40年間、それは「エビの子ども」だった
40年間、それは「エビの子ども」だった / Image by NIGPAS昆虫とクモの見分け方は、たいてい脚の本数で教わります。
6本なら昆虫、8本ならクモ。
この線引きは、いま地球にいる何百万種もの昆虫にほぼ例外なく当てはまります。
ところが、その昆虫がどこから来たのかとなると、話は急にぼやけます。
昆虫の祖先は、海にいたエビやオキアミに近い甲殻類だと考えられています。
生きものの遺伝子は、世代を重ねるあいだに少しずつ書き換わっていきます。
その書き換わる速さから逆算すると、昆虫の仲間が甲殻類から分かれたのは、およそ5億年前までさかのぼります。
一方で、実物の化石はそこまで古くには届きません。
昆虫の化石記録には、以前から知られた大きな空白があるのです。
昆虫か、その親戚だといえる化石は、4億500万年前のスコットランドの地層に現れたきりです。
そこからおよそ8000万年にわたって、記録はぷっつりと途切れてしまいます。
遺伝子が語る歴史と、岩が語る歴史が食い違ったままになっていたわけです。
研究者はこの空白を「六脚類ギャップ」と呼び、昆虫がどんな姿で陸に上がったのかは長らく分からないままでした。
化石の状態から予想される体の構造 / Image by NIGPASしかしその空白を読み解く鍵になる化石は、実は40年前から人の手の中にありました。
1985年にテキサス州西部のテスヌス層で採集された、標本です。
黒っぽい岩に、黒いシミが乗ったような見た目でした。
同じ岩からはエビやカニに近い甲殻類が出るので、その幼生だろうと片づけられました。
そして標本は、サンディエゴの博物館の引き出しにしまわれたのです。
これを引っぱり出したのが、ケンブリッジ大学のエリック・ティヘルカ氏です。
きっかけは、たまたま手に取ったロシアの古い古生物学の本でした。
そのページに、この標本を写した線画が載っていたのです。
甲殻類の幼生だという見立てが、氏にはどうしても腑に落ちませんでした。
そこで線画を手がかりに標本の行方を追い、引き出しの中で眠っていた実物にたどり着きます。






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