中国は依然国際法に違反 南シナ海仲裁判断10年で米軍

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フィリピン沿岸警備隊が提供したこの写真には、2025年10月12日(日)、南シナ海のフィリピンが実効支配するティトゥ島(地元ではパグアサ島と呼ばれる)付近で、中国海警局の船舶(右)がフィリピンのBRPダトゥ・パグブアヤに向けて放水砲を発射する様子が写っている。(フィリピン沿岸警備隊提供、AP通信経由)

フィリピン沿岸警備隊が提供したこの写真には、2025年10月12日(日)、南シナ海のフィリピンが実効支配するティトゥ島(地元ではパグアサ島と呼ばれる)付近で、中国海警局の船舶(右)がフィリピンのBRPダトゥ・パグブアヤに向けて放水砲を発射する様子が写っている。(フィリピン沿岸警備隊提供、AP通信経由)

By Bill Gertz – The Washington Times – Tuesday, July 14, 2026

 南シナ海の大部分に対する中国の領有権主張をオランダ・ハーグの仲裁裁判所が退けてから10年が経過したが、中国は依然として国際法に違反し続けている――。米インド太平洋軍の法務部門はこのような見解を示した。

 ハワイに司令部を置く同軍の法務官室は、仲裁裁判所が2016年にフィリピン勝訴の判断を示し、中国が南シナ海の約90%に主権を主張する「九段線」を国際法違反と認定した判決から10年となるのに合わせ、図解資料と説明文書を公表した。

 インド太平洋軍は、中国が1996年に批准した国連海洋法条約(UNCLOS)に基づき、この判決は最終判断であり、法的拘束力があり、中国は従う義務を負っていると指摘した。

 資料では「中国は南シナ海で威圧的、攻撃的かつ危険な行動を続け、地域の安定を損ない、近隣諸国、さらにUNCLOSが定める公海の自由を認められる全ての国の主権と主権的権利を侵害している」と批判した。

 資料は、中国が裁定に従っていない実態を整理したもので、米国と13カ国が11日に発表した共同声明に続く動きとなった。声明は、中国の南シナ海に対する主張には「法的根拠はない」ことを改めて確認した。

 このような共同声明が出されるのは異例で、中国海警局や軍、海上民兵が沿岸国による正当な活動を妨害、阻止、威嚇していることを強く批判し、地域の平和と安全を著しく損なっていると非難した。

 その上で「当事国は2016年の仲裁判断を順守し、国際法に基づく対話やその他の合法的手段によって平和的に紛争を解決すべきだ」と主張している。

 声明は、南シナ海での航行・飛行の自由を支持する強い国際的意思表示となった。賛同したのは、オーストラリア、英国、カナダ、エストニア、ドイツ、イタリア、日本、ラトビア、リトアニア、ニュージーランド、フィリピン、ルーマニア、スロベニアの13カ国である。

■中国、仲裁判決を拒否

 欧州連合(EU)も中国の主張を批判する声明を発表し、海洋法条約と南シナ海での航行の自由への支持を改めて表明した。

 EUは声明で、南シナ海での緊張の高まりや危険な事案の増加を「深く懸念している」とした上で、地域の安定を脅かす一方的な行動に反対する姿勢を示した。

 中国海警局や艦艇は10年以上にわたり、放水や体当たり、さらには一部でレーザー照射などを用いてフィリピン船舶を威嚇し、国際水域である南シナ海の支配を既成事実化しようとしてきた。

 一方、中国政府や国営メディアは仲裁判断から10年となるのに合わせて、「茶番劇」であり違法だと主張、反発を強めた。

 外務省の毛寧報道局長は10日、「仲裁判断は違法であり、無効で、拘束力はない」と述べた。

 さらに「中国はこの裁定を受け入れず、承認もしない。この裁定に基づくいかなる主張や行動も決して受け入れない」と語った。

 毛氏は、中国は東南アジア諸国連合(ASEAN)との間で南シナ海行動規範の策定を進めているとも説明した。

 国営新華社通信は共同声明について、違法で無効な裁定という「紙くず」を蒸し返す「悪意」ある試みと非難した。

 中国共産党機関紙系の環球時報も、仲裁判断は「政治的茶番」であり、フィリピンとの二国間関係を損なう原因になっていると主張した。

■「地域を不安定化」

 インド太平洋軍は資料の中で、仲裁判断はUNCLOSの296条に基づく全会一致の最終的かつ拘束力のある国際裁判所の判断だと説明した。

 また、中国は1982年にUNCLOSに署名し、1996年に批准していることから、国際法上、この裁定を順守する義務があると主張している。

 資料では「中国の条約違反は恥ずべき行為だ。九段線と、それに基づく主権・管轄権の主張は、UNCLOSの関連条項に抵触するものであり違法」と断じた。

 さらに、フィリピンはUNCLOSに基づく紛争解決手続きを合法的に利用し、平和的解決を求めたにすぎないと説明した。

 それにもかかわらず、中国は10年間裁定を履行せず、「地域を不安定化させている」と主張した。

 一方、中国側の立場について資料は、中国が裁定に拘束力はないとして退けていること、九段線の設定によって中国があいまいな「歴史的権利」に基づく主権・管轄権を主張していると強調している。

 また、中国はフィリピンによる仲裁提訴を「挑発行為」と位置付けているとも記した。

 法務官室が作成したパワーポイント資料では、この10周年資料の目的の一つとして、裁定に関する情報発信を各機関で統一、連携させることを挙げている。

 資料は、UNCLOSが南シナ海での法的権利や海洋権益を規定しており、中国の主張には「法的根拠がない」と仲裁裁判所が結論付けたことを挙げている。

 また、南沙(英語名・スプラトリー)諸島やスカボロー礁(中国名・黄岩島)の岩礁、小島について、フィリピンに12カイリ(約22キロ)の領海を設定する権利はあるが、排他的経済水域(EEZ)や大陸棚を設定する権利はないとされたことも説明している。

 国際安全保障団体「グローバル・リスク・ミティゲーション財団」のデービッド・デー理事長は、中国は判決後に戦術を変更し、台湾まで含めた「十段線」を新たに押し出そうとしていると指摘した。

 デー氏は、フィリピンと日本が十段線を無視し、UNCLOSに基づいて海上境界画定交渉を進めていることに中国は焦りを募らせていると分析した。

 さらに「フィリピンと日本の新たな防衛協力や境界画定交渉に動揺した中国は、ルソン島北方のバタネス諸島に対する主権まで主張し始めた」と指摘。「台湾周辺を中国の『内水』とみなす十段線を正当化するための法的根拠を後付けしようとする試みだ」と主張した。

■数々の違反

 資料では、中国はUNCLOSで認められたフィリピンの権利を侵害し、スカボロー礁周辺でフィリピン漁民による操業を違法に妨害したとも指摘している。

 また、仲裁裁判所は中国による大規模な埋め立てと人工島建設についても「違法」と判断した。

 中国は、領有権が争われている南シナ海の複数の島に軍事施設を建設し、対艦・対空ミサイルや電子戦装備を配備している。

 これは習近平国家主席が2015年に当時のオバマ米大統領に「南シナ海の島々を軍事化しない」と約束した内容にも反するとしている。

 さらに、中国は埋め立てによってサンゴ礁に「深刻かつ回復不能な被害」を与え、海洋環境保護義務にも違反したと説明した。

 資料は「中国は、自国の利益になる場合にのみ国際法を適用するという姿勢を示している」と批判し、「地域の覇権国を目指す中国の強硬な行動は南シナ海を不安定化させ、インド太平洋全域の安全保障と経済に悪影響を及ぼす」と警告した。

 インド太平洋軍は、米国は中国を抑止するためフィリピンとの同盟を一層強化していると強調した。

 また「米国は、中国の過度で違法な海洋権益主張に対抗する国際的な外交連携を主導しており、同盟国・友好国にも、中国の南シナ海での不安定化行動を引き続き非難し、10年となる仲裁判断への支持を表明するよう求めている」とした。

 台湾の国立政治大学で政治戦を研究するケリー・ガーシャネック客員教授は、オバマ政権は仲裁手続き中も、2016年の裁定後もフィリピンへの支援が不十分だったと指摘した。 ガーシャネック氏は「そのことは米比関係を著しく損ない、2012年に中国がスカボロー礁を実効支配した際に条約同盟国であるフィリピンを十分支援しなかったことも同様だった。だからこそ、この10周年に当たり、米国が仲裁判断への強い支持を示すことが極めて重要だ」と強調した。

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