多数決の堂々めぐりは、表も裏もない「壺」の形をしていたと判明

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多数決で「別の人」が勝ってしまうことがある

「ここで投票」と書かれた看板です(2022年の選挙の日、アメリカ・アイオワ州デモイン)。一票一票を正しく数えても、候補が3人以上いると、全体の結論が輪になって回ってしまうことがあります。「ここで投票」と書かれた看板です(2022年の選挙の日、アメリカ・アイオワ州デモイン)。一票一票を正しく数えても、候補が3人以上いると、全体の結論が輪になって回ってしまうことがあります。Credit: Phil Roeder / Flickr(CC BY 2.0)

選択肢が2つだけなら、民意を読み取るのは簡単です。

引き分けでない限り、多数が好んだ候補が勝つからです。

ところが候補が3人になると、「勝つ」とは何かを決めることさえ難しくなります。

たとえば、アリスが35%、ボブが34%、キャロルが31%の票を得たとしましょう。

いちばん多く票を集めた人を選ぶ方式なら、勝つのはアリスです。

しかし、キャロルに入れた人が全員、アリスよりボブを好んでいたらどうでしょう。

このとき有権者の65%は、アリスよりボブを望んでいることになります。

数え間違いは一票もなく、問題は「何をもって勝ちとするか」にあるのです。

そこで、有権者に順位を付けてもらい、一騎打ちで他の全員に勝つ候補を選ぶ方法も考えられます。

ところがこの方法では、どの候補も一騎打ちで誰か一人には負ける、ということが起こりえます。

3人でこれが起きると、勝ち負けは輪になって回り、勝者が決まりません。

フランスの数学者で哲学者だった、コンドルセ侯爵の肖像です。勝ち負けが輪になって勝者が決まらないこの矛盾は、「コンドルセのパラドックス」と呼ばれています。フランスの数学者で哲学者だった、コンドルセ侯爵の肖像です。勝ち負けが輪になって勝者が決まらないこの矛盾は、「コンドルセのパラドックス」と呼ばれています。Credit: J. P. Lemort P. Mercurj / Wikimedia Commons(Public domain)

フランス科学アカデミーの書記だったコンドルセは、会員を公正に選ぶ方法を探す中で、この矛盾に出会いました。

1951年には、経済学者のケネス・アローが、問題の根がさらに深いことを示します。

アローが挙げたのは、自由に順位を付けられる、一人の有権者が結果を独断で決めない、といった素朴な条件です。

ところが、それらをすべて満たす決め方は一つもないことが証明されたのです(アローの不可能性定理)。

英オックスフォード大学のイアン・マクリーン氏は、「民意というものが存在しないことはよくある」と述べています。

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