【分析】トランプ氏が育てた陰謀論という怪物、今や本人に襲いかかる可能性

2 時間前 1

ANALYSIS

2026.04.23 Thu posted at 19:47 JST

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2024年7月13日、ペンシルバニア州バトラーでの選挙集会中に銃撃された後、拳を突き上げるトランプ氏/Anna Moneymaker/Getty Images/File

2024年7月13日、ペンシルバニア州バトラーでの選挙集会中に銃撃された後、拳を突き上げるトランプ氏/Anna Moneymaker/Getty Images/File

(CNN) 恐らく現代の政治家で、トランプ米大統領ほど陰謀論を主流派の言論に持ち込んだ人物はいないだろう。

当時のオバマ大統領に対する虚偽の「出生地疑惑」を掲げて共和党政治でのキャリアを事実上スタートさせた後、トランプ氏はこの10年間、ありとあらゆる荒唐無稽な言説をまき散らし続けてきた。例えば2020年の大統領選が「盗まれた」という主張や、ハイチからの移民が人々のペットを食べているといった内容だ。またそうした言説を広めるのに協力する盟友たちも育て上げ、多くの支持者に自らの主張を信じ込ませてきた。

しかしトランプ氏の作り出した怪物は、今や同氏自身に襲いかかろうとしているのかもしれない。

イラン戦争やその他の問題を巡って、著名なトランプ支持者のうち同氏に背を向けた人々は比較的少ないが、態度を翻した顔ぶれを見ると陰謀論により傾倒する層が不自然なほど多い。例えばマージョリー・テイラー・グリーン氏やタッカー・カールソン氏、その他様々なインフルエンサーたちがそうだ。

最近、彼らはますます頻繁に、反トランプの陰謀論を自身のフォロワーに流し続けている。

このところ勢いを増している説の一つは、ペンシルベニア州バトラーで24年に起きたトランプ氏に対する暗殺未遂事件にまつわる疑惑だ。そこでは事件に不審な点が見られるとして、暗殺が仕組まれたものである可能性を示唆している。その他の説としては、トランプ氏がイスラエルに恩義を感じている、あるいは何らかの形で「弱みを握られている」という説、トランプ氏やその政権の共和党への忠誠心に疑念があるという説、さらには同氏が「反キリスト」かもしれないと疑う説さえ存在する。

もちろん、実際に不正行為があったという確たる証拠はない。ただトランプ氏にとって厄介なことに、こうした説の一部はソーシャルメディア上で少なくとも一定の支持を集め始めているように見える。

現在のところ、圧倒的に広まっているのはバトラーでの暗殺未遂事件に関する説だ――もっとも、それらは往々にして「単に疑問を投げかけているだけ」という枠組みで語られている(これはトランプ氏自身が以前用いた戦術でもある)。

最近、イランとの戦争を理由にトランプ政権の対テロ担当高官を辞任したジョー・ケント氏は、カールソン氏に対し、バトラーでの事件に関する捜査が疑わしさを覚えるほど制限されていると主張していた。

ジョージア州選出の共和党下院議員だったグリーン氏は、19日のソーシャルメディアへの投稿で、暗殺未遂を「やらせ」と言っているわけではないと前置きした上で、「しかし、公の場で回答されるべき疑問は山ほどある」と付け加えた。

「全てトランプ氏が正しかった」と記された赤い帽子をかぶるマージョリー・テイラー・グリーン氏/Al Drago/Bloomberg/Getty Images/File
「全てトランプ氏が正しかった」と記された赤い帽子をかぶるマージョリー・テイラー・グリーン氏/Al Drago/Bloomberg/Getty Images/File

ポッドキャスト番組司会者のジョー・ローガン氏も時折こうした疑問に言及しており、同じくポッドキャスト番組司会者のティム・ディロン氏は最近、「恐らく仕組まれたものだったのではないか」とまで発言した。

一方、カールソン氏とキャンディス・オーウェンズ氏は、こうした疑問を多くの陰謀論に登場する常連のイスラエルと結びつけた(両氏ともかねて自らの論評でイスラエルに大きく焦点を当てており、反ユダヤ主義の非難を頻繁に浴びてきたことはここで指摘しておきたい)。カールソン氏は、ケント氏の主張には一理あるかもしれないと示唆。 暗殺未遂に対するより徹底的な捜査が行われていない点には、イスラエルが米国政府に及ぼす影響力が表れているとした。

暗殺未遂の罪に問われたトーマス・マシュー・クルックス容疑者は、証拠となる記録をほとんど残していなかった。しかし、トランプ政権下およびバイデン前政権下の連邦捜査局(FBI)当局者は、同容疑者が単独で行動したと結論付けている。

他の同様の説も、予想通りイスラエルを絡めたものだった。特に、トランプ氏がユダヤ人国家に弱みを握られている、あるいは恩義を感じているという説だ。

カールソン氏は今月初め、ニュースマックスとのインタビューで、トランプ氏を遠回しに奴隷に例え、「私は彼(トランプ氏)を気の毒に思う。全ての奴隷に対してそう感じるのと同じだ。今この瞬間、彼は自由ではない」と語った。

また今週放送された新しい番組で、別の元トランプ支持派のポッドキャスターであるセオ・フォン氏は、イラン戦争にまつわる一つの論理的説明として、トランプ氏がイスラエルの支配下にあるとの見方を示唆した。

「理解できない」とフォン氏は明言。「そう、それこそが我が国の大統領がやっていることだ。全く理解不能だ。気持ち悪いし、まるでイスラエルや、あそこの闇の政府に操られているみたいだ。よくわからないが、本当に不気味でしょうがない」と訴えた。

白人至上主義者のニック・フエンテス氏は、バンス副大統領が事実上その地位に据えられたのは、ハイテク業界の強大な勢力の道具となるためだったとする、入り組んだ陰謀論を詳述している。

そしてフエンテス氏のこの発言は17日、元共和党副大統領候補のサラ・ペイリン氏によって再投稿された――もっともペイリン氏の主張によれば、再投稿の目的はあくまでも草の根保守運動「ティーパーティー(茶会)」 における自身の役割に対する称賛の声を強調することだったという(ペイリン氏はトランプ氏に背を向けたわけではないが、最近いくつかの点で同氏を批判している)。

15年後半、トランプ氏がアレックス・ジョーンズ氏の陰謀論満載の番組に出演した決断は、今にして思えば、陰謀論者たちと結託したいというトランプ氏の願望の重要な意思表明だった。しかしジョーンズ氏は現在、イラン問題を巡ってトランプ氏と決別した後、そのような陰謀論をトランプ氏に対して振りかざしている。20日には、自身のプラットフォーム「インフォウォーズ」を民主党に乗っ取らせようとしているとしてトランプ氏を非難した(インフォウォーズの買収を目指しているのは風刺ニュースサイト「ジ・オニオン」だが、同サイトは民主党の支配下にはない)。

そして、恐らく最も過小評価されていながら徐々に注目を集めつつあるのが、トランプ氏が「反キリスト」かもしれないという説だろう。キリスト教神学において反キリストとは、イエスの再臨の前に現れて人々を惑わし、偽りの救世主を体現する存在を指す。

これは、カールソン氏が最近トランプ氏との決裂の中でほのめかした説だ。また、「ワイアード」誌の調査によると、多くのフォロワーを持つ一部のトランプ支持者たちが、この件について疑問を投げかけ始めているという。

今年1月、ホワイトハウスでのイベントに出席したタッカー・カールソン氏/Kevin Lamarque/Reuters
今年1月、ホワイトハウスでのイベントに出席したタッカー・カールソン氏/Kevin Lamarque/Reuters

右派の間でこれらの説が今後どう展開していくかは、まだ見通せない。突然トランプ氏に懐疑的になった人々がただ口走っているだけで、いずれ全て収束する可能性もある。

しかし、これらの一部が実際に定着していくのは容易に想像できる。いつもの犯人(イスラエル)が登場し、こうした説を生み出しやすいいつもの状況(暗殺未遂)が絡んでいれば特にそうだ。

ジョーンズ氏やオーウェンズ氏、カールソン氏ら、トランプ氏を標的とする人々は、過去にもこうした陰謀論を広めることにかなりの成功を収めてきた。またディロン氏やフォン氏といったポッドキャスター層の間でも、これらの説は一定の支持を得つつある。彼らがトランプ氏にとって貴重な支持者だった理由の一端は、比較的政治への関心が低く、影響を受けやすい層に向けて訴えかけることができたからだ。

ここ数カ月、共和党内、特に若い共和党員の間で反イスラエルや反ユダヤ主義的な感情が高まっているにもかかわらず、共和党指導部は概(おおむ)ね傍観を続けている。また、有力な保守派活動家だったチャーリー・カーク氏の暗殺を巡る陰謀論が拡大していることについても、彼らはほとんど無視を決め込んでいる。カーク氏にまつわる陰謀論は、オーウェンズ氏が最も強力に唱えている。

しかし共和党指導部は、当初からもっと強く反論しておけばよかったと後悔しているかもしれない。上記のような感情がここへ来て、トランプ氏を巡る陰謀論に拍車をかけないとも限らないからだ。最近になって同氏と距離を置いた、一部の元盟友たちが力を貸す形で。

本稿はCNNのアーロン・ブレイク記者による分析記事です。

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