ぶどうを育てながら、その上で発電。「農業」×「太陽光発電」のソーラーシェアリングが話題。現場を取材した

4 日前 3

今、「太陽光発電」と「農業」を組み合わせた「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」が注目を集めている。

フルーツや野菜を育てる農地の上に太陽光パネルを設置して、農業と発電を同時に行う取り組みだ。

埼玉県所沢市で行われる、ソーラーシェアリングの現場を取材した。

ソーラーシェアリングを行う観光農園「西武アグリパーク所沢」
ソーラーシェアリングを行う観光農園「西武アグリパーク所沢」

Sumireko Tomita/ HuffPost Japan

一面に広がるのは、大きな実をつけたぶどうの木々。

そしてその上には、太陽光パネルが広がっている。

埼玉県所沢市にある観光農園「西武アグリパーク所沢」では、1万2600平方メートルの農地で、ぶどうとブルーベリーをつくり、その上に設置された太陽光パネルで再生可能エネルギーを発電している。

ぶどうの品種は、「伊豆錦(いずにしき)」や「シャインマスカット」「巨峰(きょほう)」など。上部に太陽光パネルがあっても、ぶどうの生育に十分な太陽光はパネルの隙間から降り注ぐ仕組みだ。

西武アグリパーク所沢で、太陽光パネルの下で育つぶどう
西武アグリパーク所沢で、太陽光パネルの下で育つぶどう

Sumireko Tomita/ HuffPost Japan

ぶどうの木々の上に設置された太陽光パネル
ぶどうの木々の上に設置された太陽光パネル

Sumireko Tomita/ HuffPost Japan

ブルーベリーは5200平方メートルの農地で25品種育てられていて、一般向けに6月や7月には食べ放題の収穫体験が実施されている。収穫体験は今年からスタートし、家族連れなど1500人が来場した。

西武アグリパーク所沢で、太陽光パネルの下で育つブルーベリー
西武アグリパーク所沢で、太陽光パネルの下で育つブルーベリー

Sumireko Tomita/ HuffPost Japan

西武アグリパーク所沢ではブルーベリーの収穫体験を実施している
西武アグリパーク所沢ではブルーベリーの収穫体験を実施している

西武造園

収穫体験が行われる夏場は日差しも強くなってくる時期だが、太陽光パネルが直射日光を遮り、日陰を作るという効果もある。

「地産地消型」の再エネ。電気は市役所で使用

「西武アグリパーク所沢」は西武造園の子会社である西武アグリと三菱HCキャピタルエナジーとの共同事業で、所沢市での太陽光発電の新しい可能性を模索するという目的で、市からの発案でスタートした。

40年以上、遊休地となっていた西武グループの敷地を有効活用する形でつくられた。

ここで発電された電気は、地域新電力のところざわ未来電力に売電され、市役所などで使われている。「地産地消型」の再エネだ。これで本庁舎の年間の使用電力量の約40パーセントをまかなえるという。

取材は、一般社団法人「再生可能エネルギー地域活性協会(FOURE)」が主催したメディアや事業者向けの視察の一環だったが、多くのメディアや企業関係者が参加しており、注目度の高さが見受けられた。

山を切り開かない太陽光。農家の安定収入増にも。各国で導入ケース

山が多い日本では、森林を切り開くことなく、既存の農地を活かせるソーラーシェアリングは利点も多く、各地で導入が進んできている。

農林水産省によると、営農型太陽光発電設備を設置するための農地の一時転用許可の累積件数は6000件を超えている。

太陽光パネルの設置を巡ってはメガソーラーの乱開発なども問題視される中で、自然を壊さず、地元の人の理解を得た形での再生可能エネルギー導入が鍵となってくる。

ソーラーシェアリングの場合、既存の農地の上に太陽光パネルを設置する形になるため、自然を壊すことなく導入できる。

太陽光パネルを設置することで、農家にとっては農業の収入に加えて、発電での安定収入が入ってくるなどのメリットもある。

日本各地で太陽光パネルの下で、お茶やみかん、梨、米なども育てられている。

葉物野菜などは、あまり日光が当たりすぎると葉焼けしてしまうこともあるので、太陽光パネルの設置によって適度に遮光され、直射日光に弱い農作物には利点も多い。

海外ではさらに導入が進んでいて、イタリアではりんご、フランスではキウイ、中国では米などが育てられている。

中国での稲作のソーラーシェアリング
中国での稲作のソーラーシェアリング

VCG via VCG via Getty Images

イタリアのりんご農園でのソーラーシェアリング
イタリアのりんご農園でのソーラーシェアリング

Simone Padovani via Getty Images

導入へのハードルは。遮光率の一律規制の議論も

太陽光をおくことで、農業の収入に加えて、安定収入が入ってくるなどのメリットは多くあっても、農地転用許可を自治体に申請する必要があるなど、導入のハードルはまだ少し高いなどの課題もある。

初期投資費用がかかってしまうことから、個人の農家がチャレンジするにはハードルもある。少しずつ普及しているとはいえ、ソーラーシェアリングに挑戦したい発電事業者は多くいても、農家側の関心の割合はまだまだ高くないという。

農林水産省は来年4月の施行を目指す「望ましい営農型太陽光発電」の新基準で、遮光率を一律で30%未満とする案を示している。

しかし、様々な農作物が必要とする日射量は品種によっても異なるため、現場や専門家からは強い批判もあがった。遮光率の一律の規制が、普及を妨げないか懸念も広がっている。

(取材・記事=冨田すみれ子/ ハフポスト日本版) 

記事全体を読む