「それ違法だよ。捕まるよ」ある未成年が突きつけられた一言。「18歳未満にも選挙で応援する自由を」求めて声を上げた原告の思い

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ある市議会議員選挙の少し前のことだった。

応援したい立候補予定者がいたAさん(17)は、選挙が始まるまでの期間、出馬を予定していたその人の活動を手伝っていた。すると、対立陣営から突然、スタッフを経由して、こう告げられた。

「それ違法だよ。捕まるよ」

伝えられたのは、未成年者が選挙運動をすれば法律に違反するという事実だった。

Aさんは当時、中学3年生。大人に頼まれて動いていたわけでも、何かを企てていたわけでもない。

ただ、「この人を応援したい」と思った人のために、街頭で市民に語りかける際に、簡単な手伝いをしていただけだ。それも、選挙期間外に。

「めっちゃ怖いなと思って。なんでこんなことを言われるんだろうって。そのときの恐怖が忘れられなくて、それからはもう選挙から距離を置いています」

公職選挙法は、18歳未満の選挙運動を全面的に禁じ、厳しい罰則を設けている。

「18歳未満にも選挙で応援する自由を」訴訟は提訴時、高校生だった4人が原告となり、この不合理なルールの撤廃を求めて、国を相手に争っている。

Aさんはその4人の原告のうちの1人。提訴から1年半近くが経った現在も唯一、未成年の原告だ。

7月8日に東京地裁で行われる予定の最終口頭弁論を前に、訴訟を支援する一般社団法人「LEDGE」が原告の思いを聞いた。

「自分の暮らしたい社会」のために

「18歳未満にも選挙で応援する自由を」訴訟の原告のなかで唯一、いまも未成年のAさん
「18歳未満にも選挙で応援する自由を」訴訟の原告のなかで唯一、いまも未成年のAさん

一般社団法人LEDGE

最初にAさんが選挙に関心を持ったのは、冒頭の市議会議員選挙の前年。Aさんが中学2年生の頃に、地元の新宿区で行われた区長選だった。

幼い頃から、両親がニュースを見ながら政治や社会について意見を交わすような家庭で育ち、Aさんも自然と「自分の暮らしたい社会」について考えるようになっていた。

格差をなくしたい。社会に漂う、暗い閉塞感を変えていきたい。小学生の頃から身近にいた、歌舞伎町の「トー横」に居場所を求める友人たちの姿も目に浮かんだ。

両親の不仲や経済的困窮、手を差し伸べられた先で経験した暴力など、それぞれ異なる痛みや孤独を抱える子どもたち。彼らを「取り締まる」のではなく、守ってほしい。そんな街で自分は暮らしたい。

だからこそ「小中学校の給食費無償化」などの公約を掲げ、「トー横キッズは新宿の子。当然、支援や保護の対象とする」と街頭演説をする候補者に出会ったとき、すぐに「応援したい」とAさんは思った。

「僕が新宿に求めていたことを、全部言ってくれた人に出会ったと思って。その方の演説を聞いたのが、『政治が自分ごと化』された瞬間でした」

自分に関わることなのに…未成年だから選挙に関われない

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Unsplash

Aさんはすぐにその候補者に「お手伝いさせてください」と直談判しに行った。しかし、返ってきた答えに衝撃を受けた。

「ありがとう。でも、未成年の子は選挙の手伝いができないんだよ」

自分もこの街で暮らしているのに。自分自身や身近な友達に関わる話なのに。それでも、未成年だからという理由で選挙に関わることができないと知り、「すごく悲しかった」とAさんは振り返る。

それでも諦めず、選挙期間以外で手伝うのであれば問題ないだろうと挑戦したのが、翌年の市議会議員選挙だった。

「それまでは、自分はまだ投票することもできないし、安全な場所から『何とかしたい』と思っているだけで、何もできていないと後ろめたく感じていました」

「だからこそ、この人に自分の思いを託したいと思える人と出会って、一緒に手伝いができた時は、ちょっとでも社会をよくすることに携われている、貢献できている感じがして、すごく楽しかったんです」

そうやって、ようやく掴んだ「貢献できている」という実感も、対立陣営からの言葉でいきなり断ち切られた。

Aさんが歯痒い思いをしたのは、選挙のときだけではない。戦争反対を訴えるデモや、神宮外苑の再開発に抗議する集会に参加したときには、「誰かにやらされているのではないか」「中学生・高校生に政治のことがわかるはずがない」という視線を向けられた。

「中高生だというだけで、自分が行動を起こそうと思うまでたくさん考え、たくさん悩んだことはなかったことにされたのが、すごく悔しかったです」

「18歳未満にも選挙で応援する自由を」訴訟とは

「18歳未満にも選挙で応援する自由を」訴訟の原告たち
「18歳未満にも選挙で応援する自由を」訴訟の原告たち

一般社団法人LEDGE(撮影:雨森希紀)

ここで、Aさんたちが争っている制度について整理しておきたい。

公職選挙法は、選挙期間中に特定の候補者の当選を目的として行う行動を「選挙運動」と定め、未成年者がそうした活動を行うことを一切認めていない。街頭でのビラ配りや電話かけだけでなく、SNSで特定の候補者を応援する投稿をしたり、シェアしたりすることも「選挙運動」に当たる可能性がある。

しかも、違反した場合は、未成年者本人に「1年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金」が科される。さらに最大5年間、選挙権と被選挙権が停止される。未成年者を使用して選挙運動を行った人にも、同じ刑罰が科される仕組みだ。

この訴訟でAさんたちは、選挙運動をする自由は民主主義の根幹を成す「政治的表現の自由」の中核であり、18歳未満の未成年者にも、憲法で保障されている重要な権利を侵害していると訴えている。

一方、国側はこの法律の目的は、未成年者を大量に動員して選挙の公正が害されるのを防ぐこと、そして「心身未成熟な者の保護」にあると、主張している。

原告側は、そもそもこうした立法目的の正当性を支える事実自体、存在していないと主張している。

また、国が主張するような目的を達成するためには、未成年者を動員した大人を摘発すればよく、自発的に応援したいと願う未成年者の「政治的表現の自由」まで奪う必要がないと主張。

さらに、未成年者を「保護」するとしておきながら、違反があった際には未成年者自身も罰すること自体、矛盾していると指摘している。

自分の言葉で司法に届ける

「18歳未満にも選挙で応援する自由を」訴訟原告のAさん
「18歳未満にも選挙で応援する自由を」訴訟原告のAさん

一般社団法人LEDGE

昨年5月に法廷で行った意見陳述で、Aさんはこう問いかけた。

思ったことを主張するのを我慢しなければいけないなんて間違っていると思います。政治に関心を持って、行動までしたいと思った中高生を黙らせておきながら、18歳になった瞬間、「選挙に行こう」「日本の若者は政治参加しなくて困る」これは矛盾ではありませんか?

「裁判に参加して、弁護団の方々と主張を重ねていく中で、この法律には根拠がないことがわかってきました。それを聞いて、本当に悔しくて」

「この法律のせいで行動を縛られたり、疲弊させられたりしたので、その時間を返してほしいなと思いました」

7月8日11:00から東京地裁で開かれる第7回口頭弁論期日では、Aさんら原告が再び意見陳述を行う。地裁での審理は、この日に終結(結審)する予定だ。

「自分の暮らしたい社会」のために、誰かを応援したいと思ったあの日の気持ちは、間違っていなかった。7月8日、Aさんは自分の言葉で、それを法廷に証明しにいく。

「原告たちは、みんな本当に頑張ってスピーチ(意見陳述)を書いてるから、ぜひ聞きに来てほしいです」

「誰だって日々の暮らしの中で、小さな不満やモヤモヤみたいなものはあると思います。そんなとき、それぞれ『こうなったらいいな』と思う方向へ社会を変えるために、自分にできることをやってみる。そんな想いが、この訴訟を通じてどんどん浸透していけばいいなと思っています」 

取材・文/伊吹早織
撮影/雨森希紀、伊吹早織
編集/丸山央里絵

社会の不合理を司法の力で変えようとする「公共訴訟」。LEDGEは、この公共訴訟を支えるために作られた、弁護士やリサーチャー、キャンペーナーなどの各種専門家によるチームです。「変えられない、を変える」。自分らしく、公正な社会を生きたいすべての人々と共に、社会のルールチェンジに挑んでいます。

ここでは、社会課題の解決を目指す「公共訴訟」の背景やトピック、声をあげた原告や彼らを支える弁護団の思いなどを記事を通してお伝えします。

今回ご紹介した「18歳未満にも選挙で応援する自由を」訴訟は、7月8日(月)11:00から最終口頭弁論が開かれる予定です。10代の原告たちが法廷で意見陳述を行いますので、ぜひその瞬間をともに見届けてください。

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