「くるみ割り」の異名取る古代人類、足跡の化石から新たな発見 ケニア

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2026.07.31 Fri posted at 13:50 JST

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ケニアのクービ・フォラ地層で発掘された約140万年前の足跡の化石/Kevin G. Hatala

ケニアのクービ・フォラ地層で発掘された約140万年前の足跡の化石/Kevin G. Hatala

(CNN) 大きな歯や力強い咀嚼(そしゃく)筋を持つことから「くるみ割り人間(ナットクラッカー・マン)」とも呼ばれている古代人類について、新たに見つかった足跡の化石を分析した研究チームが、体格や社会的関係を示す新たな証拠を発見した。

くるみ割り人間の学名は「パラントロプス・ボイセイ」。約230万~約120万年前、アフリカ東部に生息していた。ケニアのトゥルカナ湖東岸に位置するクービ・フォラ地層で新たに特定された足跡の化石を、米チャタム大学准教授で独マックス・プランク研究所でも進化人類学を研究するケビン・ハタラ氏らが新たに分析し、その結果を27日付で米科学アカデミー紀要(PNAS)に発表した。

パラントロプス・ボイセイはこれまで、身長が平均131センチほど、体重が同49キロほどとみられていた。ところが新たな足跡21個の長さと幅を基に計算したところ、身長約180センチ、体重約75キロと、現代人により近い体格だった可能性が明らかになった。

さらに足跡のパターンから、同時に8人が集団でこの場所を歩いた跡であることが示唆された。研究チームは論文の中で、足跡から社会構造の複雑さがうかがえると報告している。

ハタラ氏は「この遺跡はヒト族の体の構造や移動機能、行動、そして環境の素晴らしいスナップショットをとらえている」と話す。

同氏はCNNへのメールで「このようなひと組ごとの足跡が提供するのは、ヒト族の暮らしや環境とのかかわり方を直接観察できる瞬間への窓だ」と述べた。「この足跡は、成人男性の集団が湖岸に沿って一緒に移動した様子をとらえている可能性がある」との見方を示し、成人男性だけしかいないのは、カバなど危険な動物の脅威が理由だったのかもしれないと述べた。

米ワシントン大学教授で同大バーク自然史文化博物館の客員キュレーターも務めるパトリシア・クレイマー氏は、「足跡は身体構造と行動の両面で情報をもたらしてくれる、重要な化石だ」と語る。クレイマー氏は過去にここの足跡遺跡を研究したこともあるが、今回の研究には参加していない。

同氏はCNNへのメールで「研究チームがクービ・フォラの足跡遺跡について、新たな情報と分析を加えてくれたことに興奮している」と述べた。

共存した近縁種

ここで見つかっているのは約140万年前のくっきりした足跡で、深さ12センチほど。研究チームによれば、湖の浅瀬の泥を踏んだ跡とみられる。1978年に、米スミソニアン国立自然史博物館のアンナ・キャサリン・ベレンズマイヤー氏らによる発掘調査で、足跡の筋が7本見つかった。その後2016年と23年にも、ヒト族の足跡14個がレイヨウやカバなど動物の足跡とともに発掘された。

発掘された地表には、ヒトの浅い足跡とカバやレイヨウの深い足跡が混在している/Kay Behrensmeyer/Smithsonian
発掘された地表には、ヒトの浅い足跡とカバやレイヨウの深い足跡が混在している/Kay Behrensmeyer/Smithsonian

パラントロプス・ボイセイは、トゥルカナ湖付近に生息していた唯一の古代人類ではない。何十万年もの間、ホモ・エレクトスと共存していた。ハタラ氏が24年に率いた別の研究では、ヒト族のうち2種類がわずか数日違いでつけた足跡を発見したと報告され、その2種類はホモ・エレクトスとパラントロプス・ボイセイだったと推定されていた。

べレンズマイヤー氏は声明で「違う種類の間にどんな交流があったかは明らかでないが、この時期に両方が共存していたことは分かった」と述べた。

ホモ・エレクトスは現生人類ホモ・サピエンスに似た体型を持っていた最初のヒト族で、直立歩行の生活に適応したことがうかがえる。これに対して系統の異なるパラントロプス・ボイセイの身体的特徴は、樹上にすんでいた祖先のほうに近かった。

パラントロプス・ボイセイの足跡はホモ・エレクトスや現代人の足跡に似ているが、ハタラ氏によればいくつか重要な違いがある。

パラントロプス・ボイセイがいてホモ・エレクトスがまだいなかった更新世(約260万~約1万1700年前)初期のヒト族の足跡を調べた先行研究では、ホモ・エレクトスや現代人に比べて足のアーチが浅く刻まれていた。実際に足が扁平(へんぺい)とは必ずしもいえないが、「少なくとも地面に対する足の動かし方が違っていたことは分かる」と、ハタラ氏は説明する。

同氏はまた「同じ足跡で、親指とほかの指の角度の違いが大きい傾向もみられた」とも語った。「どちらも現代人に通常みられる特徴とは異なるため、この形の足跡はパラントロプス・ボイセイがつけた可能性が高いとの仮説を立てた」

足跡は地面のタイプや湿り気、粘り気などによって大きく変わることがあるため、そういった条件も調整したという。

「さまざまな生息環境を幅広く試した。更新世初期の足跡が保存されている同じ種類の泥に水を加えて復元し、何度も実験を行った」

パラントロプス・ボイセイの足跡をさらに詳しく分析することで、その習性をめぐるまた新たな手がかりが得られるかもしれない。ただしクレイマー氏によると、足の指の角度やアーチの高さが生活様式にどう影響したかまでを解釈するのは難しいとみられる。

同氏は、特定の形態に重要性を持たせることには慎重を期すとの構えを示し、「二足歩行で効率的に動き回る方法はたくさんあるからだ」と語った。一方で、今回の研究のように掘り下げた、徹底的な分析はぜひとも必要だと強調した。

瞬間をとらえるスナップショット

パラントロプス・ボイセイの化石が初めて見つかったのは1950年代。だがハタラ氏によると、頭蓋骨(ずがいこつ)以外に間違いなくこの種類だと断定できる化石はほとんどなく、これまで体格を推定するのが難しかった。この時代、この場所の骨は大きめならホモ・エレクトス、小さめならパラントロプスと考えられてきた。

「だが実際の体の大きさは、思っていたよりずっと近かったのかもしれない」と、ハタラ氏は言う。

足跡の化石は骨や歯などの身体的な化石と違い、古代人類がまだ生きていた瞬間の痕跡をとらえたスナップショットだ。ベレンズマイヤー氏によると、それは過去を保存するだけでなく、現代人とはるか昔に絶滅した祖先とのつながりを浮かび上がらせる。

「骨やあご単体のかけらよりずっと親しみを感じやすい」と、同氏は言う。

クレイマー氏によると、こういう視点に立てば、私たちの祖先がすんでいた大昔の世界がもっとはっきり見えてくる。パラントロプス・ボイセイやホモ・エレクトスの外見は現代人とあまり似ていなかったかもしれないが、それから約50万年後に、ホモ・サピエンスはかれらの足跡をたどって同じアフリカの大地を歩いたのだ。

「私たちとよく似ていながら、同時に大違いでもある生き物たちがすんでいた世界。これはそんな世界の物語だ」と、クレイマー氏は語った。

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