花火大会⇒ドローンショーに変える動き世界で続々。犬猫や野生生物、人間にも優しい理由とは?

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カナダ・プリンスエドワード島の街スリー・リバーズでは2026年、サマーフェスティバルで実施してきた花火をドローンショーに変更した。

CBCによると、きっかけになったのは地元動物保護団体から送られたメールだった。団体は、花火が動物に与える悪影響について説明し、別の方法を検討してほしいと訴えていた。

人間にとって楽しみなイベントである花火大会も、犬や猫などのペットにとっては、大きなストレスになりうる。

動物保護団体ヒューメインソサエティ・プリンスエドワード島のアシュリー・トラビス氏は、「動物たちは何が起きているのかわかりませんし、花火が何かも理解できません」とCBCの取材に説明。

「とても大きな音や爆発音や閃光は、動物たちにとってかなりの恐怖になり得ます」と話している。

アメリカ・ニューヨークで打ち上げられた独立記念日を祝う花火(2026年7月4日)
アメリカ・ニューヨークで打ち上げられた独立記念日を祝う花火(2026年7月4日)

via Associated Press

花火の季節になると、犬や猫が音や光に驚き、逃げ出して行方がわからなくなったという報告が増加する。逃げたペットが怪我をしたり、交通事故などのトラブルに巻き込まれる可能性もある。

日本でも、様々な自治体動物保護団体が、花火の時間帯にはペットを家に入れておく、なるべく音が聞こえない部屋に移動させる、万が一逃げ出した時のために、迷子札やマイクロチップを装着させておくなどの対策を呼びかけている。

野生生物にも悪影響

花火はペットだけではなく、野生生物にとっても危険な存在になりうる。

ブルガリアでは2025年1月、スレドナ・ゴラ山脈にある町の近くの森で1000羽以上のアトリの死体が見つかった

その後の調査で、死んだアトリの体から、骨折や内臓損傷、内出血が見つかった。

研究者たちは、町で行われた新年を祝う花火の音にアトリが驚き、木や地面、互いに衝突したことが死因になったと考えている。

花火は野生生物に驚かせ、死に至ることもあると報告されている
花火は野生生物に驚かせ、死に至ることもあると報告されている

Arterra via Getty Images

イタリア・ローマでも2021年1月1日に、大半がムクドリとみられる数百羽の鳥の死体が路上に横たわっているのが発見された。

この時の死因は正式に確認されていないものの、国際動物保護機関(OIPA)は、爆竹や花火が打ち上げられたことが原因ではないかと推測している。

また、アメリカ・アーカンソー州でも2011年1月に、約5000羽のハゴロモガラスが死んでいるのが発見され、その後の調査で大みそかの花火が原因である可能性が高いことが明らかになった。

大気汚染も問題に 

花火からドローンへの移行を後押ししている要因は他にもある。大気汚染の悪化に対する懸念だ。

アメリカ肺協会によると、花火が爆発すると、二酸化硫黄、二酸化炭素、一酸化炭素などの肺に有害なガスが放出されるほか、煙にはアルミニウム、マンガン、カドミウムなどの金属が含まれている。

同協会は、喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)など肺疾患の症状を悪化させる可能性があるため、できる限り花火の煙を避けた方が良いと伝えている。

花火の煙には、呼吸器系へ影響を与える可能性のある微粒子「PM2.5」も含まれている

栃木県の調査では、花火大会が行われた時間帯にPM2.5濃度が急激に上昇していた。

アメリカの首都ワシントンD.C.でも、2026年7月に行われた建国250周年の独立記念日の花火の後、1時間あたりのPM2.5濃度が、通常の水準の6.7倍に達したことが調査でわかった。

この調査を行った大気汚染のモニタリングとデータ分析を行うクラリティ・ムーブメントによると、ワシントンD.C.では大気汚染がピークに達した後も、約5時間にわたり汚染が高い状態が続いた。

市当局は高齢者や子ども、持病のある人の健康に悪影響を及ぼすレベルだとして翌朝「コード・レッド(厳戒警報)」を出し、屋外で過ごす時間を短くするよう呼びかけた。

インドでは、毎年行われるヒンズー教の伝統的なお祭り「ディワリ」で、大量の花火や爆竹による大気汚染が深刻な問題になってきた。

直近の2025年のディワリでも、首都ニューデリーが煙で覆われ、「大気質指数(Air Quality Index=AQI)」が呼吸をするのが不健康とされる危険レベル350になった。

ディワリの祝祭が行われた翌日、スモッグで覆われたインド・ニューデリー(2025年10月21日)
ディワリの祝祭が行われた翌日、スモッグで覆われたインド・ニューデリー(2025年10月21日)

The India Today Group via Getty Images

気候変動の影響も

生き物への影響や大気汚染に加え、気候変動による山火事の増加も、花火取りやめの決定に影響を与えている。

ヨーロッパは2026年夏に記録的な暑さに見舞われ、各国で最高気温の記録を更新。イギリス、フランス、スペインなど各地で山火事が起きて深刻な被害を被った。

BBCによると、イギリス・イングランド東部の海岸沿いの街グレート・ヤーマスでは、山火事の懸念から夏に実施していた花火をドローンに変えた。

山火事が多いアメリカ西部でも、同様の動きが進んでいる。

ユタ州ソルトレークシティーは2023年から、火災や大気汚染への懸念から、独立記念日の花火をドローンショーにした。

同市のエリン・メンデンホール市長はこの決定について「気温が上昇し、火災の危険性が高まる中、私たちは空気の質と山火事が発生する可能性の双方に配慮しなければなりません」と、プレスリリースで述べている。

ユタ州に隣接するコロラド州ボルダーも、1941年から続けてきた独立記念日の花火をドローンショーに切り替えた。

市当局は長年の伝統を止めるのは「簡単な決断ではなかった」としつつ、「気候変動によって火災の危険が高まっていることなどを考慮した」と説明している。

フロリダ州マイアミビーチで行われた独立記念日のドローンショー
フロリダ州マイアミビーチで行われた独立記念日のドローンショー

Jeff Greenberg via Getty Images

簡単な決断ではないが 

他にもカリフォルニア州ナパなど様々な都市が独立記念日の花火をドローンショーへ切り替えているが、移行は必ずしも簡単ではない。

ドローンショーは、花火に比べてコストがかかる(ただし近年は、手の届く値段になりつつあるという)。

また、ドローンも必ずしも安全なわけではない。オーストラリア・シドニーで2026年5月に開かれたフェスティバルでは、 約90台のドローンが空から落下した。

何より、独立記念日や新年のお祝いなど、花火は世界各地で伝統行事の一つとしてなくてはならないイベントの一部になってきた。

日本でも全国各地で花火大会が夏の風物詩になっており、楽しみにしている人も多い。

ドローンには、空に絵や文字を描いたり、ストーリーを展開させたりと、花火にはない細やかな演出ができるという利点もある。

その一方で、鮮やかな光と大きな爆発音がなければ、物足りないと感じる人もいるかもしれない。

それでも、気候変動による干ばつや水不足がますます深刻な問題になる中、花火を取りやめる動きは今後も広がっていきそうだ。

また、花火の取りやめはペットや野生生物だけではなく、人間にとっても優しい選択肢になりうる。

キプロスの首都ニコシアは、高齢者や赤ちゃん、自閉症のある人、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を抱える人らに、苦痛や不安を与える可能性があるとして、新年を祝う花火を2026年からドローンに変更した。

戦争によるPTSDを抱えている人たちにとっては、花火の閃光や爆発音が戦闘時の状況を思い出させ、パニックやフラッシュバックを引き起こす原因になることもある

ニコシアの市当局は、花火をドローンに置き換えるという決定は「持続可能性の目標に沿ったもの」と説明している。

花火をめぐる議論が進む中、取りやめるのではなくより静かな花火を選んだ街もある。また、ドローンと花火を組み合わせた演出も生まれている。

文化芸術として世界中で愛されてきた花火をより持続可能なものにしていくために、変化が必要な時期に差し掛かっているのかもしれない。

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