死者ではなく「回復者」の名前が残されていた
今回見つかったのは、イングランド東部ハンティンドンシャーにあったウォーボイズ荘園の会計記録に挟み込まれていた羊皮紙の断片です。
ウォーボイズ荘園は、当時ラムジー修道院が保有していた土地でした。
そこには、1349年の夏、病気のために領主の土地で働けなくなった小作人たちの名前と、彼らがどれくらい仕事を休んだのかが記されていました。
研究チームは、この22人の小作人が黒死病に感染し、数週間にわたって病床に伏した後、回復して再び労働に戻った可能性が高いと見ています。
実際に発見された羊皮紙/ Credit: Brown, A. T., Owen, G., & Sloane, B. / Historical Research, 2026, CC BY 4.0これは非常に珍しい記録です。
中世の文書は、死亡や相続、税、土地の移動などを記録することが多く、「病気になったが助かった人」の経過を詳しく残すことはあまり知られていません。
そのため黒死病の研究でも、死亡率や死者の身元、社会秩序の変化に注目が集まりがちでした。
しかしこの羊皮紙は、パンデミックの中にいた「死なずに生き延びた人々」の姿を具体的に浮かび上がらせています。
記録によると、もっとも早く回復したヘンリー・ブラウンは、わずか1週間の欠勤で仕事に戻っていました。
一方、ジョン・ダーウォースとアグネス・モールドは、9週間にわたって仕事を休んでいました。
全体としては、病気の期間は平均3〜4週間ほどで、生き延びた人々の4分の3は1カ月以内に仕事へ復帰していたとされています。
しかも彼らには、最長で1年と1日の病気休暇が認められていました。
それを考えると、数週間で戻ったという事実は、当時の人々の回復力を示すものでもあります。





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