「イランの核を阻止」掲げながら核使用チラつかせる、トランプとネタニヤフ究極の“笑止千万なダブルスタンダード”

3 ヶ月前 34

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AI技術の急速な進化により、大きく変わり始めた戦争のあり方。そんな中、人類が長年築いてきた「核抑止」の前提そのものを揺るがしかねない新たな危険性が高まっています。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の「無敵の交渉・コミュニケーション術」』では元国連紛争調停官の島田久仁彦さんが、AIの軍事利用がもたらす戦争そのものの変質について解説。さらにAIと核兵器が結びつくことで、人間による「最後の抑止」が機能しなくなる事態に強い懸念を示しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:核兵器を巡る大国間の綱引きと、その背後で静かに進む新しい兵器による戦争のかたち

戦闘に勝つことを最優先し「核使用」すら躊躇しないAI

ちなみに同様のことが2025年5月、核保有国同士の戦争の危機とまで言われたインド・パキスタン間の軍事衝突時にも起き、両国がAIで生成された真偽不明の映像や動画が、両国のAIによる情報分析に紛れ込んだ結果、不必要なレベルまで紛争が過熱するという事態が起き、両国が核兵器の使用を含む警戒レベルにまで作戦レベルを上げるという事態が生じています。

情報の真偽を見分けることが実質的に不可能なレベルにまで情報が攪乱され、当事者間で互いの意図を読み違える源になってしまったら、過剰な反応の連鎖が引き起こされる危険性が一気に高まります。

まだ最終的な攻撃の承認プロセスは人間が行う“半自動化システム”のレベルで止まっていますが、すでに技術的には可能と言われているLAWS(自律型致死兵器システム)が導入され、AIが人間の指示を待つことなく自身の分析に基づいて攻撃の実施までを自動で行うような戦争になれば、一切のエラーは許されてはなりませんが、AIが自律的に攻撃を行うような事態になれば、だれがそのエラーに気付き、それを正すことができるのでしょうか?

ましてや核兵器の運用にAIが関与し、さらにはLAWSの運用範囲に核兵器が含まれるようになったら、必然的に核戦争の危険性が高まると考えられます。

ちなみに英国King’s College of Londonが行ったシミュレーションによると、AIに核危機を想定した場合、用意した21のシナリオのうち、18のケースで全面的な核戦争に発展し、逆に危機を緩和しようとするシナリオは示されなかったという結果が出たとのことですが、これから推測できることとして、AIは戦闘に勝つことを最優先にし、そのためには核兵器を使用することを躊躇わない可能性があるのではないかと考えられます。

ところで私が紛争調停のお仕事と並行して関わっているへいわ創造機構ひろしま(HOPe)のお仕事では【遅くとも2045年までに核兵器を廃絶すること】を目標に掲げ、核兵器なき真に持続可能な世界づくりのための提案を行い、関心国と共に交渉プロセスへの反映を目指していますが、その提案の中で【核抑止に頼らない新たな安全保障体制の構築】を謳っています。

このゴール設定に対して異論を唱える国はないのですが、「では具体的にどのような代替案が考えられるのか?」と問われた際、答えに窮することがあります。

それは仮に核兵器の廃絶に合意したとしても、抑止力の必要性の議論も廃絶されるわけではなく、「核兵器に頼らずとも、戦争の勃発を防ぎ、他国が攻撃を思いとどまる“何か”が必要」ということには変わりがないはずです。

そのような際、“代替”で考えられやすいのがAI兵器であったり、精密誘導ミサイルのような最新鋭の非核の通常兵器であったりします。場合によっては、実際に多くの死者を出しているSmall armsの拡充というアイデアに繋がってしまうかもしれません。本当にそれでよいのでしょうか?

光栄なことに毎年2月、ミュンヘン安全保障会議に参加する機会を頂き、その次の週にはイスタンブールで開催される武器商人のExpoに招待いただきますが、前者でAI兵器の倫理についての懸念や国際平和の必要性が論じられる反面、後者の会議では、各国の企業が競って最新鋭の兵器およびシステムを紹介し、AI兵器がいかに“使う側の人的犠牲を減らすか”について誇らしげに報告されるという、ジレンマに毎年直面しています。

この“2月の経験・ジレンマ”こそが、今、私たちが直面している国際社会で行われる“べき論”と、実際に戦争の現場において行われている現場の議論とのズレ、もしかしたらダブルスタンダードの正体です。

核によるイラン攻撃で究極の矛盾を行うことになるイスラエル

核弾頭が中東諸国に降り注ぐという最悪のシナリオも

イスラエルの場合、さらにLAWSの開発も非常に高レベルまで進められており、もし核弾頭の小型化に成功していれば、イスラエルが追い詰められたと“判断”して、生存の確保のために周辺国を攻撃することを結審したら、核弾頭がLAWS性能を有する無人ドローンなどに搭載されて、イランおよび周辺アラブ諸国に降り注ぐという最悪のシナリオも覚悟しなくてはなりません。

そのような悲劇的な結末を止めることができるのはイスラエル国民だけということになりますが、果たしてその自律的な抑止力は機能するでしょうか?

今週、野党が連合を組み、新党を立ち上げて反ネタニエフ勢力を結集したとのことですが、ネタニエフ首相が主導する対イラン・対ガザ・対レバノンへの攻撃に対する国民の支持率はまだ高止まりしていることから、何らかの別の論点を見つけられない限りは、薄氷を踏む状況とはいえ、ネタニエフ体制が秋以降も続くことになるかもしれません。

そうなったら、もう何が起こるか予測がつきません(国民の信託を得たとして一気に核使用を含む対イラン攻撃に乗り出すか、“焦る必要はない”と一旦攻撃の手を緩めるのか?)。

国内で整理が行われる以外に考えうるシナリオは、サウジアラビア王国などと相互安全保障協定を締結している“核保有国”パキスタンによるOn behalf of Saudi Arabia and its friendsの攻撃です。

この場合、イスラエルがアラブ諸国を攻撃するという大前提が必要になりますが、イスラエルによる攻撃が核を伴うものなのか否かによって反攻の中身が変わってくることになります。

核の場合は、核による報復も視野に入れた状況になりかねず、そうなると中央アラブ地域は、恐らく最も核のプレッシャーが高まる地域になってしまいかねず、核兵器の相互使用を伴う初の世界大戦のトリガーになりかねません。

その際、自国を防衛しつつ、確実に大きな威力を発揮するためという“安全の確保”と“威力の最大化”を両立するために、AI兵器と核兵器を組み合わせた攻撃が行われる可能性が高まります。その場合、人による抑止が働かないことが予想されるため、AIの自律性が高まるほど、核使用のハードルは下がるものと考えられます。

核使用の脅迫といえば、ロシアが思い浮かびますが、核ドクトリンを改訂し、核兵器を再び“使うことのできる現実的な大量破壊兵器かつ戦略的な兵器”として位置づけたため、使用の危険性が高まったという分析結果があるものの、ロシアが核兵器を積極的に用いることは考えづらく、仮にあったとしても、それはロシアの国家安全保障が本当に侵される恐れが出てきた場合の“自衛的な使用”に限られると考えます。

数人のロシア専門家と話した際に皆が言っていたのは「ロシアは核兵器を持ち、今後も持ち続けることになるが、それはあくまでも力の均衡を保つことと、ロシアへの攻撃を防ぐためのものであり、攻撃のための兵器ではないという認識がシェアされている。またプーチン大統領は『アメリカが唯一核兵器を2度も無差別殺戮に用いた国』という対米非難の究極のカードを維持することを望んでいるため、ロシアが使用することを想定していないと考える」という内容で、ロシアによる核使用は実際にはないという認識を持っていました。

またプーチン大統領は以前「願わくは、核兵器は実際には使えないし、決して使ってはならない兵器でありつづけることが重要」との見解を繰り返し述べていたことから核使用の決定を下すことは無いと考えます。

AIが減少させる「最後のボタン」を押す人間の罪悪感

ただ、核兵器以外の選択肢の積極的な使用には、すでにクラスター爆弾の使用や対人地雷の敷設などにみられるように、一切躊躇わないことが、対ウクライナ戦争で鮮明になっていることと、米中同様、AIの軍事利用の規制と制限には否定的な姿勢を貫いていることから、今後、LAWSが実戦投入されるような事態になれば、すでに対ウクライナ戦線でドローン兵器を投入していることからも分かるように、ロシアも配備・使用することが十分に考えられますし、LAWSの提供国となることも大いに考えられます(ちなみに、現時点でAI兵器およびLAWSのトップ3は米中トルコの参加国で、ロシアはそれに次ぐ位置づけにあるとされています)。

米中ロ仏英の核保有国(N5)とインド・パキスタンを含む核兵器国については、核は相互抑止的な役割を持つに止まっていると考えられ、核兵器の制御と管理は厳格なためさほど心配はいらないと考えていますが、今後、懸念すべきは隠れた核兵器国であるイスラエルと、核保有国であることを公言している北朝鮮による“暴発的使用”であり、核不拡散と共に、国際的に両国が核兵器を“使うことができない”ように制御を強める必要があります。

特にNPT体制に左右されないと言い切る北朝鮮については、監視と圧力の強化が必須です。

ただ、北朝鮮が核兵器を用いる可能性があるのは、北朝鮮が崩壊する際だと考えられることから、今後、進められるべきは金体制の存続と核兵器のコントロールをdecouplingすること、つまり切り離してしまうことです。具体的にどうdecouplingを進めればいいかは、大きな問いですが。

個人的な見解にはなりますが、核兵器は実質的に“使うことができない兵器”になったと考えているため、使われれば破滅的な結末を人類と地球にもたらす究極の自殺兵器であり続けるものの、深刻に恐れるべきものではないと見ています。

ただ、北朝鮮の暴発に加え、懸念すべきは何らかのアクシデントで、核兵器がテロリスト集団の手に渡り、管理の箍が外れる事態が起きることで、国際協調体制が実質的には崩壊したと言われている現在の国際社会においても、核兵器の管理については、決して“現在の幅からは漏らさない”ことが必要です。

それが徹底できる限りは、核兵器は使えない兵器としてのステータスを保つものと考えます。

今後、最も憂慮すべきは、もうすでに使われ始めていますがAIの軍事利用、特にAIが人の手を介さずに自律的に攻撃まで至るLAWSの投入がもたらす危険性の拡大です。

心理学の実験で必ず出てくる“トロッコ問題”で試されるように、人の生死を決定するシーンにおいて、ジレンマに苛まれる現場から離れるほど、最後のボタンを押す人の罪悪感は減少することが分かっていますが、同じ状況がAIの軍事への導入によって人間が殺害の決定を回避するような事態が進むと、私たち人間の中にある感情と理性に基づく抑止の箍が外れてしまうのではないかと懸念しています。

ガザの空にはイスラエルのAI制御の攻撃ドローンが飛行して、ハマスの構成員の殺害のために数十倍の一般市民を巻き添えにしていますし、イスラエルとイランの戦争も、ロシアとウクライナの戦争も、弾道ミサイルが飛び交う一世代前の戦い方に加え、ドローン兵器によるピンポイント攻撃の応酬が主になっています。

戦争が長期化し、当事国間における人的被害が顕著になるにつれ、イスラエル・イラン戦線にも、ロシア・ウクライナ戦争にも、LAWSが導入される度合いが高まると予想できます(すでにトルコ製のLAWSがロシア・ウクライナ戦争に投入されたという情報もありますし、イランがトルコから入手していつでも利用できる状態にあるという情報もあります)。

戦争へのAIの導入で薄れていく人間の「自分事」という感覚

先にも触れましたがこのLAWS(自律型殺傷兵器システム)の一環として、AIが核兵器の運用に関与するようなことになれば、60年以上前に手塚治虫さんが『火の鳥 未来編』で描いたように、AI同士の対立から核戦争を引き起こし、その結果、人類を滅亡させるというシナリオや、マンガ『AIが支配する世界』の中で最先端AIラウームが人類の指導者となって“人類の進むべき方向”を指し示しつつ、AI間のエゴ(どちらが優れているかの争い)に巻き込まれてAI間で核戦争を起こし、人類と地球の破滅と再生を何度も繰り返し、最後はラウーム自身の自己破壊でしかこの悪循環を止められないことに気付いてラウームが自らを破壊するというフィクションに描かれたような世界が具現化するようなことになるかもしれません。

個人的にはAIの活用拡大には賛成なのですが、大事なのは人間が指揮と責任を明確に担い、倫理的な理念と基準に沿ってAIを私たちの決定に対して補完的に用いるという姿ではないかと考えます。

ちょっとSFチックで、大げさな話、または妄想にさえ感じられるかもしれませんが、核兵器という究極の自殺兵器の制御から、私たち人間の倫理が外れ、短期的な人的被害を最小化するという目的を重んじすぎてAIに自律性を与えるような方向に進むのであれば、最後に描いたAIが支配する世界は、あながち空想、妄想の世界とは言い切れないのではないかと感じます。

NPT再検討会議で感じた無力感、紛争調停努力のプロセスの中で聞かされる非人間的な戦争の姿、輝かしく報告される戦争におけるAIの役割の拡大と、その影で生まれるエラーによる多大な人的犠牲の存在の軽視の現状、そして戦争へのAIの導入が拡大されるごとに薄れていく私たちの“自分事”という感覚…。

これらに晒される中、今回のコラムの内容なちょっと悲観的になってしまったように思いますが、いかがだったでしょうか。

いろいろ複雑な思いが錯綜する、今週の国際情勢の裏側のコラムでした。

(メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』2026年5月8日号より一部抜粋。全文をお読みになりたい方は初月無料のお試し購読をご登録下さい)

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