ウクライナを圧倒してきたロシアの人的優位に陰り 影響は戦場のみならず経済にも

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(CNN) もしもあなたに、平均的な年収の4倍を超える8万ドル(約1300万円)の一時金が舞い込んだら、そのお金をどうするだろう。あるいは、14万ドルの借金を帳消しにしてもらえるとしたら?

ロシアの男性たちは今、そんな問いを投げかけられている。軍がウクライナで戦う兵士らに、何百万ルーブル(1ルーブル=約2.2円)ものインセンティブを提示しているのだ。道路沿いの看板や若者向けのSNS広告には、「ヒーロー」になれる、優先的にロシア市民権が取れるといううたい文句とともに、一般的な年収を超えるとんでもない金額が掲げられている。

入隊のボーナス600万ルーブル(約1300万円)をうたう広告=1月26日、ドルゴプルドニ/Contributor/Getty Images
入隊のボーナス600万ルーブル(約1300万円)をうたう広告=1月26日、ドルゴプルドニ/Contributor/Getty Images

移動式新兵募集拠点=6日、モスクワ/Natalia Kolesnikova/AFP/Getty Images
移動式新兵募集拠点=6日、モスクワ/Natalia Kolesnikova/AFP/Getty Images

ロシア経済の専門家ヤニス・クルーゲ氏によると、それでもロシア軍では、今年第1四半期の新規入隊者数が昨年の同期を20%下回り、今も伸び悩み続けていることがうかがえる。

ロシアはこれまでずっと、膨大な人口と巨大な軍需産業を後ろ盾にして時間のかかる過酷な戦闘を持続させ、消耗戦でウクライナに粘り勝ちするという戦略を取ってきた。そして開戦から5年の今、軍資金が苦しくなったプーチン氏の窮地を救っているのが、イラン情勢の影響を受けた原油価格の高騰だ。

問題はどこにあるのか。

「ルーブルが戦争に行くわけではない」と語るのは、英シンクタンク、国際戦略研究所(IISS)の上級研究員ナイジェル・グールドデービス氏だ。同氏によれば、国家が市民を戦争に行かせるのに強制でなく金を支払うのは、ロシアの歴史上初めてのことだ。

同氏は最近の報告書で「このインセンティブはもはやうまく機能していないこと、ロシアが失う兵員は採用する兵員を上回るようになったことがうかがえる」と述べた。

アナリストらは、ロシア政府が軍のてこ入れに苦し紛れの策を打つようになったと指摘する。プーチン氏がウクライナ侵攻を続けたいなら、今年は国民の反感を買う決断をさらに重ねざるを得ないだろうとの見方が強い。

新兵候補が去年、高い一時金をもらって入隊しようという気になれなかったなら、今年どうすればその気にさせることができるのか、結局はっきりした答えはない。特に、前線の兵士がひどい扱いを受け、命がけの地上任務に送り込まれないよう上官にわいろを渡す者もいると報じられるなかでは、なおさらだ。

ロシアはこれまでに何万人もの元受刑者を前線へ送り、北朝鮮兵を第3陣まで追加し、移民にも入隊を促すインセンティブを提供してきた。政府は最近また新たな採用作戦として、軍と契約した兵士が借金を返せず困っている場合に債務を免除する制度を打ち出した。

モスクワで開かれた対独戦勝記念日軍事パレードに参加するロシア兵と北朝鮮兵=5月9日/Contributor/Getty Images
モスクワで開かれた対独戦勝記念日軍事パレードに参加するロシア兵と北朝鮮兵=5月9日/Contributor/Getty Images

戦闘に投入される年齢層の男性が奪われた結果、労働力不足の危機に直面するロシア経済にも影響が及んでいる。

「ロシアの経済全体が史上最悪の労働力不足に苦しんでいる」と、同氏は指摘する。「前線へ行く人を探すのが大変なだけでなく、雇用する相手を探すのも大変な状況だ」

欧米の情報機関によると、これまでに50万人近くのロシア兵が死亡し、数十万人が徴兵逃れのために出国した。その結果、労働力が不足して賃金が上昇し、これがインフレの一因にもなっている。

「労働力は物的資本や資金よりも希少な資源で、そのうえ増やすのが難しい」と、グールドデービス氏は語る。「新工場を建てたり資金を集めたりするのは努力すれば可能だが、国家が出生率を定めることはできない」

ロシア政府は民生、軍事の両部門にかかる負担を軽減するため、今後インドや北朝鮮、アフリカ諸国からさらなる労働力を呼び込むことを強いられるかもしれない。

あるいはもっと大胆に、2度目の強制動員に踏み切り、同時に徴兵年齢男性らの出国を制限するような措置を取るかもしれない。プーチン氏は最初の「部分的動員」で大きな反発を買い、国外への移住者も急増したため、これまでは再動員をなんとか避けようとしてきた。

グールドデービス氏は、政府がまもなく「ロシアの経済、社会に対する要求を急激に拡大するか、あるいは戦争の目的を後退させるかという根本的な選択」に直面するだろうと述べた。

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