(CNN) 天の川銀河の中心にある超大質量ブラックホール「いて座A*(エースター)」からガスが噴き出している証拠を、米大学の科学者らが発見した。
いて座A*は過去50年以上の間、天文学界を戸惑わせてきた。物理法則によれば、すべてのブラックホールと同様に周りの物質をのみ込むだけでなく、その一部を風や細長く絞られた「ジェット」の形で放出しているはずだが、不気味な静けさに包まれていた。これまでの観測で、2万年以上前に爆発的な風が吹いた形跡は見つかったが、その後の活動はとらえられていなかった。
だが米ノースウェスタン大学のマーク・ゴルスキ研究助教とレナ・ムルチコバ助教が5年間に及ぶ観測データを基に、極めて詳細な周辺の画像を作成したところ、低温のガスが存在しない大きな円錐(えんすい)形の空洞が見つかった。
両氏らのチームが今月、天体物理学誌「アストロフィジカルジャーナル」の速報版に発表した研究によると、この空洞はブラックホールから直接放出される高温ガスの風によって形成されたと考えられる。
「ブラックホールがヘアドライヤーのような役割を果たす」と、ゴルスキ氏は語る。「濡れた髪のように低温で高密度の物質に、熱く強い風を吹き込む。風は髪を温めて水分を飛ばし、周囲の湿った髪を少し押しのけるが、髪を頭から完全に吹き飛ばすほどの勢いはない」
過去にもほかの銀河の中心で、超大質量ブラックホールから同様のアウトフロー(ガスの流出)が観測されていた。米メリーランド大学のクリストファー・レイノルズ教授によると、アウトフローはブラックホールが宿主銀河にエネルギーを放出し、その成長を制御する仕組みの重要な一部を担っている。
レイノルズ氏は今回の研究に関与していないが、「天の川銀河のブラックホールではこれまで、このアウトフローが非常に見つけにくかった」と強調し、ゴルスキ氏らの研究は風を直接観測したわけではないものの、風が存在することを明確に示した「真の偉業」だと評価した。
吹いている風は弱め

イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)が捉えた「いて座A*」/Event Horizon Telescope
ブラックホールは強い重力で光さえも吸い込むが、周囲に渦巻く物質が摩擦などで熱くなったり光ったりして、電磁波やX線を放出することがある。ブラックホールがガスを引き寄せる時には、一部の粒子が風やジェットとして外へ放出され、光速に近いスピードで数千光年のかなたまで飛ばされる。
ゴルスキ氏とムルチコバ氏は南米チリのアルマ望遠鏡を使って、いて座A*周辺の低温ガスの分布マップをかつてない精度で作成し、電磁波の干渉をすべて取り除いた。そこに浮かび上がったのは、ブラックホール自体を頂点とする長さ約3光年、開口角45度の空洞だった。
チームは続いて米航空宇宙局(NASA)のチャンドラX線観測衛星を使い、この領域の低温ガスを押しのけているのは銀河の中心から出てくる高温のプラズマ(電離したガス)であることを確認した。
「風に飛ばされる粒子を直接検出したわけではないが、風の方向とエネルギーを推定することはできた」と、ゴルスキ氏は説明する。

1 時間前
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