「大きな報酬」がマウスの学習スピードを向上させる
動物に課題を覚えさせる実験では、これまで「小さな報酬を何度も与える」方法が一般的でした。
例えば、喉が渇いたマウスに課題を行わせ、成功したら少量の水を与えるという方法です。
なぜ報酬を小さくするのかというと、1回あたりの報酬が大きすぎると、動物がすぐに満足してしまい、たくさんの試行回数をこなせなくなるからです。
そのため神経科学の実験では、マウスの1日の必要量から見るとかなり小さな報酬を使い、何百回、何千回と反復させる設計が当たり前になっていました。
この背景には、「学習速度は主に経験の量で決まる」という考えがあります。
何回成功したか、何回報酬を得たかが重要であり、報酬の大きさそのものは学習速度を大きく変えないと見なされていたのです。
しかし研究チームは、この前提を改めて検証しました。
実験では、従来よりも1桁から2桁大きい報酬をマウスに与え、学習の進み方を調べました。
対象となったのは、隠された目標地点を探すナビゲーション課題、力を使って引く運動スキル課題、感覚情報に基づいて判断する意思決定課題などです。
すると結果は、研究者たちの予想を大きく超えるものでした。
通常の小さな報酬では、課題の習得に何百回、何千回もの報酬経験が必要になる場合があります。
ところが大きな報酬を与えられたマウスは、はるかに少ない経験で課題を学習し、なかには数回の報酬経験だけで隠された目標地点を覚えた個体もいました。
つまり、従来の標準的な報酬サイズでは、マウスが本来発揮できる学習効率を十分に引き出せていなかった可能性があるのです。
さらに興味深いのは、個体差が小さくなった点です。
通常、あるマウスはすぐ課題を覚える一方で、別のマウスは長く訓練してもなかなか上達しないことがあります。
しかし大きな報酬を使うと、多くのマウスが短期間で学習するようになりました。
これは、少なくとも今回の課題では、マウスごとの成績差の一部が、学習能力そのものではなく、課題に取り組み続ける力の違いだった可能性を示しています。
では、なぜ大きな報酬は学習を速めたのでしょうか。






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