
ウクライナの無人システム部隊K-2旅団の兵士が、2026年6月22日(月)、ウクライナのドネツク州前線で、ロシア軍陣地に向けて飛行する前に、中距離ドローンを離陸地点で運んでいる。(AP通信/エフゲニー・マロレトカ)
By Guillaume Ptak – Special to The Washington Times – Monday, July 6, 2026
【パリ】フランスのパリ郊外で6月に開催された欧州最大の陸上防衛装備見本市「ユーロサトリー」で、ウクライナはもはや外国から軍事支援を受けるだけの存在ではなくなっている。
会場では、ウクライナ企業が無人機、地上ロボット、電子戦システム、戦場管理ソフトウエア、ミサイル、対無人機技術などを展示した。いずれも4年以上に及ぶ本格戦争の経験を反映した製品だ。
ウクライナは依然として防空システムや弾薬を中心に欧米の支援に依存しているが、同国の防衛企業は欧州各国政府や兵器メーカーから有望な協力相手と見られるようになっている。
その変化は参加企業の規模にも表れた。主催者によると、今年のユーロサトリーには約80社のウクライナ企業が参加し、前回の約12社から大幅に増加した。
一部企業はウクライナ独自の商標「ZBROYA」の下で出展し、独自のブースや製品を携えて参加した企業もあった。海外企業との提携も着実に広がっている。
戦争はウクライナを世界有数の防衛技術革新拠点へと変えた。
この変化は、武器の受け手から世界の防衛装備供給国への転換を目指すウクライナと欧州との関係を大きく変え始めている。
一方、欧州企業は、開発スピードや無人機、電子戦、戦場からの迅速なフィードバックに関する教訓をウクライナから学び、自国の調達制度改革や近代化にも生かそうとしている。
ゼレンスキー大統領は3月、欧州連合(EU)外相会合で「防衛分野におけるウクライナの経験は、欧州の安全保障にとって真の保証となる」と述べた。
戦時下でウクライナ政府は国内防衛企業向けに、管理された輸出制度を導入した。2022年2月のロシアによる侵攻以降、防衛産業は急速に拡大したものの、輸出規制や資金不足が成長の足かせとなっていた。
新制度では、防衛企業は一定の兵器や技術、部品を友好国へ輸出できるようになり、その収益の一部は国家防衛基金に充てられる。
狙いは、防衛企業が無人機や電子戦システム、弾薬などを大量生産できる一方、政府需要や予算が生産能力に追い付かないという戦時下特有の矛盾を解消することにある。
輸出や海外との共同生産によって企業は事業拡大の資金を確保できる一方、重要装備については引き続きウクライナ軍への優先供給を維持する方針だ。
この構想はすでに実用段階に入っている。
ドイツのクオンタム・システムズとウクライナのフロントライン・ロボティクスは合弁会社「クオンタム・フロントライン・インダストリーズ」を設立し、ウクライナ設計の無人機「リンザ」をドイツで生産してウクライナ軍に供給している。戦場で培われたウクライナの設計力と欧州の資本・生産基盤を組み合わせた代表例だ。
ユーロサトリーでは、このほかにも同様の提携が相次いだ。
ウクライナ企業ファイア・ポイントはドイツのレーダーメーカー、ヘンゾルトと弾道ミサイル防衛システム「フレイヤ」で提携を発表した。また、ウクライナの防衛技術部門「ブレイブ1」とフランス国防イノベーション庁は、ミサイル技術、無人システム、防空能力に関する共同事業を支援する2300万ドル規模の「ブレイブ・フランス」計画を立ち上げた。
ブレイブ1のアンドリー・フリツェニューク最高経営責任者(CEO)は、ウクライナの強みは個々の兵器ではなく、それを生み出す活力ある技術生態系にあると語る。
その生態系は戦争によって猛烈な速度で進化を余儀なくされてきた。
同氏によると、現在では戦場での攻撃の80%以上を無人機が担っている。前線周辺ではかつて約20キロとされた「キルゾーン」が形成され、無人機が大量投入されるため車両は事実上自由に移動できなくなっている。
ウクライナは人工知能(AI)や自律化技術でも急速に前進している。
フリツェニューク氏によると、200社以上がAI搭載無人機を開発・生産し、70種類以上のAIやコンピュータービジョン・システムがすでに前線で運用されている。
同氏は「重要なのは無人機の数、自律性、(電子戦への)耐性、迎撃能力だが、それらは一体となって開発・運用されて初めて意味を持つ。ウクライナの優位性は、それらを迅速に統合し、実戦で試験し、有効な技術を大量展開できる点にある」と語った。
欧州が今まさに学ぼうとしているのは、その点だ。そして重要なのはスピードだ。 ウクライナの教訓は、軍が単に無人機を増やす必要があるということではない。兵器の進化速度が、従来の防衛調達制度では対応できないほど速くなったということだ。
無人地上システムメーカー「アーク・ロボティクス」の創業者兼CEO、アチ・タカガマ氏は、この戦争は中世末期欧州の火薬の登場に匹敵する転換点だと指摘する。
タカガマ氏は「戦争の力学も、防御と攻撃の非対称性という点でも同じように変化している」と述べた。
同社はウクライナ、エストニア、ポーランドで無人地上システムと関連インフラを展開しており、防衛をロボット工学の一分野と考えるのではなく、ロボット工学の中に防衛を位置付けるべきだとの考え方を掲げている。
タカガマ氏は「今後5~10年で、世界中の軍隊は兵士の10~100倍もの無人システムを保有するようになると確信している」と語った。
その未来では、軍は移動、補給、戦闘、指揮の在り方を全面的に見直さなければならなくなる。
タカガマ氏は「人々はいまだに過去の戦争の発想で無人機対策を考えている。通常の補給隊に無人機を追加する発想だ。しかし、もはや補給隊そのものを使わず、ロボットによる分散型補給へ移行する時代だ」と説明した。
その変化はすでにウクライナで進んでおり、地上ロボットや無人機が補給、負傷者搬送、偵察、直接攻撃に活用されている。タカガマ氏は、補給は「すでにロボット化によって変革された」とし、次の段階では防空、突破、攻撃、突撃任務にもロボットが広く投入されるとの見方を示した。
経済性も変わりつつある。消耗戦では、高価な装備は失うコストが高過ぎ、補充にも時間がかかる。
タカガマ氏は「20万ドルもする地上ロボットでは駄目だ。2万ドル以下でなければならない」と指摘した。
ユーロサトリーでは、海外顧客との商談内容もこの数年で大きく変化したという。
「以前は、これを購入するべきかという話だった。今は、いつ納入できるか、価格は、欧州で生産できるかという話になっている」と語った。
一方、協力関係は相手方、西欧企業側も同様の結論に達している。
フランス企業リフトのダニエル・ネフ共同創業者兼CEOは、ウクライナで起きていることと「技術進化の速さ」を目の当たりにして開戦当初に会社を設立したという。
リフトは長時間飛行可能な無人機、自律型基地局、複数機を広域で統合運用するソフトウエアを組み合わせた航空監視システムを開発している。国境や沿岸部、パイプライン、鉄道など軍民双方の重要施設を24時間監視できるという。
その生産方式にもウクライナの影響が色濃く表れている。
ネフ氏によると、同社は無人機の製造から試験まで約3日で完了できる。これはウクライナで確立された高速開発サイクルに刺激を受けたものだ。また、ロシアのシャヘド攻撃型無人機への対抗経験を踏まえ、迎撃用無人機や対無人機システムの開発も進めている。
「ウクライナで行われている取り組みから大きな刺激を受けた」という。
ウクライナでは、戦場がますます透明化し、戦闘速度が加速し、致死性が高まっている。無人機は目標を発見して破壊し、電子戦は通信や誘導を妨害し、ソフトウエアは探知から攻撃までの時間を短縮し、安価な装備でも高価な兵器に大きな損害を与えられる。
しかし同時に、ウクライナの現状から、戦争は技術だけでは勝てないことも分かる。ウクライナの戦場では依然として砲兵戦や地上戦が中心であり、ぬかるんだ塹壕、延々と続く防御陣地、人員不足といった現実がある。欧州軍には無人機やAIだけでなく、弾薬、整備、予備部品、訓練された要員、そして厚い産業基盤も必要だ。
こうした認識を背景に、欧州全体でも対応が進んでいる。
EUはウクライナの防衛産業を欧州の防衛産業計画に組み込む方針を進めており、防衛基盤の近代化資金の提供に加え、無人機、対無人機システム、防空・ミサイル防衛、海洋安全保障、東部戦線防衛などの共同事業を計画している。
ウクライナにとって輸出や共同生産は貴重な資金源となり、政治的影響力も高める。一方、欧州にとっては、実戦から得られた教訓を最短距離で取り込める利点がある。
ただし、欧州がウクライナの開発スピードを称賛するが、本当に取り入れられるかどうかは依然として課題だ。
タカガマ氏は、政府が複雑な装備を発注し、納入まで何年も待つ従来型の調達制度は、もはや現代戦には適さないと指摘する。
「従来は高性能装備を発注し、10年待って納入されるという仕組みだった。しかし今は全く違う。1~3カ月単位で改良を繰り返し、現場のフィードバックを受けて再設計する」
それこそが、ウクライナ最大の輸出品になるかもしれない。単一の兵器ではなく、「素早く開発し、実戦で試験し、兵士の声を聞き、改良して、有効なものを量産する」という手法そのものだ。

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