トロッコ問題は頭の中だけの話ではなかった、本物のお金で検証

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「人を突き落とす」思考実験に代わる、1ドルの選択

2014年、著書『Moral Tribes』を紹介する心理学者ジョシュア・グリーンです。今回の研究は、グリーンらの説が本物のお金の場面でも成り立つかを確かめるものになりました。2014年、著書『Moral Tribes』を紹介する心理学者ジョシュア・グリーンです。今回の研究は、グリーンらの説が本物のお金の場面でも成り立つかを確かめるものになりました。Credit: Ego.Eudaimonia / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)

人の道徳的な判断については、20年ほど前から有力な説明があります。

心理学者ジョシュア・グリーンらが唱えた「二重過程モデル」です。

この説では、すばやい直感は「人を傷つけるな」のような決まりごとへ私たちを向かわせます。

一方で、ゆっくり考えると、より多くの人のためになる結果へ向かうとされます。

こうした多数のためになる選択は、「功利主義的」な選択と呼ばれます。

ところが、この説を支える証拠の多くは、現実離れした場面から集められてきました。

暴走するトロッコを止めるため、歩道橋から男性を突き落とすかを想像させる問題です。

もちろん、そんな場面に実際に出くわした人はいません。

さらに、「突き落とす」と答える人ほど、サイコパス傾向を測る尺度で点が高いことも報告されていました。

つまりその答えは、5人を思う気持ちではなく、人を傷つけることへの抵抗の弱さを映しているのかもしれません。

そこで別の研究者たちが考え出したのが、冒頭のお金版トロッコ問題です。

アメリカの1ドル札の表です。お金版トロッコ問題では、1人の1ドルを取り上げて、何ももらっていない5人に1ドルずつ配るかどうかが問われます。アメリカの1ドル札の表です。お金版トロッコ問題では、1人の1ドルを取り上げて、何ももらっていない5人に1ドルずつ配るかどうかが問われます。Credit: 作者不明 / Wikimedia Commons(Public domain)

考案者たちのデータでは、1人から取って5人に配る選択は、サイコパス傾向とまったく結びついていませんでした。

お金版なら、誰の体も傷つけない現実の選択で、二重過程モデルを確かめられるのです。

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