狭い部屋に閉じ込められたオスは、メスに求愛しなくなる
研究チームが注目したのは、遺伝子操作がしやすく、脳の神経回路を調べやすいショウジョウバエです。
ハエと聞くと単純な生き物に思えるかもしれませんが、オスのショウジョウバエはメスに出会うと、羽を震わせて歌のような信号を出したり、後を追ったりする求愛行動を示します。
つまり、求愛行動の量を調べることで、オスがどれほどメスに性的な関心を向けているかを推定できます。
Credit: 東京都立大学(2026)今回の研究では、成熟したオスバエを直径3ミリ、深さ2ミリの小さなアクリル容器に閉じ込めました。
ショウジョウバエの体長はおよそ2〜3ミリなので、この容器の中でも脚を動かしたり、体の向きを変えたり、毛繕いや摂食をしたりすることはできます。
しかし、自由に歩き回ることはできません。
いわば、体は動かせるものの、行動範囲を大きく制限された「狭い部屋」に閉じ込められた状態です。
その結果、10分間の狭所ストレスでは求愛行動に目立った変化はありませんでした。
ところが、30分または60分のストレスを受けたオスでは、その後のメスへの求愛行動が有意に低下しました。
さらに、60分のストレスでは30分の場合よりも強い抑制が見られ、ストレスの時間が長いほど、求愛行動への影響も大きくなることが示されました。
興味深いのは、この変化が単なる「疲れ」や「体調不良」では説明しきれない点です。
ストレス直後にはオスバエの運動量が低下しましたが、1時間後には回復していました。
また、摂食行動にも大きな影響は見られませんでした。
それにもかかわらず、メスへの求愛は抑えられていたのです。
このことからチームは、狭所ストレスによってオスの性的モチベーション、つまり性欲が低下した可能性が高いと考えました。
さらに、1時間の狭所ストレスによる求愛抑制は1時間後までは続きますが、2〜4時間後には回復しました。
一方で、7時間や24時間という長いストレスを与えると、求愛行動の低下は少なくとも5日間続きました。
小さなハエの脳にも、ストレス経験の長さに応じて、行動をしばらく変えてしまう仕組みがあると考えられます。






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