スマホの前面カメラで心拍数を測定する
心拍数は、体の状態を映す身近な指標です。
運動や睡眠、ストレス、発熱、疲労などによって変化し、特に安静時心拍数は心血管の健康や死亡リスクとも関連する重要なバイオマーカーとして知られています。
しかし、安静時心拍数をきちんと測るには、一定時間休んだ状態で測定する必要があります。
病院で一度測った値だけでは、その人の日常的な心拍の揺れや長期的な変化までは捉えにくい面があります。
この問題を補っているのが、スマートウォッチやフィットネストラッカーです。
これらは日常生活の中で心拍を何度も測り、休息中や睡眠中のデータをもとに、日ごとの安静時心拍数を推定します。
ただし、ウェアラブル端末には価格や装着の手間、地域や経済状況によるアクセスの差があり、誰もが日常的に使えるわけではありません。
そこで研究チームが注目したのが、多くの人がすでに持っているスマートフォンでした。
今回開発されたのは、受動的な心拍モニタリングである「Passive Heart-Rate Monitoring/PHRM」と呼ばれるシステムです。
心臓が拍動すると、顔の細い血管にも血液が送り込まれます。
そのたびに皮膚が反射する光の量や色は、ごくわずかに変化します。
PHRMは、スマートフォンの前面カメラで撮影した顔動画から、この微細な変化を読み取り、心拍数を推定します。
研究では、参加者の同意のもと、スマートフォンのロック解除時をきっかけに前面カメラで8秒間の顔動画を取得しました。
そして、顔の位置を安定させ、顔部分を切り出し、動画フレームの変化を解析して、心拍数と推定の信頼度を出すように設計されています。
重要なのは、このシステムが「すべての動画から無理に数値を出す」ものではない点です。
暗すぎる場所、顔が十分に映らない角度、大きな動きなどでは、正確な測定が難しくなります。
そのためPHRMは、推定の信頼度が低い動画を除外し、使える測定だけを集める仕組みを採用しています。
開発には485人から集めた19万2353本の動画が用いられ、検証には別の211人から集めた16万2546本の動画が使われました。
検証は、実験室だけでなく、参加者が自分のスマートフォンを日常生活で使う自由生活環境でも行われています。
その結果、心電図を基準にした心拍数測定では、誤差が10%未満となり、消費者向け心拍モニターの業界基準を満たしました。
また、一日の中で得られた複数の短い測定を統合することで、日ごとの安静時心拍数も、参照用のウェアラブル心拍トラッカーに比較的近い値として推定できることが示されました。
では、このシステムは日常生活の中でどれほど正確に心拍を拾えたのでしょうか。より詳細な結果は次項で見ていきます。






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