(CNN) それでは結局、ウクライナが使用する重要な衛星通信システムの通信速度を低下させたのは、誰だったのか。この影響でウクライナは最近、ロシアの攻撃に対して一段と無防備な状態に置かれている。
共和党内でさえ、一部の有力議員は答えを求める声を上げ、関与した人の責任を追及する構えを見せている。
だが、トランプ政権や政権に近いイーロン・マスク氏のこれまでの説明は混乱を招く不十分なもので、時に矛盾も見られる。
政権は関与を否定している。だが、混乱が生じたのはロシアとウクライナの数年来の戦争を巡り、トランプ氏がウクライナから急速に距離を置き、ロシア寄りの姿勢を強めた矢先だった。しかもマスク氏は先週、トランプ氏の関与を示唆したように見受けられる発言を繰り返した。
論争が始まったのは1週間前。ウクライナは、マスク氏率いる民間宇宙企業スペースXが低軌道衛星を利用したインターネットサービス「スターリンク」を突然制限したことで、防衛の深刻な妨げになったと非難した。ウクライナはこれまで、スターリンクや関連する軍用サービスの「スターシールド」を高速通信や、ドローン攻撃の実施・防御に利用してきた。
(ウクライナはまた、トランプ政権がロシアの差し迫った攻撃に関する情報の共有を制限しているとも非難しているが、米政府は否定している)
全当事者の主張
ウクライナのゼレンスキー大統領は、責任はトランプ政権にあるとの見方を示す。
ロイター通信も15日、匿名の情報筋の話として、ホワイトハウスが国防総省にスターシールドの通信速度を低下させるよう指示したと報じた。CNNはこの報道の信ぴょう性を確認できていない。複数の情報筋はCNNに対し、トランプ氏から出された指示ではないと説明しており、トランプ氏自身も関与を否定している。
ゼレンスキー氏は18日、米NBCの番組「ミート・ザ・プレス」のインタビューで、ホワイトハウスの関与を指摘。「もちろん政府からメッセージがあった」と述べ、スペースXがその指示を実行したとの認識を示した。
翌日には、ロシアの「シャヘド」ドローン(無人機)による攻撃で死亡したという子どもの画像を、ぼかし入りで投稿した。通信制限の代償の大きさを強調する狙いがあった。
マスク氏も14日、米政府の指示があったことをほのめかした。X(旧ツイッター)上でウクライナの元国防相に返信した際、スターシールドは「米政府が所有・管理している」と強調した。
さらに「通信速度や利用に関する制限はすべて米軍が決定する。究極的には米大統領が判断する」と踏み込んだ。
Xの別のユーザーが「スターシールドは米政府の管理下にある。昨夜の決定を下したのは米政府だ」などと主張すると、マスク氏は「その通りだ」と返信した。
(CNNはスペースXに対し、マスク氏の発言はスターシールドの通信速度低下についてトランプ氏や政権の責任を明確に認めたものなのか問い合わせたが、回答は得られていない。マスク氏の発言には別の解釈の余地もあるとみられるが、この点については後述する)
一方、トランプ政権は関与を否定しており、問題が起きたのか疑問視する場面すらあった。
トランプ氏は16日、「私はやっていない」と明言。「そもそも誰かが手を下したのかは分からない。私ではないし、イーロンでもないと思う」と述べた。
ルビオ国務長官は17日、ゼレンスキー氏について「自分が何を言っているのか」分かっていないとの見方を示唆し、スターリンクの混乱にホワイトハウスが関与したとの報道は「断じて事実ではない」と否定した。
ルビオ氏は「ホワイトハウスは一切関与していない」としたうえで、「特定のドローンによる使用を不可能にするため、ホワイトハウスの誰かがインターネットの通信速度を落とすよう指示した事実はない」と説明した。
トランプ氏は19日、依然として責任の所在を把握できていないことをほのめかした。
「誰がやったのか分からないが、突き止めたい」としている。
浮かび上がる矛盾
しかし、こうした発言の中には、つじつまが合わないものもある。
トランプ氏は16日、そもそも通信速度の低下が起きたのか疑問視する姿勢を見せ、「速度が落ちたとさえ思っていない」と発言。「おそらく機能していると思う」と語った。
さらに「これまでと変わりないと聞いている」とも付け加えた。
ルビオ氏も16日の発言で、スターリンクの軍用サービスであるスターシールドについて、「現時点でウクライナは利用できない」との見方を示し、「ウクライナには何の関係もない話だ」と主張した。しかし、ブルームバーグ通信は2年前、ウクライナがスターシールドを利用できるようになったと報じていた。ルビオ氏はウズベキスタンでの19日の発言では、「ウクライナは(スターシールドの)恩恵を受けてきた」と認めた。
マスク氏の発言にも、やや混乱を招く面がある。スターシールドに関する決定はすべて政権やトランプ氏に委ねられているかのような口ぶりの一方、民間向けのスターリンクについては「攻撃的な軍事行動に使用することはできない。民間企業として不適切だからだ」と言葉を補った。ここからは、ウクライナによるスターリンクの利用を巡っても対立があった可能性がうかがえる。
ヘグセス国防長官は20日、この記事が最初に公開された後に同様の見解を示した。「我々は何も撤回していない」と述べる一方、スターリンクの利用には「当然守るべき利用規約がある」と指摘し、それに対処する権限があるとの認識を示した。
このほか、米政権高官2人はCNNの取材に、スターシールドに関する指示はトランプ氏から出されたものではないと明かした。
それぞれの主張をひもとく
強調しておくべきなのは、この問題が何の脈絡もなく起きたわけではないという点だ。その背景には、トランプ氏がウクライナから距離を置き、ロシアへ接近していることをうかがわせる一連の動きがある。
トランプ氏は最近、軽油価格の高騰について、原因はウクライナによるロシアの製油所攻撃にあると主張(価格高騰の主な要因は対イラン戦争だということを示す有力な証拠があるにもかかわらず)。ロシアに対する主要な追加制裁の発動も延期した。ロシア産ディーゼル燃料(軽油)の輸入も試みる一方で、ウクライナへの圧力は強め、2022年にロシアが一方的に侵攻して始まった戦争を終わらせるため、ウクライナにさらなる譲歩を迫っている。
スターリンクを巡る今回の論争は、トランプ政権が重要情報の共有を控えているとウクライナが非難しているタイミングとも重なる。政権はこの疑惑についても否定しているが、CNNは以前、政権が情報共有の停止をちらつかせたと報じていた。
マスク氏がトランプ氏の関与を少なくとも匂わせる発言をしたことも、極めて注目に値する。スペースXの最高経営責任者(CEO)であるマスク氏はトランプ氏と関係が近く、中間選挙では共和党の最大の献金者になっているからだ。共和党に投じた額は数億ドルに上る。
マスク氏はスターシールドの通信速度に関する決定は連邦政府が下すと述べるにとどめ、それ以上は言及しないでおくこともできたはずだ。だが、言葉を継いで「究極的には米大統領が判断する」と踏み込み、政府の決定だと指摘する投稿に「その通りだ」と返信している。
混乱の中、共和党議員の一部からも答えを求める声が上がっている。
その中には、引退するネブラスカ州のドン・ベーコン下院議員や、選挙で危うい立場に置かれるペンシルベニア州のブライアン・フィッツパトリック下院議員も含まれる。フィッツパトリック氏は19日、Xへの投稿で、スターシールドを制限した人物について「徹底調査し、全面的に責任を追及する」と言明。公聴会の開催を約束したほか、「関与した政府機関やそのトップに対し、直ちに厳しい懲罰的な予算削減を行う」と表明した。
退任を控えるノースカロライナ州選出のトム・ティリス上院議員とテキサス州選出のジョン・コーニン上院議員も、民主党議員と足並みをそろえて説明を要求。ティリス氏は今回の問題について、「容認できないミスや不手際」か、意図的に「ロシアの攻撃のお膳立てをする決定」のいずれかだと指摘した。
すぐに答えが出るとは限らない。ただ、来年1月に民主党が上下両院のいずれか、あるいは両方で多数派になれば、この問題が再び前面に出てくる可能性がある。
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本稿はCNNのアーロン・ブレイク記者による分析記事です。

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