(CNN) 大型の重い魚に猛スピードで体当たりし、その衝撃で一瞬にしてバラバラの肉片に粉砕する――。「キラーホエール」とも呼ばれるシャチの間では従来、こうした協調的な捕食戦略は知られていなかった。
しかし2024年と25年、ダイバーたちはメキシコ沖の太平洋やカリフォルニア湾で、2件のこうした事例を水中カメラで捉えた。研究チームは22日付の学術誌「フロンティアズ・イン・エソロジー」で、この残忍な体当たりに言及。映像からは食事を目的としている可能性のほか、一種の遊びの可能性もうかがえると報告した。
研究チームは、カリフォルニア湾でマンボウの体を固定して、体当たりを仕掛けるシャチの群れを観察した(Katy Ayres)
研究論文の筆頭著者を務めたキャサリン・エアーズ氏は、「数年前に最初の事例を撮影した時は、自分の目を疑った」と振り返る。エアーズ氏は非営利の海洋保護団体ビニース・ザ・ウェーブスの研究員で、シャチの高速体当たりを初めて映像に収めた人物だ。
エアーズ氏の研究対象はサメだが、カリフォルニア湾でサメを捕食するシャチを目にしたことがきっかけで、シャチの行動への関心が芽生えた。24年7月29日、メキシコのバハカリフォルニアスル州のサンホセデルカボ沿岸でオーシャンサファリのツアーガイドとしてダイビング中、シャチとの遭遇を撮影した。
エアーズ氏はCNNに寄せたメールで、「協力して体当たりする行動自体は、そこまで目新しいものではなかった。以前、ジンベエザメの捕食でも同じように連携して体当たりする様子を目にしたことがある」と語った。
「今回のケースで特異なのは、その結果だ」「マンボウが木っ端微塵に砕け散る光景には、これまで遭遇したことがなかった」(エアーズ氏)
「新たに記録された行動」
今年9月には、別のツアー運営業者がカリフォルニア湾で、シャチがマンボウを捕まえて体当たりする2本目の動画を撮影した。どちらの例でもチームワークの良さがうかがえる。1頭のシャチがヤリマンボウの尾をくわえて固定しているところに、もう1頭のシャチが高速で接近。衝突の直前、マンボウをくわえていたシャチは体を離し、パートナーのシャチが突っ込んだ。その様子はさながら、スイカに激突する貨物列車のようだった。その後、若いシャチが水中に漂う魚の破片をむさぼり、年長のシャチは死骸の残りを引き裂いた。
ヤリマンボウは世界有数の重い魚に数えられ、体重は1800キロ超、体長は3メートルに達する。
シャチは大型の獲物を狙う際、ペアや群れで協力して攻撃を仕掛けることが多い。ただ今回のような魚雷さながらの体当たりや、その後の爆発は目撃例がなく、シャチ行動研究所のディレクター、モニカ・ウィーランド・シールズ氏は「信じられない光景だ」と語る。シールズ氏は今回の新研究には関わっていない。
シールズ氏はCNNに寄せたメールで「こんな事例は聞いたことがない。私の知る限り、新たに記録された行動だ」と振り返った。
シャチはすべて同一の種に属するが、食性は生息地によって大きく異なる。シャチの獲物には魚やアザラシ、シロイルカ、イッカク、ヒゲクジラ、ネズミイルカなどが含まれる可能性があり、それぞれに特化した捕食戦術が必要になる。どうやら、「強い衝撃で粉砕する」戦術もその一つのようだ。
「純粋な楽しみのため」
今回の研究によると、マンボウに体当たりして爆発させる行動は、シャチの子どもや若い個体がより多く死骸にありつけるようにする一助になるという。協調行動や食事の分け合いは、シャチの社会的な絆を強化することにもつながる。爆発して水中に破片が散乱したマンボウの死骸は確かに分けやすく、この行動に対するもう一つの説明になるかもしれない。
ただ、シャチは死んだばかりの獲物で遊ぶことでも知られる。米ワシントン州沖のピュージェット湾では、死んだサケを帽子のようにかぶるシャチの姿が目撃された。シールズ氏によると、アザラシの腸をヒレにかぶせたり、アシカの皮を空中に放り投げたりする個体もいるという。
「巨大な海藻や流木、カニかごなど、他にも様々な物体とたわむれる姿が目撃されている」「多くのケースでは、遊び以外に実用的な理由はないように見える」(エアーズ氏)
言い換えれば、シャチがマンボウに体当たりする行為は、純粋に娯楽目的だった可能性もある。エアーズ氏は、衝突前のマンボウの体には大きな傷があったと指摘。これはマンボウを粉々にする前に、シャチがその身をむさぼり食っていた可能性を示唆する。
「シャチはすでに、最も栄養価の高い部分であるマンボウの内臓を食い尽くしていた」。エアーズ氏はCNNへのメールでそう指摘し、「マンボウを爆発させる行為は直接的な摂食目的ではなく、純粋な楽しみのためだったのかもしれない」と言い添えた。

13 時間前
2



English (US) ·
Japanese (JP) ·