中国、依然フェンタニル原料を輸出 米政権、規制の実効性を疑問視

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ドナルド・トランプ大統領(右)と中国の習近平国家主席は、2026年9月24日(木)、ワシントンD.C.のホワイトハウスのブルールームバルコニーから、新設されたヘリポートで行われた無言の小隊閲兵式を観覧した。(AP通信/アレックス・ブランドン撮影)

ドナルド・トランプ大統領(右)と中国の習近平国家主席は、2026年9月24日(木)、ワシントンD.C.のホワイトハウスのブルールームバルコニーから、新設されたヘリポートで行われた無言の小隊閲兵式を観覧した。(AP通信/アレックス・ブランドン撮影)

By Bill Gertz – The Washington Times – Wednesday, October 21, 2026

 米トランプ政権当局者によると、中国は昨年、合成麻薬フェンタニルの原料となる前駆体化学物質の輸出停止に合意したにもかかわらず、輸出を続けている。トランプ大統領は先日の米中首脳会談で習近平国家主席に対し、対策を強化するよう迫ったが、状況は改善していない。

 米国務省によると、中国による前駆体化学物質の供給は、規制や中国政府当局の監視をかいくぐる犯罪ネットワークが行っているとみられている。

 トランプ氏は9月24、25日にワシントンで習氏と会談した際、中国とフェンタニルの問題を取り上げた。ただ、協議の具体的な内容はほとんど明らかになっていない。

 中国は2025年10月、韓国で開かれたトランプ氏と習氏の会談で、フェンタニルの前駆体化学物質の出荷を全面的に停止すると約束した。これを受け、米国は中国製品に課していたフェンタニル関連の関税を20%から10%に引き下げた。

■米国、規制の実効性に疑問

 米国務省の報道官は「中国は依然として、フェンタニルや合成麻薬の危機を引き起こす前駆体化学物質の違法な製造・取引の中心地だ。この危機は米国をはじめ世界各地で数十万人の薬物過量摂取による死亡を招いている」とワシントン・タイムズに語った。報道官は匿名を条件に取材に応じた。

 報道官は、中国からメキシコの麻薬カルテルに供給されるフェンタニル製造用の化学物質の量は変わっていないと述べ、中国政府の取り締まりが不十分なため、中国の犯罪組織は輸出を続けることが可能になっていると批判した。

 「中国は北米への直接出荷を防ぐため、一部の合成麻薬前駆体に輸出規制を導入したが、犯罪組織は規制を回避する手段を見つけて、輸出を続けている」と報道官は述べた。

 ホワイトハウス当局者も、中国がフェンタニル製造に関与し続けていることは問題だと認め、9月の米中首脳会談の数日前に別の高官が記者団に語った内容を参照するよう求めた。

 この高官は、中国は麻薬カルテル向けの化学物質の輸出を十分に規制していないと指摘。「中国が圧倒的な供給元となっているメキシコのカルテル向け前駆体化学物質の問題について、中国が優先度を引き上げたようには見えない」と述べた。中国側の対応は「数件の逮捕」にとどまると批判し、より抜本的な制度改革を求めた。

 ホワイトハウスの国家薬物統制政策局長を務めるサラ・カーター氏は、オルフィン類など新たな危険薬物を規制対象に加えたことや、前駆体化学物質2種類の輸出規制を追加したことについて、正しい方向への一歩だと評価した。ただ、さらなる進展が必要だと強調した。

 カーター氏は「トランプ大統領の下で、過量摂取による死亡や中毒は、バイデン政権下の最悪だった時期に比べて40%以上減少した」と述べた。その上で、「成果の一つは、メキシコのカルテルに流れる前駆体化学物質を止め、フェンタニルによって米国民が命を落とす事態を防ぐため、中国に継続的な協力を求めていることだ」と語った。

 ホワイトハウスは米中首脳会談後、中国が危険薬物の一種であるオルフィン類を新たに規制対象とし、フェンタニルの前駆体化学物質2種類についても輸出規制を導入したことを歓迎した。

 首脳会談の声明によると、これらの措置は北米の麻薬組織に向かう前駆体化学物質の違法な出荷を阻止することを目的としている。

 一方、中国政府が9月25日に発表した首脳会談の発表文には、米中の麻薬対策協力への言及がなかった。翌日の米中共同声明では、両国の麻薬対策協力に「目に見える成果」があったとし、前駆体化学物質の押収に至った複数の事案や、両国で数十人の犯罪者を逮捕したことを挙げた。

 主にメキシコから米国に流入するフェンタニルの密輸を阻止し、数十万人の米国人が薬物の過量摂取で死亡する事態を終わらせることは、トランプ氏が2025年1月に大統領に復帰して以来、ホワイトハウスの重要課題となっている。

■相次ぐ約束、続く輸出

 中国は過去にも取り締まりを約束してきたが、フェンタニルの前駆体化学物質の輸出は続いている。

 トランプ氏は2025年初め、前駆体化学物質の輸出を抑えるため、中国に圧力をかける狙いで中国製品への関税を引き上げた。中国が違法な化学物質の輸出停止を約束した同年10月の韓国での首脳会談後、輸出量は半減した。

 ホワイトハウスが2025年11月1日に発表した声明によると、中国は「前駆体化学物質の流れを止める」ことに合意した。具体的には、指定された一部の化学物質を北米に出荷しないと約束した。

 連邦捜査局(FBI)のカシュ・パテル長官は同月下旬に北京を訪れ、中国当局者と会談した。FBI報道官によると、両者は2025年10月の合意を「計画し、実行する」ために協議した。

 中国は18種類の前駆体化学物質と7種類の化学物質に規制を導入すると発表したが、輸出は続いている。

 米議会調査局が最近公表した報告書によると、米国の関税措置を受け、中国はフェンタニル原料の輸出抑制に向けた取り組みを後退させた。

 報告書によると、中国政府は、問題の根本原因は前駆体化学物質の供給ではなく、米国側の需要にあると主張している。また、中国側はフェンタニル問題を理由とする米国の懲罰的な関税について、麻薬対策の協力に「大きな打撃」を与えたと述べている。

 10月7日付の報告書は、「中国からのフェンタニル前駆体化学物質の違法取引は、依然として米中関係の懸案だ」と指摘した。

 2023年以降、習氏を含む中国共産党幹部は、前駆体化学物質の輸出に関して限定的な対策を発表してきた。その一つが、フェンタニルの前駆体化学物質をすべて、違法な麻薬製造に悪用される恐れのある物質に指定する措置だ。これにより、輸出規制の対象とする狙いがある。

 韓国での米中首脳会談後、中国はフェンタニル製造に使われる指定化学物質13種類の輸出停止に合意した。その後、5月に3種類、9月に2種類が追加された。中国はフェンタニル関連犯罪への対処の指針や規則も発表し、詳細を明らかにしていないものの、関連する共同捜査も実施した。

■犯罪組織の独走か、国家戦略か

 国家安全保障会議でテロ対策を担当するセバスチャン・ゴルカ大統領副補佐官兼上級部長は、5月のポッドキャスト番組で、トランプ大統領が2025年12月にフェンタニルを大量破壊兵器に指定したと述べた。

 ゴルカ氏は、中国がその兵器の原料を供給することで、フェンタニルを米国に対する一種の戦争手段として利用していると主張。「これは米国人を狙った殺人だ」と、5月13日にジャーナリストのミランダ・ディバイン氏が配信する番組「ポッド・フォース・ワン」で語った。

 ゴルカ氏は、中国がフェンタニルによる死亡を支えているのは、中国の「超限戦」の一環だと主張した。超限戦は、中国人民解放軍の大佐2人が1999年に出版した著書で提唱された概念だ。同書は、あらゆる形態の戦争や暴力を利用し、軍事力で劣る中国が米軍を打ち破ることを目指すとしている。

 ゴルカ氏はまた、米国でフェンタニル危機をひそかに支援する中国の動きは、19世紀のアヘン戦争に対する報復とも考えられると述べた。当時、英国は軍事力を背景に商業的利益を追求し、中国の巨大なアヘン市場を利用した。

 「そうした見方を示す人たちがいる。私も一理あると思う」とゴルカ氏は述べた。中国は米国を新たな大英帝国と見なし、「今こそアヘン戦争への報復の時だ」と考えているという。

 習氏がフェンタニルを使って米国に打撃を与える戦略を主導しているのか、それとも前駆体化学物質の輸出は中国政府が国内の犯罪組織を統制できていないことを示すのかと問われ、ゴルカ氏は、中国は権威主義的な一党制国家だと指摘した。

 「中国で民間人がこれほど大規模な活動を行い、中国共産党の許可を得ていないという考えは、まったくの幻想だ」と同氏は語った。

 カナダ王立騎馬警察の犯罪収益対策プログラムで国家責任者を務めたギャリー・クレメント氏も、中国によるフェンタニル供給の背後には、より大きな戦略があるとの見方を示した。

 ただし、クレメント氏は「中国政府が北米の人々を毒殺する作戦を意図的に命じたと立証する証拠はない」と述べた。一方で、「中国を拠点とする化学メーカーが、違法なフェンタニルの製造に使われる前駆体化学物質の重要な供給源となっていることを示す証拠は相当数ある」と指摘した。

 ブルッキングス研究所の上級研究員バンダ・フェルバブブラウン氏は、9月の首脳会談では、中国からのフェンタニル前駆体化学物質の輸出問題がほとんど議論されなかった点が注目されると述べた。

 同氏は首脳会談後に発表した分析で、「ワシントンをなだめるため、トランプ・習会談の前に、中国はオルフィン類など新たな物質をいくつか規制対象に加える」と指摘した。 中国の業者は、麻薬カルテルがフェンタニル製造に必要な化学物質へ容易に変換できる、規制対象外の物質を販売することで輸出規制を回避しているという。フェルバブブラウン氏は、規制対象を増やすだけでは効果が限られると指摘した。

 同氏は「中国に最も求められるのは、規制対象外の化学物質を犯罪組織に故意に販売する業者を訴追できる、信頼性の高い法執行制度を整えることだ。米国の『物質的支援』に関する法律に相当する仕組みが必要だ」と述べた。

 中国政府は、数百万台の監視カメラ、インターネットの広範な監視、商業部門へのほぼ全面的な統制を組み合わせた、大規模な全国監視・人口管理システムを運用している。

 このため、一部の専門家は、危険な化学物質の輸出が続いていることから、中国が輸出停止を約束した際の本気度に疑問を呈している。

 米国務省の国際麻薬・法執行局は3月、中国は世界最大のフェンタニル前駆体化学物質の生産国であり、麻薬密売組織への前駆体化学物質や錠剤製造機の販売を阻止する米国の決議案に、国連で反対票を投じた唯一の国だったと指摘した。

 ウィーンの米国国連代表部はSNSで、「何もしないことがすべてを物語っている。中国は、自国企業が世界中に危険な薬物を大量に供給するのを阻止する意思を、依然として示していない」と批判した。

 米シンクタンク、ヘリテージ財団の中国問題専門家スティーブ・イェーツ氏は、フェンタニル問題を優先課題に掲げたトランプ政権を高く評価すべきだと述べた。関税措置や前駆体化学物質の大量破壊兵器指定、国境管理の強化によって、フェンタニルの過量摂取による死亡は半減したという。

 しかし、イェーツ氏は「中国で製造され、カルテルによって輸出される薬物原料の供給が、それに近い割合で減ったことを示す証拠はほとんどない。減少したという証拠自体がない可能性もある」と指摘した。

 中国の違法な前駆体化学物質取引が政府の把握していないところで行われているという見方には、無理があると同氏は述べた。

■中国政府の主張

 中国政府が2025年3月に発表した白書は、当局がフェンタニル関連犯罪を「厳しく取り締まり」、前駆体化学物質の移転を厳格に管理していると主張した。

 白書は、フェンタニルの輸出規制に向けた政府の取り組みを評価する一方、薬物危機の根本的な解決は「物質を規制したり、供給を減らしたりするだけ」では難しいとも述べた。

 中国外務省は白書の発表に際し、米国がフェンタニル問題を理由に中国製品への関税を引き上げる一方、虚偽の情報を広め、中国を「中傷し、責任を押し付けている」と非難した。

 同省は「フェンタニル問題を口実に中国に圧力をかけ、脅迫し、恐喝する米国の行為に断固反対する」と述べた。

■化学物質はどう流出するのか

 米政府の複数の機関が、中国によるフェンタニル製造支援について報告を続けている。

 米情報機関が公表した最新の年次脅威評価は、フェンタニルの前駆体化学物質や錠剤製造設備の主な供給元として、中国とインドを挙げた。

 3月に公表された脅威評価は、中国が違法な前駆体化学物質の輸出停止を約束したにもかかわらず、「メキシコを拠点とする麻薬密売業者は、虚偽の品名表示をした貨物や規制対象外の化学物質の購入を通じ、国際的な規制を回避し続けている」と指摘した。

 脅威評価によると、フェンタニルなどの合成オピオイドは、依然として米国に流入する薬物の中で最も致死性が高く、2024年9月から2025年9月までに3万8000人以上が過量摂取で死亡した。

 一方、死亡者数は前年までの水準から38%減少した。国境管理の強化や薬物の押収増加が背景にあるという。

 米国務省が発表した最新の国際麻薬統制に関する年次報告書によると、中国の化学産業には16万社の化学企業がある。輸出規制が導入されているにもかかわらず、監督が不十分なため、違法薬物の製造業者が中国から直接調達し、メキシコや東南アジアで薬物を製造できる状態が続いている。

 脅威評価は、中国から違法薬物の製造に使われる前駆体化学物質が供給されていることを「米国にとって重大な懸念」だと指摘した。

 密売業者は主に、貨物の内容を隠すため、出荷書類の品名を意図的に偽って中国からこれらの化学物質を輸送しているという。

 また、中国の輸送業者は、メキシコのカルテルにフェンタニルの原料を供給する別の手段として、規制対象外の化学物質をメキシコに送っている。これらはフェンタニルの製造工程で必要な物質より1段階前の段階に当たる「間接前駆体」だと、報告書は説明した。

 米麻薬取締局(DEA)が発表した最新の薬物脅威に関する年次評価によると、メキシコの麻薬製造業者は、中国企業から前駆体化学物質を安定的に調達している。

 DEAのロバート・マーフィー長官代行は「カルテルは中国企業から調達した前駆体化学物質や錠剤製造機を使い、メキシコの秘密工場でフェンタニルやメタンフェタミンを製造している」と述べた。

 報告書によると、シナロア・カルテルは前駆体化学物質を調達する大規模なネットワークを運用している。ミチョアカン・ファミリーと呼ばれる麻薬カルテルも、中国製の化学物質を輸入しているという。

 報告書は、メキシコのカルテルと中国を拠点とする供給業者が、高度な輸送手段や複数段階の取引を利用し、摘発や各国の化学物質規制を回避していると指摘した。

 フェンタニルの前駆体化学物質の供給網には、国際輸出ブローカー、荷受人、積み替え業者、貨物輸送業者、資金提供者なども関与している。

 偽造書類で貨物の内容を隠し、第三国を中継地として利用する手口もある。正規の企業が中国から購入した後、カルテルに横流しするケースもあるという。

 中国からの化学物質輸出に対する規制が強まれば、カルテルはインドや欧州などの化学メーカーにも供給網を広げる可能性があると、報告書は指摘した。

 中国は2022年、当時のナンシー・ペロシ米下院議長(民主党、カリフォルニア州)の台湾訪問を受け、米国との麻薬対策協力を停止した。

■協力再開の機会は限定的

 中国で勤務した経験がある元DEA捜査官のダニエル・ボールドウィン氏は、その後、実務レベルでの麻薬対策協力は困難になったと述べた。2024年に協力は再開したが、進展は限定的だったという。

 現在、パックス・セイピエンス財団の「薬物撲滅共同イニシアチブ」で責任者を務めるボールドウィン氏は、中国の規制強化によってフェンタニルの効力が低下し、それが米国の過量摂取による死亡者数の減少につながった可能性があると指摘した。

 同氏はオンラインメディア「インクスティック」に掲載された報告書で、「最近の過剰摂取による死亡者数の減少、供給面で実際に大きな変化が起きたことを示す証拠、米中の法執行協力の正式な再開は、進展に向けた機会が限られているものの、意味のあるものであることを示している」と述べた。

 ボールドウィン氏は、協力をより効果的に進めるため、両国当局が監視対象者のリストを共有し、完成した薬物に共通する法科学的な特徴を特定するとともに、フロント企業への対策を連携させるべきだと提言した。

 カーター氏は、米国が過去1年間に新たな薬物脅威に関する情報を中国と共有し、その結果、追加の薬物規制や輸出規制につながったと述べた。

 同氏は「トランプ大統領は、米国を第一に考え、子供たちの命を最優先する姿勢を明確にしてきた」と語った。

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