「日本人の心意気」赤根ICC所長、教え子呼びかけの署名に笑顔。世界が「リーダーとしてみる」日本政府が問われていること

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国際刑事裁判所(ICC)所長の赤根智子(あかね・ともこ)さんが8月26日、日本記者クラブでオンライン記者会見を開きました。

米トランプ政権から経済制裁の対象に指定された赤根さんは、日本から寄せられた8万2000筆を超える署名や励ましの声について語りました。

「私には制裁を受けるような理由は全くないと断言できます」

高市早苗首相と茂木敏充外相は、米国による赤根所長への制裁について、「日本政府の立場と相容れるものではない」との考えを示しています。赤根さんはこれについて「心から感謝しております」と述べました。

そのうえで、自身が2017年に日本政府の指名のもとICC判事選挙で当選し、2024年3月に裁判官18人の互選によって所長に選ばれた経緯を説明しました。

また、米国政府はICCを「腐敗した政治的組織」であり、国際法を悪用して独立国家の主権を奪ってきたなどと主張していますが、赤根さんはこうした主張について、次のように否定しました。

「米国が言うような、かねてからICCが腐敗した政治的組織であり、いわゆる国際法を悪用して独立した国家の主権を奪ってきたとか、私自身もそれに加担してきたという事実はありません」

さらに、「私には制裁を受けるような理由は全くないと断言できます」と強調しました。

教え子たちが署名呼びかけ。応援は「身に染みてありがたい」「日本人の心意気」

会見では、日本国民から寄せられた支援について赤根さんは笑顔をみせる一幕もありました。

赤根さんがかつて法科大学院で教えた教え子たちが中心になり、オンライン署名を呼びかけています。署名は、米国による制裁の即時撤回と、日本政府が制裁を拒否したうえで赤根さんを支持・保護する具体的な行動を取ることを求める内容です。

赤根さんは、「多くの国民の皆様方からも励ましの言葉や署名活動への参加などを通じて強い応援をしていただいていることについては、身に染みてありがたいと思っており、御礼の言葉もないほどです」と感謝を述べました。

そして「今朝見たところでは、署名がもう8万2000を超えていてですね、私も本当に毎日頼もしく、嬉しく感じているところです」と胸の内を明かしました。

8月26日朝の時点で8万2000筆を超えていた署名は、8月28日の記事執筆時点では12万3000筆を超えています。

こうした動きについて赤根さんは「国民の皆様からの応援は、私を応援するだけではなく、日本人の法や司法に対する信頼の表れでもあり、それを信奉する日本人としての心意気を示すもの、また、こうしたことが自分自身の問題であるとして重大に受け止めているからであると思っています」と話しました。

米国政府による制裁によって、今後もさまざまな不利益が生じる可能性についても触れましたが、「私はその点に関しても日本政府を信頼しております」と語りました。

「ICCは決して負けません」「信念を貫きます」不屈の姿勢

赤根さんは、今回の制裁を理由に自らの裁判官としての姿勢が変わることはないと強調しました。

「私の裁判業務に対する向き合い方が変わることはありませんし、脅威のために押しつぶされるようなことはありません」

また「今の私の頭の中を占めているのは、これからもICCを守り、裁判官その他の職員を守り、今までと変わらぬ業務を続けること」と表明。自分自身のこと以上にICCを守ることに力を注ぐ考えを示しました。

国際社会で重大な犯罪を犯したと疑われる者を中立公正に捜査・訴追・裁判する場であるICCについて、「重大な国際犯罪の被害者にとって、ICCはいわば最後の希望でもあります」と説明しています。

国際社会における「法の支配」を司るICCに対してなされた、今回の米国の制裁について「単にICCのみの問題ではなく、まさに法の支配の危機として捉えていただきたい」と訴えました。

また、「万が一の万が一ということ」として、ICC解体というようなことが起きた場合には「力のある国が力の支配という形で法の支配というのを駆逐していく過程に入ってしまう」「ある意味では第二次世界大戦後の世界に戻ってしまうかもわからない」と懸念を示しました。そのため、「潰れてしまうことはあってはならない」としました。

米国の制裁によって「もはや ICC は機能不全に陥るのではないかというご心配の向き」については、「ICC は決して負けません」と明言しました。さらに、「正義は常にこれと対極にあるものに優越する、いや、優越しなければならない。これは英語で言いますと Justice volition and should prevail となりますけれども、その信念を貫きます」と語りました。

赤根さんによればICCの職員の士気も「非常に高い」といいます。

「皆日本をリーダーとして見ている」米国と同盟国としての対話を続けて

会見で赤根さんが繰り返し語ったのが、日本への期待です。

日本はICCへの分担金を最も多く拠出している締約国であり、赤根さんは「皆日本をリーダーとして見ていると思います」と述べました。

米国がICC加盟国に対して協力停止や脱退を促すキャンペーンを進めていることを念頭に、「弱い国、ひょっとしてアメリカの圧力に負けて脱退してしまうかもしれない国、そういう国々に声をかけて、脱退しないように集団で頑張りましょうと、みんなで頑張りましょうということを言っていただいて、それを実行に移していただくということが一つ」と日本政府に求めました。

さらなる制裁を防ぐため「米国と対応を重ねて、さらなる制裁のエスカレートがないように防いでいただきたい」とも述べました。

さらに、「今後もICCと世界における法の支配を守り抜くための最大限の努力をしていただきたいし、いただけると信じております」と日本への期待を示しました。

日本が米国と長い親密な関係を持っていることについて「同盟国としてICCの重要性やその正当性について日本の見解を述べて、良い意味での対話を続けて、今回のことが米国のさらなるエスカレートした行為につながらないようにしていただけるものと確信しております」と話しました。


昨年は首相官邸からの働きかけを背景に制裁を回避。なのに今年は…

日本政府は、今回の赤根さんに対する米国の制裁に対して何もしなかったわけではないと説明しています。

高市首相は8月25日の会見で、赤根さんを制裁対象にしないよう米国に「累次にわたって様々なレベルで、ぎりぎりまで働きかけを続けてまいりました」として、「弱腰とのご批判は当たらない」と反論。また木原稔官房長官は8月27日の記者会見で、制裁を受けた場合に備え、金融取引に困らないようアドバイスを行った上、手続きも後押しするなど、赤根さんに親身に対応してきたと発言しています。

一方、読売新聞の報道によれば、トランプ政権は昨年も赤根さんへの制裁を検討していましたが、首相官邸による強い働きかけなどを理由に、直前で見送られたとされています。


家では号泣したことも「ここが全ての締約国、そして私たちの正念場」 

赤根さんは終盤、警備担当者からひまわりの花束を渡されたエピソードを明かしました。

「今回は日本の方々から、応援をしていただいていることに胸が熱くなっています。私はある意味、いろいろアタックされることには強いですけれども、こういう温かい心にはちょっとほろっとしてしまってですね、うちではそういう意味で号泣してしまったこともあります。今はちょっとこらえています」

日本政府と国民に向けて、「これからもよろしくご支援のほどお願いいたします。日本の政府にも大きな期待を抱いていますし、世界からも注目が集まっているところです。ここが全ての締約国、そして私たちの正念場だと思っております」と語りかけた赤根さん。

「力の支配」を行う米トランプ政権に対抗する「法の支配」の砦であるICC。世界から「リーダーとして見られている」という日本政府の外交手腕と、具体的な行動が問われています。

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