1990年代にマンガ文庫がブームになっていたことをご存知でしょうか。
手塚治虫さんの『ブラック・ジャック』『アドルフに告ぐ』をはじめ、和田慎二さんの『スケバン刑事』、美内すずえさんの『ガラスの仮面』、浦沢直樹さんの『YAWARA!』など、多くの名作が文庫として刊行されました。
こうしたマンガ文庫では、表紙を作者とは別のイラストレーターが手がけるケースも少なくありませんでした。
SNSでは「今思えば贅沢だった」「懐かしい」といった声も見られ、当時の装丁があらためて注目を集めています。
「マンガの絵そのままが良い」是非あり。別のイラストレーター起用理由を考察も
マンガ文庫の表紙は、写実的だったり、重厚でシリアスな雰囲気に仕上げられていたりと、本編の絵柄とは異なるタッチが採用されることも多くありました。
そのため、SNSでは「親の本棚に並んでいた文庫を読んでみたら、中のマンガとのギャップに驚いた」といったエピソードを明かす人もいます。
また、こうした装丁に実用的なメリットを感じるという投稿もありました。
たとえば、演劇に生きる少女の成長を描いた『ガラスの仮面』では、各巻の表紙から収録されている舞台作品の内容がイメージしやすく、どのエピソードが入っているか分かりやすかった、という声です。
一方でこうした、別イラストレーターの起用については、賛否が分かれています。
漫画家の田中圭一さんは「不思議でならなかった。マンガなのに、なぜ原作の絵をそのまま使わないのか」と疑問を呈しました。
いしかわじゅんさんも「俺も全く理解できなかったな。なぜこんなことをしたんだろう」と投稿しています。
では、なぜあえて別のイラストレーターが起用されたのでしょうか。
その理由については明確な統一見解があるわけではありませんが、SNS上ではさまざまな意見が交わされています。
例えば1990年代当時は、現在に比べてマンガの文化的地位が低く、“子ども向け”だという偏見があったとされ、「会社員が電車でブックカバーなしで読めるようにしたのだろう」という見方です。
また「小説の文庫本と同じ棚に並べてもらうため」といった理由を挙げる人もいました。
手塚治虫さんの希望で『アドルフに告ぐ』大人っぽい装丁に
文庫版とは異なりますが、『アドルフに告ぐ』の単行本では、作品のシリアスな内容に合わせて、別のイラストレーターによる表紙が採用されたケースもあります。
手塚治虫プロダクションの関係者(当時)によると、これは手塚治虫さん本人の意向によるものだといい、公式サイトではこう明かされています。
「内容に合わせた、大人っぽい装丁の本にしたい、とは言っていましたね。先生は、自分で描いたイラストをそのままコミックスの表紙に使うのは、子どもっぽいという理由であまり好きではなかったようです」
さまざまな思い出を呼び起こす表紙が印象的なマンガ文庫。実家の本棚に眠ったままになっているという人も、この機会に手に取ってみると、新たな発見があるかもしれません。

4 週間前
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