「西洋型の食事」が腸内細菌に“大腸がんを促す物質”を作らせる可能性

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西洋型の食事と大腸がんをつなぐ腸内細菌の働き

これまでの研究では、脂肪や赤肉(red meat:牛肉や豚肉などの哺乳類の肉)、加工肉が多く、食物繊維が少ない「西洋型の食事」が、大腸がんのリスクと関連すると報告されてきました。

また、大腸がん患者や発症リスクの高い人の便では、デオキシコール酸が多い傾向も知られていました。

デオキシコール酸は、脂肪の消化を助けるために体内で作られる胆汁酸を、特定の腸内細菌が加工して作る物質です。

このため、デオキシコール酸が大腸がんの発症に関わっている可能性が考えられていました。

しかし、患者の便で多く見つかるという関連だけでは、デオキシコール酸が腫瘍を促したのか、大腸がんによって腸内環境が変わった結果として増えたのかは分かりません。

そこで研究チームは、食事によって腸内細菌が作るデオキシコール酸が増え、それが大腸の腫瘍形成を後押しするのかを、複数の実験で段階的に検証しました。

最初の実験では、若いうちから大腸にポリープができやすいブタが使用されました。

このブタは、特定の遺伝子変異により大腸がんになりやすい人に近い条件で、食事がポリープの進行に与える影響を調べるために用いられました。

研究チームは実験前にすべてのブタを内視鏡で調べ、すでにあるポリープの数や大きさ、性別などが一方に偏らないよう、2つのグループに分けました。

一方には赤肉と脂肪を多く配合した餌を与え、もう一方には比較用の対照食を与えました。

どちらの食事もこの実験のために設計されたもので、研究チームは各グループに1日約1キログラムの飼料を3カ月間与えました。

その結果、赤肉と脂肪を増やした実験食のグループでは、便中のデオキシコール酸が増えていました。

同じグループでは、大腸の内壁をつくる上皮細胞のうち、増殖している細胞が多くなり、ポリープの数と大きさも増加しました。

ただし、この段階で確認されたのは、デオキシコール酸の増加と大腸の変化が同時に起きたことまでです。

食事によって複数の胆汁酸や腸内細菌が変化しているため、デオキシコール酸だけが直接の原因だったとは判断できません。

そこで別のブタ実験で、赤肉と脂肪を増やした実験食、その実験食にコレスチラミンを加えた食事、赤肉と脂肪を増やしていない比較用の対照食の3条件を比べました。

コレスチラミンは、胆汁酸を腸内で吸着し、便とともに体外へ排出させる薬です。

そしてこの薬を与えたグループでは、赤肉と脂肪を増やした実験食に伴う上皮細胞の増殖の高まりが抑えられていたのです。

この結果から、ブタの大腸で起きた変化には胆汁酸が関わっている可能性が高まりました。

研究チームは次に、大腸がん患者1034人と、対照となる大腸がんではない人たち1108人の便データを解析しました。

その結果、大腸がん患者の便においてクロストリジウム・スシンデンス(Clostridium scindens)などの腸内細菌がデオキシコール酸を作る際に使う遺伝子が、多く見つかりました。

これは、デオキシコール酸を作れる腸内細菌が大腸がん患者に多い可能性を示しています。

そこで研究チームは、腸内細菌を持たない状態で育てたマウスに、同じ基本構成の腸内細菌を定着させ、そのうち一方のグループだけにデオキシコール酸を作れる細菌を加えました。

さらにマウスには高脂肪食を与えた上で、発がん性物質と腸炎を起こす薬を使い、大腸に腫瘍ができやすい状態にしました。

その結果、デオキシコール酸を作れる細菌を加えたマウスでは、大腸腫瘍の数がそうでないマウスと比較して増えていたのです。

さらに、同じ種類の細菌からデオキシコール酸を作る能力だけを失わせると、マウスにできる大腸腫瘍は少なくなりました。

人間の大腸組織を再現した培養モデルでも、デオキシコール酸を作れる細菌の培養液は、作れない細菌の培養液より上皮細胞の増殖を強めていました。

これらの結果から、特定の細菌が存在することだけではなく、その細菌がデオキシコール酸を作る働きが、がんの生じやすい条件下で大腸腫瘍を後押しすることが示されたのです。

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