(CNN) 小さな素描の持ち主が競売会社のオンライン鑑定サイトに写真を送ったとき、その重要性は知る由もなかった。素描は手ほどの大きさで、描かれているのは片足だけ。かかとはわずかに浮き、その下には影の輪郭が描かれていた。
しかし、競売大手クリスティーズがミケランジェロ作と認定した結果、この素描は米ニューヨークで5日に開催されたクリスティーズの競売で、手数料込みの2720万ドル(約42億7000万円)で落札されることになった。
ルネサンスの巨匠ミケランジェロはバチカンのシスティーナ礼拝堂の天井にフレスコ画を描く準備として、赤のチョークでこの足をスケッチした。フレスコ画の制作時期は1508~12年。
礼拝堂の天井を彩る「リビアの巫女(みこ)」を近くから見ると、背後に書物を置こうと体をひねる巨大な女性の足元で、素描と対応する足が全く同じ形にねじれているのが分かる。やはりつま先をわずかに縮め、かかとを浮かせ、その下に影が落ちている。

バチカンにあるシスティーナ礼拝堂の天井に描かれた「リビアの巫女」。ミケランジェロが1508年~12年の期間に描いたものだ/Heritage Images/Hulton Archive/Getty Images
リビアの巫女は天井の端を飾る12の人物のうちの1人。これらの人物に挟まれた中央のフレスコ画には、聖書の最初の書「創世記」から選ばれた九つの場面が描かれている。
作品を特定したクリスティーズのオールドマスター素描部門の専門家、ジャーダ・ダーメン氏は声明で「この素描の前に立つと、ミケランジェロの創造力の全貌(ぜんぼう)がひしひしと伝わってくる。足の形を描く際、赤のチョークを力強く紙に押し当てていた身体的なエネルギーさえ感じられる」と指摘した。
素描はミケランジェロの仕事ぶりを知る貴重な手がかりとなる。クリスティーズによると、ミケランジェロの素描は時間の流れの中で大半が失われており、本人が焼却したものもあれば、初期の収集家によって廃棄されたり、単純に制作の過程で処分されたりした場合もあるという。
リビアの巫女に関する素描のうち、現存するのは英オックスフォードのアシュモレアン博物館と、米ニューヨークのメトロポリタン美術館に所蔵されている2点のみ。システィーナ礼拝堂に関係する素描は全体でも50点しか残っておらず、これまで競売に出た例は他にないという。

昨年5月に選出された教皇レオ14世。システィーナ礼拝堂で枢機卿たちに囲まれている/Francesco Sforza/Vatican Media/Reuters
このため、今回の素描が発見されて競売にかけられると激しい競り合いとなり、最終落札額は当初の予想の20倍近くに。競売で売却されたミケランジェロ作品としては最高額になった。
この素描は従来、研究者にも知られていなかったが、来歴を示す手がかりはいくつかあった。素描の左隅には、メトロポリタン美術館の所蔵作品と同じ筆跡でミケランジェロの名が記されており、ダーメン氏による調査を経て、有力な専門家が全員一致でミケランジェロ本人が描いた足と認めたという。
この作品は18世紀、デンマーク王に仕えていたスイスの外交官、アルマン・フランソワ・ルイ・ドメストラル・ドサンサフォランが欧州旅行中に入手。以来、200年以上にわたって同じ家が所有していた。おいに受け継がれ、その子孫が代々保管してきたが、今回競売に出すことを決めた。クリスティーズは落札者を公表していない。

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