イッカクの「まっすぐなのに螺旋状」牙の構造を分析
「海のユニコーン」とも呼ばれるイッカクの牙は、角ではなく上顎の犬歯が長く伸びたものです。
典型的なオスでは左側の歯が上唇を突き抜けて成長し、長いものでは2mを超えます。
しかもイッカクは80年以上生きることがあり、牙も一生を通じて伸び続けます。
不思議なのは、その表面にははっきりした左巻きの螺旋があるのに、牙そのものは大きく湾曲せず、ほぼ一直線に伸びることです。
一般にゾウなど多くの動物の牙や角は、成長に伴って重力や噛む力の影響を受けて大きく湾曲することが多く、自然界では「長く伸びるほど曲がる」のがむしろ一般的です。
これまでの研究から、イッカクの牙の内部に特殊な繊維構造があることは予想されていましたが、肉眼で見える螺旋とナノレベルの構造がどう結びついているのかは分かっていませんでした。
そこで研究チームは、グリーンランド由来のオスのイッカクの牙を使い、X線CT、X線回折、偏光顕微鏡などを組み合わせて、牙の構造を大きなスケールから微細なスケールまで調べました。
さらに特殊なX線技術を使い、牙の内部にある微細な構造がどちらを向いているのかを3次元で地図のように可視化しました。
では、分析の結果、どんなことが分かったのでしょうか。
牙の大部分を占める象牙質と、その表面を覆うセメント質は、主にコラーゲン線維とハイドロキシアパタイトという硬い鉱物からできています。
解析すると、これらの石灰化コラーゲン線維は基本的に歯の長軸方向へ並んでいましたが、完全な直線ではなく、場所によって規則的に少しずつ傾いていました。
そして、この小さな傾きが積み重なることで、外側のセメント質では左巻き、内側の象牙質では右巻きという、互いに逆方向の螺旋が作られていたのです。
では、この構造は牙の強さや「まっすぐさ」と、どのように関係しているのでしょうか。
より詳細な結果を次項で見ていきます。






English (US) ·
Japanese (JP) ·