(CNN) AI(人工知能)が驚くべき進歩を遂げるなか、AIモデルの訓練や運用に必要なデータセンターなどが、政治的な争いの種になっている。
業界が急発展する一方で、データセンターの巨大な建物が水や電力を際限なく必要とし、熱や騒音を出すといった環境への影響をめぐり、多くの人々が不安を募らせている。
調査会社SSRSが先月実施したCNNの世論調査では、AIのデータセンターが増えていることに対し、米国民の90%近くが期待より懸念を抱いていると答えた。
AIは実際、どの程度環境に悪いのだろうか。
あいにく事態は複雑だ。各データセンターが及ぼす影響は、それがどこにあり、どんな種類の電力や技術が使われているのかなど、多くの要因に左右される。
そのうえ、AI提供者からの透明で詳細なデータが不足しているため、影響の正確な実態が分かりにくく、推測に頼るしかない。
全体像の把握をさらに難しくしているのは、AIの技術や需要が今後どうなるかについて、はっきりした見通しがほとんどなく、将来が予想しづらいという状況だ。
ただし、現時点で言えることはいくつかある。

昨秋、米インディアナ州ニューカーライルにあるAIデータセンターで作業する技術者/Noah Berger/AWS/Reuters
大量のエネルギーが必要
AIモデルを訓練、運用するには大きな処理能力が必要で、それに大量のエネルギーが費やされる。
AIのエネルギー効率は猛スピードで向上しているものの、利用者は増加し続け、特にエネルギーを大量消費する用途が急拡大している。
例えば国際エネルギー機関(IEA)の分析によると、単純な文字でのクエリ(質問)で消費される電力は通常、テレビを同じ時間つけていた場合よりも少ない。だが動画生成など消費エネルギーの大きい使い方をすると、その数千倍のエネルギーが費やされることもある。IEAによれば、AIデータセンターでの電力消費量は昨年、50%急増した。
英統計サイト「アワー・ワールド・イン・データ(OWID)」によると、AIデータセンターは昨年、世界の電力消費量の0.5%を消費した。2030年までに、この割合は1.5%に達する見通しだという。
小さな割合のように聞こえるかもしれないが、データセンターは地理的に極端に集中している。世界のデータセンターでの電力消費量のうち、半分近くが米国で使われる。米ローレンス・バークレー国立研究所によると、米国ではAIの急成長により、28年には電力消費全体の12%をデータセンターが占めるようになると予想される。
影響は気候(と健康)に現れる
世界の電力は今も大半が化石燃料でまかなわれているため、結果として温暖化ガスの排出量が増える。AIブームによって、気候変動対策の目標はさらに遠のくことが深く懸念されている。
データセンターがどこから電力を得るかがポイントになる。電力網に多くのクリーンエネルギーが導入されていれば、それだけ環境への影響は抑えられる。現在、世界のデータセンターが使う電力の供給源は石炭が30%でトップに立ち、再生可能エネルギーが27%、天然ガスが26%と続いている。
米国にあるデータセンターの電力供給源は、天然ガスが主役になりつつある。米NPO「グローバル・エナジー・モニター(GEM)」が1月に出した報告書によると、米国が開発しているガス火力発電の設備容量は世界トップで、その3分の1以上をAI向けが占める。
データセンターが地域の電力網を圧迫して電気料金の値上がりを招く事態を避けるため、独自の発電施設を設けるケースも増えている。これには自家発電用のガスタービンがよく使われるが、大規模な発電所に比べて効率が悪く、窒素酸化物(NOx)や微小粒子状物質(PM2.5)などの有害な大気汚染物質によって環境への深刻な影響や健康被害をもたらす恐れもある。
最近の研究によれば、米国内のデータセンターがもたらす公衆衛生上の負荷は28年までに200億ドル(約3兆1000億円)の規模に上る可能性がある。
水が不可欠
AIで100ワードのメールを生成するには、ボトル約1本分(2カップあまり)の水が使われるとのデータがよく引用される。
これに対して米AI開発企業オープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)は、同社の対話型AIサービス「ChatGPT(チャットGPT)」が平均的なクエリで消費する水は小さじ15分の1程度との見方を示す。
どちらが正しいのか。データセンターがもたらす多くの影響と同じく、それは周囲がどんな状況か、何を測ろうとするかによって決まる。
AIデータセンターは、機器の冷却に直接水を使用するほか、消費する電力の発電過程でも間接的に水を使う。
個別のデータセンターが水資源に与える影響は、使われている技術やエネルギーの種類、地域の給水状況によって異なる。
例えば、水資源が豊富な地域もあれば、水の需給がひっ迫している地域もある。米ブルームバーグによる昨年の分析では、22年以降米国内に建設された、あるいは建設中のデータセンターのうち、約3分の2は水不足に圧迫される地区にあるとされた。
IT各社は新たな冷却技術の開発をはじめ、水の使用量を減らす対策を導入していると強調する。人々が食べるハンバーガーや着ている綿シャツのほうが、ずっと大量の水を消費すると主張するアナリストもいる。
とはいえ、AIが水に与える影響は決して小さくない。米カリフォルニア大学リバーサイド校などの研究チームは3月、米国内のデータセンターが消費する水の量は30年までに年間約4160億リットルに達するとの見通しを示した。これは、全米の公共水道システムにおける消費的利用量の7%に相当する。
間接的な水消費を加えると、数字はさらに跳ね上がる。米環境NGO「Ceres(セリーズ)」は最近、米国内の7州にあるデータセンターを分析した結果、発電プロセスに年間で計約13兆リットルの淡水が使われていることが分かったと報告した。これはロサンゼルス、フェニックス、ワシントンの3都市を合わせた年間消費量の約12倍に相当するという。

米マサチューセッツ州ローエルの住宅地に隣接するデータセンターのドローン画像/Brian Snyder/Reuters
騒がしい隣人となる場合も
データセンターに対する主な懸念の中には、騒音公害など生活環境への影響を心配する声もある。
データセンターは冷却システムの低い振動音、ガスタービンやディーゼル発電機のうなり声、装置の機械音が入り混じった不快な音を発する場合がある。
米ニュージャージー州バインランドにある巨大データセンターの周辺住民のように、騒音公害の訴訟を起こした例もある。
データセンター側が装置や建物自体に防音対策を講じるなど、影響を軽減するために取れる措置はある。専門家からは、州や地元当局が騒音規制を強化すべきだとの声も上がっている。
気温上昇に拍車も
データセンターからの熱で周囲の空気や地面の温度が上がり、「ヒートアイランド」現象が起きて、地球温暖化を加速させる可能性も懸念されている。
米アリゾナ州立大学の研究によると、同州フェニックスではデータセンターの熱公害で、風下に位置する近隣地区の気温が最大約2.2度上昇した。
ただし、こうした影響を実際に特定するにはさらなる研究が必要だ。熱の問題では、データセンターとほかの産業施設の間にほとんど差がないと主張する専門家もいる。
重要鉱物をむさぼる
もうひとつ見過ごされがちな問題として、AIの半導体やデータ保管装置などに必要な鉱物、金属が挙げられる。
こうした素材は新興国、途上国で採掘されることが多く、大気汚染、水質汚染や森林破壊、健康リスク、気候変動への影響が指摘されてきた。
またAIが拡大、発展するにつれて有害な電子ごみも発生する。
AIでこれらの鉱物の需要が高まると、風力発電、太陽光発電など温室効果ガス削減に不可欠なセクターとの間で取り合いになる心配もある。
影響を最終的に決めるのは
専門家らによると、AIが環境に与える害は固定されているわけではない。データセンターをどこに置き、電力源をどうするか、どんな規制をかけるか、AI提供者がサプライチェーン(供給網)全体にわたる影響についてどこまで透明性を保つかという、私たちの選択にかかっている。
国連大学水・環境・保健研究所(UNU-INWEH)のカーベ・マダニ所長は、新たなAIデータセンターを建てる前に「だれが恩恵を受けるか」を明確にしなければならないと指摘する。データセンターは雇用をもたらすか、地域経済を向上させるか、地元の農家などが必要とする水を奪うことにならないかと問いかける必要がある。
マダニ氏は「あらゆる技術と同じく、トレードオフはある」「規制や監視、軽減が必要なマイナス面もある」と指摘した。

2 時間前
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