せっかちな人は「あまり探さない」けれど「飛びつく」
せっかちな人は「あまり探さない」けれど「飛びつく」 / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部研究チームが使ったのは、イギリスで同じ人や家族を何年にもわたって追いかけ、仕事や収入、健康、家庭生活などの移り変わりを記録している大規模な調査のデータです。
チームはその中から、2009年から2023年にかけて会社などに雇われて働いていた2万1000人以上に注目しました。
そして、起業したい気持ちがあるか、実際に雇われる側から自分の事業を持つ側へ移ったか、移った後にいくら稼いだかを調べています。
カギになる「せっかちさ」は、目の前のごほうびをどれだけ後回しにできるかを尋ねる心理学の質問で測りました。この質問は、信頼できることが確かめられているものです。
さらに、年齢や性別、それまでの稼ぎ、危険をどれだけ好むかといった違いの影響も考えに入れて分析しています。
ここで面白いのは、せっかちさが起業にどう効くのかは、理屈の上でもすんなりとは決まらないという点です。
せっかちな人は、起業のチャンスをあまり熱心に探そうとしません。
その一方で、いったんチャンスを見つけると、もっと良いものが出てくるのを待つより、目の前のものに飛びつきやすいのです。
「あまり熱心に探さない」ことは起業を遠ざけ、「すぐ飛びつく」ことは起業を近づけるため、せっかちな人が起業しやすいのか、しにくいのかは、理屈だけではどちらとも言えませんでした。
つまり、データで確かめるまでは、「即断即決の人ほど起業する」とも「気長な人ほど起業する」とも言い切れなかったのです。
起業して稼いでいたのは「せっかちな人」か「気長な人」か
起業して稼いでいたのは「せっかちな人」か「気長な人」か / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部データを分析した結果、軍配が上がったのは気長な人のほうでした。
最も気長な人たちは、最もせっかちな人たちに比べて、雇われる側から起業する側へ移る確率が約50%高かったのです。
また、せっかちさが大きく強まると、起業する確率は全体の平均と比べて約10%下がっていました。
差は、起業した後の稼ぎにも表れていました。
気長さのスコアが高い起業家は、最もせっかちな起業家に比べて、約40%多く稼いでいたのです。
しかも、雇われて働いていた頃の稼ぎを考えに入れても、せっかちな人ほど起業後の稼ぎが低い傾向が見られました。
これは、「起業へ押し出す性格は、後の成績を下げがち」というこれまでよく言われてきた見方とは違う結果です。
気長さは、起業に踏み出す時にも、その後に稼ぐ時にも、プラスに働いているように見えるのです。
研究チームは、せっかちな人は「これで手を打とう」という基準が低く、質の低いチャンスでも受け入れてしまいやすいと考えています。
さらに、お金や手間を先にかける投資や、じっくり練る計画にも力を入れにくいと考えられています。
研究に加わったバース大学の行動経済学者(人の行動とお金の関係を研究する人)クリス・ドーソン氏は、探し続けたり計画したりすることは、お金の投資と同じように、費用はすぐにかかるのに見返りは遅れてやってくる活動だと説明します。
そうした活動を避けがちなせっかちな人は、選べる良い選択肢が少なくなり、気長な人なら断るような質の低いチャンスを受け入れてしまうことがあるというのです。
ドーソン氏によれば、最も成功する起業家は、正しいチャンスを見つけるまでに時間と手間をかけ、見返りが何年も先になるかもしれない早い段階の投資にも前向きなのかもしれません。
起業は素早く動いてチャンスをつかむものだと描かれがちですが、ドーソン氏は決断力も大切だとしたうえで、「私たちの研究は、起業家にとって忍耐はまさに美徳であることを示唆している」と述べています。
研究チームは、起業を支援する取り組みや起業の教育を通じて、長い目で物事を考える姿勢を身につける手助けをすれば、高くつく失敗を減らし、事業の成績を高められる可能性があると提案しています。
起業家の武器は素早さだと思われがちですが、最初に見つけたチャンスに飛びつかずに「もう少し探そう」と踏みとどまれる気長さこそが、稼ぎの差につながっているのかもしれません。
まずは今日、電子レンジの残り10秒を扉を開けずに待つところから、起業家修行を始めてみましょう。






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