太陽系には「追放された氷の巨大惑星」がいたかもしれない――痕跡は、今も衛星に刻まれている

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太陽系の家族写真に、ひとつだけ空席がある

太陽系の家族写真に、ひとつだけ空席がある太陽系の家族写真に、ひとつだけ空席がある / Credit:Canva

生まれたばかりの太陽系では、巨大な惑星たちが、いまよりずっと内側にぎゅっと寄り集まっていたと考えられています。

ガスでできた大きな惑星、木星と土星や氷を多く含む大きな惑星、天王星と海王星(氷の巨大惑星)たちは初期の太陽系で互いの重力でリズムよく手をつなぐように、窮屈に並んでいました。

ところが、あるとき、その均衡がくずれます。 惑星たちの通り道(軌道)が乱れ、木星は少し内側へ、ほかの3つは外側へと移動していきました。 なかでも海王星は、いちばん大きく外側へ旅をしたとみられています。

これが太陽系の「大引っ越し」とも言える出来事で、専門的には惑星不安定性、通称「ニースモデル」と呼ばれています。

この引っ越しは穏やかなものではなく、無数の氷の小天体を太陽系じゅうにばらまくほど激しいものでした。

コラム:大引っ越しはいつ起きた?

かつては、この引っ越しが約39億年前に起き、地球や月に隕石が集中的に降り注いだ「後期重爆撃」を引き起こした、とも考えられていました。しかし近年では、もっと大昔——太陽系ができてまもない時期(約45億年前ごろ)に起きたという説が有力になっています。というのも、もし引っ越しが39億年前と「遅く」起きていたら、地球にとっては大惨事だったからです。地球や金星、火星がすでに今の軌道に落ち着いたあとで巨大惑星が暴れれば、その強烈な重力に振り回されて、地球が金星と衝突したり、火星が地球にぶつかったりしかねません。ところが引っ越しが45億年前と「早く」起きた場合、それは今の私たちからみて恩恵にもなりました。約45億年前の地球の位置には、大量の岩石のかけら(微惑星)や複数の原始惑星が存在し、衝突しながら惑星へと成長する途中だったからです。原始地球に火星ほどの天体「テイア」が衝突し、月を生んだ事件も、時期的にはこの頃に近いと考えられています。近年の研究では、巨大惑星たちの「引っ越し」が岩石の塊を内側へと次々に投げつけていた、とも指摘されています。巨大惑星の引っ越しは、今の地球や月の成り立ちとも関連が議論されているのです。

ところが、この「大引っ越し」には計算上、おかしな点があることが知られていました。

たとえば、ある研究(NM12)は、引っ越しの当事者である4つの巨大惑星(木星・土星・天王星・海王星)から始めるパターンで、2670回ものシミュレーションを行いました。 ところが、いまの太陽系の特徴をすべて満たせた”成功例”は、ひとつも見つからなかったのです。

同じような計算は別の研究でもくり返されましたが、現在のメンバーだけで大引っ越しが今の形に収まる見込みは、やはり極めて低い——そう判定されました。

そこで現在では、この「大引っ越し」が起きる前の太陽系には、いまはもう存在しない「余分な惑星」がいたはずだ、という考えが広く受け入れられています。

つまり、昔の太陽系を撮影した”家族写真”には、いまはいない惑星が映っていたことになります。

そして、この消えた惑星は、大引っ越しの最中に太陽系の外へと永久に弾き飛ばされてしまったと考えられています。

というのも、「大引っ越し」は単に軌道がズレるような穏やかなものではなかったからです。

主要な研究の多くでは、大引っ越しの際に巨大な惑星同士が至近距離をかすめ合い、強烈な重力で互いを振り回す乱暴な接近が何度もくり返されたことが示されています。

探査機ボイジャーが惑星のすぐ近くを通ることで太陽系の外へ飛び出す力を得たように、初期の太陽系メンバーのいくつかも、こうして家から弾き出されていったわけです。

この大引っ越しの大暴れ——惑星たちが軌道を激しく組み替え、ある惑星が太陽系の外へ弾き飛ばされていく。

その一部始終を、静かに目撃していた存在がありました。

巨大惑星の周りを巡る衛星たちです。

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