『身も心も』(光文社) - 著者: 盛田 隆二 - 陣野 俊史による書評

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身も心も
『身も心も』(光文社)著者:盛田 隆二

老境の執着、緻密な筆致で

6人の作家が同じテーマで競作するシリーズの一冊。テーマは「死様(しにざま)」。重いが避けて通れない主題だ。

盛田隆二は『身も心も』という意味深長なタイトルの小説の中で、老人の性と生への執着を緻密に描いている。

妻を数年前に脳梗塞で亡くし、息子夫婦と同居している主人公・礼二郎は、家を出たがらない75歳。家族の者から背中を押されるようにして参加した絵画サークルで、11歳年下の岩崎幸子と出会う。なんとなく惹(ひ)かれあう2人だったが、幸子にはとても1人では抱え切れないほどのつらい過去があった……。

小説は、前半、2人の恋を中心に動く。手を取り合うだけで幸福感に満ちる逢瀬。だが幸子が自分の過去を打ち明けるあたりから、小説は別の世界へ移行する。

幸子の長い打ち明け話を聞いた礼二郎が脳梗塞に倒れる。小説の後半は、礼二郎が2度の脳梗塞に見舞われつつ、リハビリを続ける姿を、礼二郎の意識に即して描く。

特に後半が身につまされる。病気やリハビリ中の両親を抱える世代はもちろん、自身が老境に差しかかった人々には、圧倒的なリアリティをもった小説。
【初出メディア】
日本経済新聞 2011年6月29日

http://www.nikkei.com/
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