冷蔵庫でビールを冷やす速さには「限界」があると判明

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ビールと冷蔵庫を「温度をそろえる機械」として考える

物が周りと差し引きで熱をやりとりしなくなった状態を「熱平衡」と呼び、冷蔵庫の中のビールもいずれこの状態に落ち着きます。

この過程はいくらでも速くはできないのではないか、という疑いは以前からありました。

実験やコンピューターでの計算、数式による解析から、それをうかがわせる手がかりが出ていたのです。

しかし、どんな物やどんな装置にも当てはまる形で、その限界を導いた人はいませんでした。

そこで研究チームは、物を決まった温度の熱平衡へ運ぶ装置を、数学の言葉で「熱平衡化マシン」と定義しました。

冷蔵庫ややかんがマシンで、ビールや水がマシンにかけられる側の物、というイメージです。

夜に扉を開けた家庭用の冷蔵庫で、食べ物や飲み物が入っています。夜に扉を開けた家庭用の冷蔵庫で、食べ物や飲み物が入っています。 / Credit: W.carter / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)

ただし、ここには一つ落とし穴があります。

相手が特定の1杯だけなら、熱いコーヒーを、はじめから冷えているコーヒーとさっと入れ替える「機械」も考えられるのです。

これでは一瞬で冷えたことになり、限界の話が成り立ちません。

チームの一人でジュネーブ大学のパヴェル・セカツキさんは、こうしたやり方を「反則」だと話しています。

そこでチームは、砂糖やミルクの量が少し違うコーヒーでも、同じマシンが同じ手順で冷やせることを条件にしました。

1台の冷やす機械が、砂糖やミルクの量が少し違う何杯ものコーヒーを、同じ手順で冷やす決まりを表した図です。右側で、どのコーヒーもそれぞれに合った熱平衡にたどり着くところを見てください。1台の冷やす機械が、砂糖やミルクの量が少し違う何杯ものコーヒーを、同じ手順で冷やす決まりを表した図です。右側で、どのコーヒーもそれぞれに合った熱平衡にたどり着くところを見てください。Credit: ナゾロジー編集部(編集部が作成した図、論文の図1(Abiuso et al., Nature Physics (2026)、CC BY 4.0)をもとに作成)

物理の言葉では、物がとれるエネルギーを表す式(ハミルトニアン)が少し違う物も、まとめて熱平衡にできることです。

これで、特定の1杯に合わせた入れ替えの手は使えなくなります。

その一方で、マシンの大きさや、物とつながる強さには、いっさい制限を付けていません。

周りの環境もすべてマシンの一部とみなし、量子力学で許されることなら何をしてもよい、という広い前提です。

バルセロナ自治大学のマルティ・ペラルナウ=リョベさんも、「マシンへの制約は実はとても弱いものです」と話しています。

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