同じ環境で報酬を得ると、脳は「古い記憶」を使わなくなる

2 ヶ月前 16

ハエは砂糖を再び得ると「以前の記憶」が弱まる

動物にとって記憶は、生存を支える重要な機能です。

食べ物の場所や危険な刺激を覚えることで、無駄な行動を減らし、効率よく生きることができます。

しかし環境は常に変化しており、かつて価値が高かった情報が、時間の経過とともに重要でなくなることもあります。

そのためには、記憶を蓄積するだけでなく、今その記憶を使うべきかどうかを調整する柔軟性が必要だと考えられてきました。

ただし、その具体的な仕組みは十分には分かっていません。

そこで研究チームは、記憶の神経回路が詳しく解明されているショウジョウバエを用いて、この問題を検証しました。

まず、ハエに特定のにおいと砂糖を組み合わせて提示し、においが報酬につながることを学習させました。

この学習が成立すると、ハエは後の行動で、そのにおいに自発的に近づくようになります。

次に研究者たちは、学習から数時間から1日ほど経過した後、においを伴わずに砂糖だけを再びハエに与えました。

つまり、新しい学習は起こさず、報酬そのものだけを再経験させたのです。

その結果、砂糖を再び味わったハエは、以前なら好んで近づいていたにおいに対して、あまり反応しなくなりました。

一方で脳内の活動を詳しく調べると、記憶そのものが消えたわけではないことが分かりました。

ショウジョウバエの脳には「キノコ体」と呼ばれる記憶の中枢があり、その記憶中枢の神経細胞の働きを調べてみると、学習によって作られた活動の変化は、砂糖をもう一度与えた後もそのまま残っていたのです。

つまりこの現象は、記憶が失われたのではなく、記憶は存在しているが行動に反映されなくなった状態だと結論づけられました。

どうしてこのような「記憶の弱まり」が見られるのでしょうか。

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