人生のほぼ毎日を覚えている人たち
HSAMは、試験勉強や暗記術で発揮されるような「物覚えの良さ」とは異なります。
その特徴は、自分の人生の出来事が日付と強く結びついていることです。
たとえば、ある日付を聞かれると、その日が何曜日だったか、世の中で何が起きたか、自分がどこにいて何をしていたかを思い出せることがあります。
HSAMを持つエミリー・ナッシュさんは、自分の記憶を「毎日が小さな映画のようで、巻き戻したり早送りしたりできる」と表現しています。
この言葉は、HSAMの不思議さをよく伝えています。
彼らにとって過去は、ぼんやりしたアルバムではなく、日付ごとに並んだ動画のように残っているのです。
ただし、この能力は必ずしも夢のような贈り物ではありません。
私たちは普通、嫌な記憶や恥ずかしい記憶、悲しい出来事を少しずつ薄めながら生きています。
忘れることは、単なる欠点ではなく、心を守るための働きでもあります。
しかしHSAMの人は、楽しい思い出だけでなく、屈辱や悲しみ、恐怖、後悔までも鮮明に抱え続けることがあります。
有名なHSAM保持者であるジル・プライスさんは、「前に進むことができない」と語りました。
つまりHSAMは、記憶の才能であると同時に、忘れられない重さを伴う能力でもあるのです。
では、なぜ彼らはここまで忘れにくいのでしょうか。
研究チームは、その理由を「起きている間の記憶力」ではなく、「眠っている間の記憶固定」に探りました。
実験では、HSAMの人9名と、年齢・性別・人種・教育水準を合わせた対照群13名を対象に、2晩にわたって睡眠ポリグラフ検査を行いました。
1晩目は検査環境に慣れるための適応夜とされ、参加者には知能やエピソード記憶の簡単な検査、睡眠の質や日中の眠気に関する質問も行われました。
これは、「HSAMの人は単に頭が良いのではないか」「睡眠時間が長いだけではないか」といった別の説明も確かめるためです。






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