「あなたはどうして海外へ?」
世界100の国・地域で生きる100人の日本人にインタビューした『世界へ飛び出た100人の日本人』(おかけいじゅん著/集英社インターナショナル)。
さまざまな思いをもって海外で生きる6人の女性のインタビューを、同著から一部抜粋、再構成してお届けします。
vol.2 デザイナー 吉田彩虹さん(1992年生まれ、2019年にマダガスカルに居住)
夫の駐在に帯同してアフリカへ
━━いつから海外に興味があったのでしょうか?
振り返ると、高校時代に地理の資料集を見たとき以来ですね。「世界はこんなに広いんだ!」と心を奪われました。
以来、世界をこの目で見たいという気持ちがずっと続いていると思います。大学で海外ボランティアサークルの一員として活動し、ボランティアと旅行の関係などを勉強して、旅行会社に就職しました。団体旅行の添乗員として、北海道、沖縄、台湾などを飛び回りましたね。
━━そこから、どうしてマダガスカルに?
大学のサークルで知り合った彼氏のマダガスカル駐在が決まり、「期間は5年くらいで、日本で待っててくれるかな」と言われ、「いや。待てないよ」と(笑)。それで結婚して、一緒に行くことにしたんです。2019年でした。
━━いきなりの海外移住、不安はありませんでしたか?
当時は不思議と「新しい土地で暮らすワクワク」のほうが大きかったですね。夫からも「素朴な国だよ。アジア系の人も多くて馴染みやすいよ」と聞いていて、遠く離れたアフリカという印象よりも、どこか親しみがありました。
マダガスカルのカゴカルチャーを日本に
━━現在、ラフィア(ヤシ繊維)を使ったマダガスカルのカゴバッグブランド「AMPIANA」を運営されていますが、ブランドをはじめたきっかけを教えてください。
マダガスカルはフランスの植民地だったため、日常生活でフランス語が必須だったのですが、私は全然しゃべれず。そこで、「市場でフランス語を使って買い物する」という目標を立てて勉強をはじめたんです。
ある程度フランス語が上達したとき、最初に買おうと思ったのが、現地の人々が買い物をするときに使うカゴのバッグでした。学びたての拙いフランス語でバッグを買えたとき、それがすごくうれしくて。そのバッグを使い込むうちに、「もっとこうだとかわいいな」「ここにポケットがあったら便利だな」と思うことが増えてきて、「自分でデザインしたカゴがつくりたい」と思ったんです。
━━現地でカゴバッグはどんな存在なのでしょうか?
老若男女みんなが買い物で使っています。野菜もお肉も魚もガンガン入れて、家でさっと洗い、日陰で乾かしてまた使う。エコかつシンプルな、生活の基盤にあるアイテムですね。
━━カゴバッグをつくるにあたり、なにからはじめたんですか?
職人さん探しですね。私の住むトゥアマシナは、カゴの主要産地とは離れていて、職人が少ないんですが、友人からの紹介を重ねて、ものづくりに非常にこだわりの強いジャダさんというすてきな職人さんと出会えました。そこから徐々に働いてくれる職人さんを増やしています。

写真提供/吉田彩虹さん
━━ブランドのこだわりを一つ挙げるなら?
いちばんのこだわりは、「マダガスカルで手に入る素材だけで、マダガスカルでつくる」こと。
マダガスカルで使われるように、日本でも使われてほしいんです。マダガスカルのゆったりした社会と、日本の効率的な社会はそれぞれ違うよさがありますが、このバッグを通して、マダガスカルのゆるっとした空気が少しでも日本に流れてくれるといいなと思っています。
━━マダガスカルでものづくりをするなかで印象的なことは?
自然のサイクルですね。プラスチックもまだこちらでは一般的な素材ではなく、私たちのつくるバッグも含めて、あらゆるものが土に還るようにできています。
━━プラスチックのほかに、日本では当たり前だけどマダガスカルでは当たり前ではないものはありますか?
たとえば、段ボールです。ブランド始動直後、輸出用の段ボールを探したら、なんと一つ1200円。当時はまだ自国で段ボールをつくっておらず、すべて輸入品で高価だったんです。
━━それは驚きですね。代わりになにで梱包するのでしょう?
これまたタビビトノキという木でつくったカゴです。現地の人が「こっちの方が安い」と言うので驚きました(笑)。
託児所完備、昼食無料提供、手話の勉強会

写真提供/吉田彩虹さん
━━AMPIANAは託児所を設けたり、昼食の提供もしているそうですね。こうした取り組みの経緯は?
職人さんたちの困り事を解決しようと考えた結果ですね。もっと働きたいけど子どものために早く帰らなければならないお母さんのために託児所をつくったり、子どもや夫を優先してごはんを食べられていないお母さんに昼食を提供したり。
あと、手話の勉強会も開いています。うちには聴力にハンディキャップがある人もいるので、どういう環境なら働きやすいかを考えて、みんなで手話を勉強してみることにしました。ものづくりをする上で耳が不自由なことはさほど大きな問題ではありませんが、よいカゴをみんなでつくるためにはどうすればいいのかを考えた結果、自然とこうした活動につながっていきましたね。
━━どれもすてきな取り組みですね。今後の展望は?
マダガスカルでより多くの職人さんを雇うことができるよう、海外販売を広げていきたいなと思っています。
直近では、イタリアの展示会に挑戦する予定です。新しい国への進出となると、現地の嗜好を学び、それに合ったものをつくっていかなければならなくなるので、私たちにとっても新しい挑戦になっていくだろうなと思っています。いずれは世界一の「ラフィアファクトリー」になれるようにがんばっていきたいですね。
(文/おか けいじゅん 写真提供/吉田彩虹さん)
『世界へ飛び出た100人の日本人』(集英社インターナショナル)
世界で生きる日本人100名にインタビュー。北欧の建築家、インドの映画監督、小泉八雲の子孫、メキシコでバズった無職、パリのタトゥーアーティスト、ガーナのからあげ屋さん、ゴミを拾うウルトラマン、日本文学を広める編集者、カリブのDJ、内戦下の日本語教師、東南アジアで売れたお笑い芸人、東欧の空手家、牛糞アートの伝道者……百人百様の海外生活のリアルを収録。

写真提供/吉田彩虹さん

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