ウェッブ望遠鏡がとらえた謎の「小さな赤い点」、正体は天文学者にも分からず

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(CNN) カメラで何かを写そうとしたところへ、だれか横から写り込んでくることがある。それと同じように、米航空宇宙局(NASA)のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡がこれまでに撮影した画像のほぼすべてに、いくつもの明るく、小さな赤い点(LRD)が写り込んでいた。その正体については、まだ定説がない。

ウェッブ望遠鏡が4年前に稼働してから、この不可解な天体が画像に何百も現れ、そのなぞを解こうと何百件もの研究が始まっている。

米プリンストン大学のジェニー・グリーン教授はLRDについて「なぜこんな見え方をするのかまったく分からない。そんな天体を研究するのは、今までの研究生活で初めてだ」と語った。「なぞと呼んでいい存在だと思う」

初めからはっきりしていたのは、この奇妙な天体が多数存在するということだ。「ウェッブ望遠鏡で深宇宙のポインティング観測をするたびに、必ずいくつか見つかっていた」と、グリーン氏は指摘する。ポインティングとは、望遠鏡を特定の領域に向け、長時間かけてごく弱い光を検出する手法だ。

LRDの正体については当初、初期宇宙の巨大な銀河、あるいはちりに包まれたブラックホールではないかという説が浮上した。

だが観測が進むうちにどの説も覆され、新たにいくつかの仮説が立てられた。その多くはやはりブラックホールと関係している。

グリーン氏は「私としては成長中のブラックホールからの光に違いないと考えるが、ほかにも変わった例として、寿命を迎えた極めて巨大な恒星という説などがある」と語った。超巨大ブラックホールや銀河の進化を専門とする同氏が語ったところによると、これまでのLRD観測に最もよく当てはまるのが、ブラックホールを主な構成要素とする考え方だという。

ただし、この先まったく新しい観測結果が出て、LRDの正体をめぐる仮説がすべて覆される可能性もあると、同氏は指摘する。「今まではまさにその繰り返しだった。ある推測を立てたが、それは間違いで、別の推測を立ててもまた違っていた。今後もそうなる可能性があるとしておこう」

最終的に過去の仮説が立証されるか、あるいはまったく新しい発見があるかは分からないが、いずれにせよ宇宙への理解が深まることになるだろう。

空白を埋める「ミッシングリンク」

小さな赤い点という呼び名が初めて登場したのは、この天体についての研究が始まってから2年近く経った24年の論文だ。オーストリア科学技術研究所で銀河の宇宙物理学チームを率いるヨリト・マティー氏が考案した。正確な科学用語では「Hα(アルファ)広輝線放射体」だが、こちらのほうがシンプルで覚えやすいからだという。

LRDはウェッブ望遠鏡の稼働後に初めて見つかった。これは、当時稼働していたハッブルのような望遠鏡では解像度が足りなかったり、可視光より波長の長い赤外線への感度が不十分だったりしたためだ。それに対してウェッブ望遠鏡は、直径6.5メートルの主鏡でわずかな赤外線もとらえることができ、従来は見えていなかったものが見えるようになった。

LRDが赤く見えるのは遠方にあるから、そして宇宙が膨張しているからだ。膨張する宇宙のはるか遠くから出た光は、地球に届くまでの間に波長が伸び、赤外線の側にずれて観測される。これは「赤方偏移」と呼ばれる現象だ。

ただ、LRDはもともと赤いことも分かっている。どうして赤いのかという理由は、なぞの中でも一番不可解な部分の一つだ。

「私たちが24年に発表した研究は、LRDの正体が成長中のブラックホールで、赤く見えるのはちりの粒子に包まれているからだという主旨だった」と、マティー氏は説明する。「それから少なくとも1~2年は、おそらくこれが共通の認識だった。だが今は少し修正されている。私たちは今も成長中のブラックホールとみているが、赤いのはちりでなく、水素ガスがあるからだと考える」

LRDをめぐるなぞの多くは、その遠さに起因する。これまでに1000個ほど見つかっているが、マティー氏によればほとんどがはるか遠方にあるという。

「LRDは初期宇宙、主に138億年前の誕生から10億年の間の宇宙に多数存在している。だがもっと近い、つまりより若い宇宙では非常にまれだ」と、同氏は説明する。遠方の宇宙を観測するということは、つまり宇宙の過去へさかのぼることを意味する。地球から遠ければ遠いほど、そこからの光が地球まで到達するのに長い年月がかかるからだ。

地球にずっと近い宇宙でも、昨年初めて三つのLRDが発見され、現在その分析が進められている。だがマティー氏によると、近くのLRDは遠方の初期宇宙で見つかったLRDと比べ、10万倍もまれな存在と考えられる。

とはいえ、今後近くでもっと多くのLRDが見つかれば、さらに多くの秘密が解き明かされるかもしれない。地球により近い天体のほうが容易に調べられるからだ。

マティー氏は「私たちのブラックホールへの理解がLRDでどう変化するかという点では、歴史の空白を埋める『ミッシング・リンク(失われた環)』になり得るかもしれない」と述べた。「私たちの住む天の川銀河もそうだが、銀河の中心には超巨大ブラックホールがある。このブラックホールがどのように形成されたのかはなぞといえるが、LRDはブラックホールの誕生期または幼児期で、私たちはそれを初めて目にしている可能性がある」

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