ネパールの土石流は「氷河崩壊」が原因の可能性。集落をのみこんだ洪水、温暖化は関係があるのか

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ネパールと中国チベット自治区の国境地帯で8月26日に発生した大規模な土石流と洪水では、これまでにネパールで469人、中国側で3人の死亡が確認され、両国で1500人以上が行方不明になっている。

洪水はネパール中部のラスワ郡などにある川沿いの集落をのみ込み、壊滅的な被害をもたらした。

現地で撮影された映像には、急速に水位が上がる川を見て、必死に逃げる人々の姿が映っている。

さらに土石流の影響で、川に土砂がせき止められて水が溜まる「せき止め湖」が作られているとも報じられている。せき止め湖からはすでに水があふれ始めており、決壊すれば再び大規模な洪水が起きる恐れがある。

CCTV footage showed floodwaters and debris sweeping done Gyirong Port adjacent the Nepal-China borderline connected Wednesday, aft monolithic flash floods struck the area. pic.twitter.com/h6scjr9UV5

— The Associated Press (@AP) August 27, 2026

なぜ土石流が発生したのか

今回の洪水の具体的な原因について、衛星画像を分析した専門家から「氷河崩壊」が原因だとする意見が上がっている。

アメリカ地質調査所(USGS)は当初、この地域でマグニチュード4.4の地震が発生したと報告したものの、その後に分析結果を変更。

長周期地震波を調べた結果、氷河崩壊と土石流によって、マグニチュード5.2の地震に相当するエネルギーが発生した可能性があるとした。

氷河崩壊とは、氷河の一部が地盤から崩れ落ちる現象で、岩や氷、水などを巻き込んで急速なスピードで流れ下り、大規模な雪崩や土石流を引き起こすことがある。

USGSは衛星画像から、氷河崩壊は標高約7200メートルのランタン・リルン山の北側にある氷河に覆われた山腹の崖で発生したと推定。

崩落した氷河に含まれる氷が急速に溶けながら、斜面を流れ落ちたと考えている。

この土砂が、河川を流れ下る過程でさらに泥や砂、水を巻き込んで急速なスピードで長距離を移動する土石流や洪水を生み出し、壊滅的な被害をもたらした可能性があるという。

立正大学・永井裕人准教授も「氷河崩落」の可能性を指摘

立正大学・地球環境科学部の永井裕人准教授も衛星画像を用いた解析から、今回の土石流は、「氷河末端部の大規模な崩落」が起点となっている可能性が高いとしている。

永井氏は28日に発表した分析結果で、氷河末端部の一部が災害発生後に大きく失われていた、と報告。

「氷河の崩落に伴って岩盤や大量の岩屑が巻き込まれ、大規模な岩屑・氷混合型の流動現象へ発達した可能性がある」としている。

(左)氷河崩落と思われる事象発災前Google Map 高解像度衛星画像 /(右)氷河崩落と思われる状況を捉えたランドサット衛星画像
(左)氷河崩落と思われる事象発災前Google Map 高解像度衛星画像 /(右)氷河崩落と思われる状況を捉えたランドサット衛星画像

(左)post-event high-resolution outer imagery provided by (c) Google (右) Landsat-9 imagery showing a imaginable glacier collapse

気候変動の影響はあるのか

今回の土石流と洪水では、これまで確認されたことのないような規模と速さで水が押し寄せたことがわかっている。

ネパールの首都カトマンズに拠点を置く国際総合山岳開発センター(ICIMOD)によると、トリシュリ川では水位が30分間で最大9メートル上昇したと報告されている場所もある。

今回の災害に地球温暖化が影響した可能性はあるのだろうか。

これまで、温暖化が原因でヒマラヤ山脈で氷が急速に溶けており、将来的に、この地域に壊滅的な影響を与える恐れが指摘されてきた

ICIMODは2023年の報告書で、「温室効果ガス排出が現在のレベルで続けば、ヒンドゥークシュ・ヒマラヤ地域(HKH)の氷河は今世紀末までに最大80%が失われる可能性がある」と警鐘を鳴らしている。

報告書には、氷河の融解で「今後数十年間で、洪水や土砂災害が増加する可能性が高まっている」とも書かれており、イザベラ・コジエル副事務局長は「大幅で迅速な温室効果ガス排出削減を今すぐ始める必要がある」と強調している。

ただし、今回の災害については、人間活動の影響を推定する「イベント・アトリビューション」はまだ行われておらず、実際に気候変動が影響したかどうかはわからない。

ヒマラヤの険しい地形や、極端な高低差、地震活動などが影響した可能性もある。

永井准教授は、「今回のイベントの原因が温暖化の進行だとした場合、ヒマラヤの中でなぜこの氷河だけが崩落したのか、というところに説明ができないと思います」とハフポスト日本版の取材に説明。

「例えばヒマラヤ全域で起きている毎年の崩落数を数えて、明らかに増加傾向にあるのであれば、平均気温の上昇との関連付けは議論できると思います」と述べ、さらなる研究が必要だとの考えを述べた。

今回の災害に気候変動が影響したかどうかを判断するのはまだ時期尚早だが、これまで様々な研究から、温暖化が氷河の融解を早めていることが指摘されてきた。

ヒマラヤ山脈は南極や北極に次ぐ膨大な氷を蓄えており、「第三の極」とも言われる。

この地域に住む人や野生生物、自然を守るためには、温室効果ガスを多く排出してきた先進国をはじめとする国際社会が結束して対応する必要がある。

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