
北朝鮮が進める憲法改正と統治体制の変化が、国際社会の注目を集めています。祖国統一を掲げてきた従来の路線を転換し、韓国を「別国家」と位置づける姿勢を鮮明にしただけでなく、金正恩総書記への権限集中も制度上さらに強化されました。メルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』では、著者で宮塚コリア研究所代表の宮塚利雄さんが、今回の憲法改正が意味する政治的変化と、その背景について考察します。
「金正恩総書記の北朝鮮」到来か
ロシアの首都モスクワで2026年5月9日、第二次世界大戦中にナチス・ドイツに勝利した記念日を祝う軍事パレードが実施された。このパレードに北朝鮮兵が初めてロシア兵と行進し、良好な関係を示したが、このようなことは金日成・金正日時代には考えられないことだった。北朝鮮では今、金正恩総書記の権限強化作業が進められている。
韓国・北朝鮮憲法にはじめて登場した「領土条項」は、第2条として新たに盛り込まれた。従来の第2条には、北朝鮮が「朝鮮民主主義人民共和国は帝国主義侵略者に反対し、祖国の解放と人民の自由と幸福を実現するための栄光ある革命闘争で成し遂げた輝かしい伝統を受け継いだ革命的な国家だ」と国家のアイデンティティを明記していたが、今回の改正でこの2条が削除され、「領土事項」に置き換えられた。
新たな「領土事項」には「朝鮮民主主義人民共和国の領域は、北側で中華人民共和国とロシア連邦、南側で大韓民国と接している領土と、それに基づいて設定された領海と領空を含む。朝鮮民主主義人民共和国はいかなる領域への侵害も絶対許さない」と明記された。ただ、北朝鮮は領土、領海、領空の具体的な範囲は憲法に明記しなかった。
さらに北朝鮮は、従来の憲法第9条に明記されていた「自主、平和統一、民族大団結」の原則に基づき祖国統一を実現するために闘争するという祖国統一3大原則を削除するなど、従来の統一政策を完全に廃棄した姿勢を示した。これにより、「二国家」宣言前に実施していた過去の南北政策の革新軸の一つである「統一戦線戦術」も廃棄したような状況が各所で確認されたという。「戦時平定」「第一敵対国家教育」など、対韓国事業に関する文言が消えた。
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改正憲法で国務委員長の権限と地位が強化されたことも注目される。金正恩総書記が兼任する国務委員長を「最高領導者」から「国家元首」と定義し、国家的代表性を付与したことである。
憲法上の国家機関の配列順序も、国務委員長を最高人民会議より前に置くように変えた。最高人民会議の権限と機能のうち「国務委員長を召喚(解任)できる」という内容を削除し、国務委員長の権限への統制機能を弱めた。これまで最高人民会議常任委員長が担っていた外国大使の信任状授受権も、国務委員長の権限に移された。特に、国務委員長が核兵器使用のすべての権限を持ち、場合によって核武力指揮機構にこの権限を委任できるようにした。国務委員長の核使用権限が憲法に明記されたのは今回が初めてである。
また、憲法の前文に長く列挙されていた先代指導者の業績全体が削除された。これはここ2~3年、金日成主席の誕生日である「太陽節」や、金正日の誕生日である「光明星節」などの表現使用を控えている流れとも重なるとみられる。「金正恩主義」「人民大衆第一主義」など、金正恩総書記固有の統治理念が確立されたことに伴うものと分析される。金正恩総書記の権限や権威を高める憲法改正である。(宮塚コリア研究所 代表 宮塚利雄)
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