谷底の秘境に破壊的被害、グランドキャニオンを土石流が襲った経緯

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2026.09.03 Thu posted at 20:20 JST

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8月31日、洪水被害を受けたグランドキャニオンのブライトエンジェル渓谷に建ち並ぶ建物/John Locher/AP Photo/John Locher

8月31日、洪水被害を受けたグランドキャニオンのブライトエンジェル渓谷に建ち並ぶ建物/John Locher/AP Photo/John Locher

(CNN) 米アリゾナ州にあるグランドキャニオン国立公園の谷底は、切り立つ崖に囲まれた唯一無二の美しい秘境だ。その雄大な斜面が突然なんの前触れもなく、荒れ狂う滝と化した。

9月29日に発生した豪雨で、雨水が谷に集まって流れ込み、のどかな小川が一変して激しい濁流に。ブライトエンジェル渓谷や谷底で唯一の宿泊施設「ファントム・ランチ」を訪れていた旅行者らは、命がけの避難を強いられた。

鉄砲水で歩行者用の橋やキャンプ場が流され、少なくとも2人が死亡、1人が今も行方不明になっている。

自然がもたらした壊滅的な被害は、アウトドア派にとっても信じられないような規模だった。

グランドキャニオン南側のサウスリムで働くジェシー・ジェレムチャックさんは、「最初は普通の雷雨だった。それから巨大な積乱雲が現れた」と振り返る。

8月29日、クリストファー・ドライさんが撮影したグランドキャニオンに落ちた稲光。この数分後、破壊的な風雨が現地を襲った/Christopher Dry
8月29日、クリストファー・ドライさんが撮影したグランドキャニオンに落ちた稲光。この数分後、破壊的な風雨が現地を襲った/Christopher Dry

息子と崖の上にいたクリストファー・ドライさんは、ハイキング中にいなずまが走るのを見た。雨が降り出したかと思うと、数分後には「視界がゼロ」になったという。

「雲は実際には下から湧き上がり、峡谷から素早く立ち上っていた」と話す。

デービッド・グレゴリーさんはファントム・ランチにいた。ちょうど荷ほどきを始めた時に公園の職員がやってきて、避難の可能性に備えてほしいと告げた。

そのわずか10分後に職員があわてて戻ってきた。旅行者はただちに避難するよう指示された。

「近くの小川が黒い土石流になり、勢いよく流れているのが分かった」と、グレゴリーさんは語る。「雨が降り出すと、流れはどんどん速くなった。私が走れるスピードよりもっと速かったと思う」

グレゴリーさんはその後、ヘリコプターで救助された。

同じくファントム・ランチ周辺にいたパース・デサイさんは、高さ約1.2メートルの瓦礫(がれき)が押し寄せ、仲間が「上だ、上だ」と叫ぶなかでサボテンの茂みに逃げ込んだ。

デサイさんはAP通信に「小川があふれ、どこからともなく滝が現れ、いたるところで土砂崩れが起きていた」と語った。デサイさんたちのグループもへりで救助された。

だが逃げられなかった人々もいる。

友人同士の冒険旅行で2人が死亡、1人不明

友人同士だったジョン・ジュースティさん(46)、ブレント・ローゼンクランツさん(42)、ティモシー・アレン・スミスさん(53)の3人にとって、グランドキャニオン探検は長年の夢だった。家族らによると、被害の前日から谷底付近で2泊し、一緒にハイキングや釣りを楽しむ予定だった。

ジュースティさんとローゼンクランツさんはグランドキャニオンの崖の上からSNSに写真などを投稿していた。ローゼンクランツさんは28日の投稿で「これから4日間に50キロ以上のハイキングをする予定だ。高低差1.6キロあまり、重さ18キロのバックパックを背負って。これは冒険になる」「皆さん知っての通り、私は高い所が苦手。帰ったらたくさん面白い話ができそうだ」と書いていた。

しかし2人の家族は9月1日午前、それぞれの死亡を確認する連絡を受けた。米国立公園局は同日の声明で、ハイカー2人の身元が確認されたと発表した。

スミスさんの捜索は1日も続いた。当局者らは同日の時点で、残る行方不明者は1人と発表したが、名前は明らかにしなかった。現場は繰り返し激しいにわか雨に襲われて救助隊の安全確保が難しく、捜索は難航している。

米国境警備隊の専門チームも捜索に加わった。近隣の郡保安当局がドローン(無人機)を使い、ブルートゥースの信号を出す機器を探す方針だ。

峡谷を襲った「破壊的な勢い」の洪水

国立公園局は29日午後0時23分ごろ、米国立気象局から受けた鉄砲水の警報を現地に伝えた。地元緊急対応当局の責任者によると、峡谷内は携帯電話の電波が届かないため、現場の衛星通信端末に計6件のメッセージが送られた。

ブライトエンジェル川に設置された水位計測システムから当局に水位上昇の通知が入った。だがグランドキャニオン国立公園の副責任者ブライアン・ドラポーさんによると、川の流れが「破壊的な勢い」に達するとともに、システムとの通信が途絶えた。その理由はまだ不明だという。

国立公園局は職員や入園者の避難を急いだ。川やキャンプ場、ファントム・ランチのエリアには徒歩かラバ、コロラド川下りでしか到達できない。

午後2時45分にファントム・ランチからの避難が始まった。それから1時間以内には国立公園局の救助ヘリが出動し、80人以上が無事避難した。

重要な送水管が破損

31日夜には国立公園全体が再開され、一般の来園者が入れるようになった。だがドラポーさんによれば、サウスリムへの給水に使われる送水管が大きく破損していた。

送水管は遊歩道や展望台、宿泊施設などが集中するサウスリム全域に飲料水や消火用の水を供給している。現時点で被害の全容は把握できていないが、上空からの調査によると、数キロにわたって破損したとみられる。

ドラポーさんは「現時点で貯蔵されている水は約2週間分だ」と述べた。

園内では宿泊施設を閉鎖しキャンプ場の水栓を締めるなどして水の使用を控え、まきや炭を使ったキャンプファイヤーなどもすべて制限している状態だ。

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