俳優の阿部サダヲさん、広瀬すずさん、深津絵里さんらが出演の演劇「NODA・MAP『−320°F(華氏マイナス320°)』」の英国ロンドン公演が7月11日(現地時間)に幕を下ろす予定だ。
公演に対する劇評はおおむね好評で、広瀬さんについて「圧倒的なカリスマ性を発揮」(『BroadwayWorld』)と高く評価したものも見られた。
阿部サダヲ、広瀬すず、深津絵里ら豪華キャスト。ろう者からの要望書も
脚本家・演出家の野田秀樹さんの新作『−320°F(華氏マイナス320°)』は、4月10日の東京初日を皮切りに、北九州、大阪にて公演を行った。その後、7月2日(現地時間)からロンドンのサドラーズ・ウェルズ劇場(Sadler’s Wells Theatre)で上演中だ。
広瀬さんら以外にも、橋爪功さん、大倉孝二さん、高田聖子さん、橋本さとしさんら豪華俳優陣が出演している。
舞台が現代と中世、古代を行き来しながら、優生思想への批判を描く本作品は、ろう者が出演し、手話が演出として使われていた。
一方、東京公演当時、ろう者からの演出・作品内容への批判がSNSに投稿されたり、「日本ろう芸術協会」など3団体の連名で鑑賞サポート体制についての公開要望書が野田秀樹さんと企画制作会社のNODA・MAP宛に提出されたりするなど注目を集めていた。
『-320°F』ロンドン公演の評価はどのようなものだっただろうか。
広瀬すず「圧倒的なカリスマ性を発揮し、観客を魅了」『ブロードウェイワールド』星4つ
英字エンターテイメントウェブメディアの『BroadwayWorld(ブロードウェイワールド)』は、5つ星のうち4つと評価した。
『野田秀樹が、エネルギッシュで挑発的なパフォーマンスを携えてロンドンに帰ってくる』と題した劇評では、本作について「ロンドンで私たちが慣れ親しんでいる演劇とは文化的にも慣習的にも異なるタイプの演劇に触れる絶好の機会である。それは人間であることの意味についての議論を巻き起こし、人を惹きつける演出でそれを伝える」と高く評価している。
「異なるタイプの演劇」とする要因の一つとして「野田氏は歌舞伎の演出家としても実績があり、その影響は本作にも色濃く表れている。彼は化粧や衣装の派手な装飾など、日本の伝統にさりげなく触れることで、登場人物たちの社会的役割を明確に区別している」と、『野田版 研辰の討たれ』や『野田版 鼠小僧』などの野田さんの歌舞伎の作・演出を踏まえた指摘をしている。
俳優陣について「カンパニー全体としても結束力が強く、中でも広瀬すずはメフィスト/ジャン/エセ・ヒミコ/光の天使役で圧倒的なカリスマ性を発揮し、観客を魅了する」と称賛した。
「爆笑必至で、視覚的にも素晴らしく、そしてとにかく長すぎる」『タイムアウト』星3つ
シティガイド「Time Out」(タイムアウト)ロンドンのオンライン版の記事は、5つ星のうち3つと評価した。
『野田秀樹演出による最新の奇抜な作品は、爆笑必至で、視覚的にも素晴らしく、そしてとにかく長すぎる』と題した劇評は、上演時間に繰り返し言及。ロンドンでの上演時間は不明だが、日本では公式サイトによると約2時間20分(途中休憩なし)だった。
「野田秀樹の最新作のタイトルは『-320°F(minus 3 20 Fahrenheit)』。これは液体窒素の沸点、つまり超低温保存された遺体の温度にほぼ相当する。そして、このレビューを書いた筆者も、上演後に友人にあらすじを説明しようとして、まさにそのくらいの寒さで凍りつきそうになった」とした上で、「野田は作品を詰め込むことで悪名高いが、本作も3つの時間軸にまたがり、いずれも天使の骨を追い求める登場人物たちが登場する」など、「多くのアイデアを詰め込みすぎ」に苦言を呈した。
作中のコメディ要素のある場面に触れたうえで「こうした場面は非常に楽しいので、もっとおバカなシーンを増やし、説明的な部分を減らせば、さらに良かっただろう。90分ほどの余分なシーンを削れば、なお良かったはずだ」と指摘した。
「まるで砂糖を取りすぎた興奮状態のよう」『ガーディアン』星3つ
一方、英紙『ガーディアン(The Guardian)』のオンライン記事は、『タイムアウト』と同じく5つ星のうち3つではあるものの、要素の多さや上映時間の長さに寛容だ。
『クレオパトラ、ファウスト、ハーメルンの笛吹き男と一緒に、奇想天外な冒険に出かけよう』と題した劇評で、「展開は鋭く、風刺はアドレナリン全開で、まるでシュガーハイ(※ハフポスト日本版編集部注:砂糖を摂りすぎた興奮状態)のようです。ついていけなくても問題ありません。なぜなら、そのほとんどがとても楽しい乗り物だから」としている。
記事のリードでは「悪党バイオテクノロジー企業と骨伝導技術を描いた壮大な作品は、目を見張るような演出に満ちているものの、真面目なメッセージに重きを置きすぎて、やや停滞気味だ」としており、総じて辛口な指摘もあった。
とはいえ「風刺と奇抜さを休憩なしで2時間以上も維持するのは難しい。真面目になりすぎて、それまでの無秩序な喜劇とは相容れなくなってしまうのだ。それでも、野田の想像力が生み出した奇妙なタイムマシンに乗り込んだような気分で劇場を後にするだろう」と、好意的にまとめている。
広瀬すず2022年には「圧倒的な存在感で、彼女が舞台に登場した瞬間から目が離せない」
広瀬さんがロンドンの舞台に立つのはこれが初めてではない。2022年には、同じく野田さん作・演出の「『Q』:A Night At The Kabuki」のロンドン公演に参加した。
当時の『Lost successful the Theatreland(ロストインシアターランド)』の劇評は「若きジュリエット役の広瀬すずは圧倒的な存在感で、彼女が舞台に登場した瞬間から目が離せない。彼女はどんな『ロミオとジュリエット』の舞台でも素晴らしい演技を見せてくれるだろう」と評価している。

6 時間前
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