
軌道上のロシアの宇宙船。写真提供:Dima Zel(Shutterstock経由)。
By Ben Wolfgang – The Washington Times – Monday, October 19, 2026
宇宙・安全保障の専門家らによると、ロシアの衛星「コスモス2612」は、米国の重要なレーダー衛星を攻撃する意図があった可能性が高い。実行されていれば、軌道上で初めて戦闘が行われる事態となったが、ロシア政府は直前になって作戦を中止したとみられている。
コスモス2612は、ウクライナ軍に高解像度の情報を提供しているとみられるフィンランドのICEYE社の商業衛星「X36」に推定約26メートルまで接近、この極めて危険な事態を巡っては19日になっても疑問が相次いでいた。
専門家らは、ロシアによる意図的な接近だったとみている。ロシアの衛星が数カ月にわたる慎重な計画に基づき、精密に調整された動きを取ったとみられるためだ。この作戦を巡っては、ロシアが歴史に残る宇宙空間での物理的攻撃を計画していた、あるいは将来の攻撃に向けた予行演習を行ったとの見方が出ている。
軌道上で兵器を使用すれば、ロシアにとって極めて重大な一歩となり、実際に宇宙空間で戦闘が起きた場合、米国と同盟国がどう対応するのかという問題が直ちに浮上することになる。
ワシントンのロシア大使館と、ロシアの国営宇宙機関ロスコスモスは、ワシントン・タイムズからの度重なるコメント要請に応じなかった。
専門家の中には、今回の事態はロシアのウクライナ侵攻を巡る地政学的な駆け引きと直接関係しているとみる向きもある。特に、トランプ大統領が最近取った複数の措置について、一部からはロシアに有利な対応という批判が出ている。
トランプ氏は最近、ロシア経済の収入源の1つである軽油の輸出規制を緩和することで合意したと発表した。また、今週発動する予定だった対ロシア追加経済制裁の実施を見送った。
米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)の航空宇宙安全保障プロジェクト副ディレクター、クレイトン・スウォープ氏はワシントン・タイムズに、「私にはこう見える。ロシアは、米国で登録された衛星に対して敵対的な行動に出ようとしていた。場合によっては、一線を越えたかもしれない。その後、米国は新たな制裁措置の一部を取り下げた」と語った。
「ロシアは、今はそこまでの代償を払う価値はないと判断し、計画していた作戦を中断したのかもしれない。あるいは、試験飛行を終えて目的を達成したのかもしれない。いずれにせよ、ロシアは一つの点を証明した。米国は軌道上で宇宙空間を制御する兵器を保有していると明らかにしたが、ロシアも依然として軌道上の衛星を脅かすことができるのだ」
米宇宙軍は、今回の事態についてコメントを控えた。
フィンランドに本社を置くICEYEは短い声明を発表し、仮に衛星X36がロシアによって機能を損なわれていたとしても、ウクライナ軍はレーダー画像や戦場情報へのアクセスを維持できるとの見方を示した。
同社の広報担当者はワシントン・タイムズに「状況を把握しており、注意深く追跡している。当社の衛星群は、サービスの継続性と耐障害性を確保するよう設計されている」と語った。
専門家らは、4月にロシアのプレセツク宇宙基地から打ち上げられたコスモス2612の任務について、動きを一つ一つ詳しく分析してきた。この衛星は、コスモス2609から2614までの番号が付けられたほかの5基とともに打ち上げられた。これらの衛星の一部は商業衛星に異例の近さまで接近したが、ICEYEなどの衛星と軌道面を一致させ、その状態を維持するための直接的な機動を行ったものはなかった。
専門家らによると、状況が変わったのは9月30日だった。
レーダー分析の専門家で元米空軍少佐のセオドア・クルチェク氏は、オープンソースの3次元衛星追跡プラットフォーム「KeepTrack.space」に、コスモス2612の動きを詳細に分析した記事を掲載した。同氏によると、ロシア衛星は正確なタイミングで、明確な軌道変更を行った。
「同じ日に2回の噴射を行い、軌道高度を47キロ引き上げた。より高い軌道で、コスモス2612はX36よりもゆっくり移動し、1日に数千キロずつ後方にずれていた。このようなフェージング軌道は、指定の時間に宇宙機が目指した場所へ到達するために取られる」
クルチェク氏は「ロシアがこうしたことを行うのは初めてではない。しかし、これほど近距離で、しかも低軌道上の商業衛星を相手に行ったことはない」と指摘。「コスモス2612が撮影、通信傍受、予行演習、あるいは何らかのメッセージ発信のどれを行っていたにせよ、軌道データからは周到に用意されていたことが分かる」と強調した。
コスモス2612の目的が何だったのかを巡って疑問が生じる一方で、ウクライナがロシアとの戦いで利用している宇宙資産についても不透明感が漂っている。米スペースXの通信端末「スターシールド」の戦場での使用に今月、速度制限が課されたためだ。
共和、民主両党の議員からは、トランプ政権がこうした制限を設けたのは、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が米露の軽油取引を公然と批判したことへの対応だったのではないかとの見方が出ている。トランプ氏が対ロシア追加経済制裁の実施を停止すると発表したのは、軽油取引の合意成立からわずか数日後だった。
トランプ政権は、米国がロシアを何らかの形で支援しているとの見方を強く否定している。クリス・ライト・エネルギー長官は、政権がロシアへの経済的圧力を和らげようとしているとの見方に反論した。
ライト氏は18日、ABCの番組「ディス・ウィーク」で、「大統領が取った措置は軽油に関するものだ。今、世界で不足しているのは軽油であり、ロシアは現在、軽油を全く輸出していない。これはロシアに対するインセンティブだ。ウクライナとの紛争を縮小できれば、エネルギー面での停戦を実現するか、紛争を緩和して軽油を輸出できるようになれば、世界市場への供給を認めるということだ」と語った。
衛星追跡サイト「オービタル・レーダー」が公開したデータによると、コスモス2612はX36に約26メートルまで接近した。衛星同士がこれほど近づくことは極めてまれで、非常に危険だ。追跡データでは、コスモス2612は1日で、200マイル(約322キロ)以上離れた位置から約3マイル(約4.8キロ)まで接近したことが示されている。
米国は現在、必要と判断すれば独自の攻撃で対抗できる宇宙資産を配備している。
トロイ・メインク空軍長官は先月、米国が独自の軌道上兵器を保有していることを初めて明らかにした。この兵器は、敵対勢力が衛星などの宇宙資産を攻撃するのを抑止・阻止するために設計されていると説明した。
「米国は現在、敵対勢力による敵対的行動から統合軍を防衛できる、軌道上で宇宙空間を支配する兵器を保有している」。メインク氏は9月14日、メリーランド州ナショナルハーバーのゲイロード・ナショナル・リゾート・アンド・コンベンションセンターで開かれた「航空・宇宙・サイバー会議」での演説でこう述べた。

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