは、知っている人だけだという点も気に入っているという。「『それ、ファミリーマートの靴下?』と聞かれたら、ちょっとした会話のきっかけになる」
皮肉なことに、ホランドさんはまだ日本で靴下を買ったことがない。オンラインの販売店から購入したり、友人に日本旅行の際に買ってきてもらったりしているという。
ファンを飽きさせないため、ファミリーマートは定期的に新色を投入している。「ストレンジャー・シングス 未知の世界」や「ザ・シンプソンズ」といったポップカルチャー作品とコラボした限定品も発売してきた。
大手スニーカーブランドが「ドロップ」を発表するときと同じように、熱心なラインソックス愛好家たちは新作を求めて日本各地の店舗を巡り、その体験を記録し、後にSNSで自慢することになる。
コンビニエンスウェアは、スウェットやトートバッグにも広がっている。中には手拭いもある。これらの商品はどれもシンプルだが、日本の礼儀作法や文化を垣間見ることができる貴重なアイテムだ。
◇
原文タイトル:Japan’s hottest souvenir? A $2 pair of striped socks from a convenience store(抄訳)

3 ヶ月前
17







English (US) ·
Japanese (JP) ·