(CNN) トランプ米大統領は先月16日、イランの指導者らを「非常に合理的な人たち」と呼び、「つきあいやすい相手」と評価した。さらには「過激化していない」指導部だとも断言した。
ところが今月8日にはほぼ正反対の見解を打ち出し、「まぬけ」で「邪悪」で「最低」な、「汚い手を使う」「人間のくず」とこき下ろした。
トルコで開催された北大西洋条約機構(NATO)首脳会議での発言だ。イランの指導者らが「毎日合意を破り」、「うそとごまかし」を繰り返していると主張した。
トランプ氏がこうしてがらりと変わった態度を見せる間にも、イランがホルムズ海峡で船舶3隻を攻撃したのに対し、米国が報復攻撃に出て、両国間の危うい停戦はこれまで以上の危機にさらされようとしている。トランプ氏は8日、停戦は「終わり」だとまで宣言した。ただしほかの場面では、和平成立に希望をつなぐ姿勢も示している。
6月中旬の楽観的な発言については、のるかそるかの大事な交渉の相手に対するリップサービスだったという見方もできる。そういうことは過去にもあった。
だがイランとの戦争に関するトランプ氏のここまでの実績を考えてみると、まったく別の説明が浮かび上がる。同氏がイランの意図と自身の交渉力を大きく読み違え、イラン側に振り回されるままになってきたという流れだ。
この態度が原因で事態の収拾は3カ月も遅れた(トランプ氏が最初に停戦を発表したのは4月7日だ)。戦争は終わらないまま今年の米中間選挙が近づき、トランプ氏が率いる共和党を脅かす状況になっている。選挙が迫れば、同氏がイランと断固対決し、全面戦争に戻ることは政治的に難しくなる。
トランプ氏がイラン指導部の穏健化を信じ切っていたと言っているわけではない。たとえば同氏は8日、イラン指導部への見方が変わった理由を質問され、「かれらのことが分かってきた」からだと答えた。
とはいえ、同氏はこれまで何度もイランが合意目前だと豪語し、あとはほどほどの形式的な譲歩ともう少しの時間で指導部をゴールインさせればいいだけだと言いながら、結局その通りにはできずに終わってきた。
現時点でトランプ氏の判断ミスを示す形跡は無数にある。
恐らく最も際立ったミスは、イランに対して繰り返し、要求に応じなければ破滅させると脅してきたことだ。その脅迫はほぼ毎回、はったりにすぎないことが露呈した。トランプ氏はたびたび、合意が近づいたから撤回したと主張したが、長続きするような合意はまだ一度も実現していない。
イラン側がすでに、トランプ氏は脅迫を実行に移すだけの度胸がなく、やり過ごせる相手だとの結論に達していたとしても不思議はない。
合意が近いというトランプ氏の主張は根拠のない楽観主義として片づけられそうだが、同氏はそれだけでなく、イランが合意を切実に望んでいるとも繰り返してきた。今から3カ月以上前の3月31日にはすでに、イランが「合意を懇願」していると述べていた。
しかしイランが本当に合意を切望している場合、それにしては意思表示のしかたがおかしいということになる。
最初の停戦が発表されたほぼ直後には、合意の内容をめぐって意見が対立。トランプ氏はイランが違反を繰り返していると主張した。
トランプ氏は4月の停戦合意を発表した際、「ホルムズ海峡の完全、即時かつ安全な開放が条件」だと述べた。その条件が実現することはなかったが、トランプ氏は強引に停戦を続けようとした。
イランはさらに、トランプ政権の覚悟を試そうとするかのような挑発行為を重ねたが、トランプ政権は大したことではないと繰り返し、厳密には停戦違反に当たらないと力説した。
その一例として、イランは5月、ホルムズ海峡で商船を誘導していた米軍艦に攻撃を仕掛けたが、米国防総省は停戦違反の基準を満たさないと述べた。ヘグセス米国防長官は当時、同海峡での米軍艦の行動は戦争とは別物の作戦だと主張し、攻撃は戦争の範囲外との立場まで示した。
先月になってより実質的な停戦合意が成立した後も、現在に至るまで挑発行為は続いている。今回の合意では覚書に文言が明記された。
まず目を引いたのは恐らく、覚書が最初からイラン側の要求に相当偏っていた点だ。そのため共和党から批判の声が上がり、トランプ政権は合意の全体を反映した文言ではないと弁明を試みた。(覚書の文言が実際に何を意味するかについても、意見が対立している)
だがイランの関心は、イラン寄りとみられる暫定合意の受け入れより、ホルムズ海峡の管理権にあるようだ。(覚書は米国に封鎖を解除し始めるよう求めたが、長期的な管理権をどうするかは明言していない)
ただし、過去3カ月の停戦が米国にとってまったく無意味だったということではない。CNNのデービッド・ゴールドマン記者は7日、原油価格が米国内の政治情勢に与える影響の大きさを考えると、ここ数週間の急落はトランプ氏にとってある程度の好材料になると指摘した。また民主、共和両党の政権で国家安全保障の要職を歴任したCNNのグローバル問題アナリスト、ブレット・マガーク氏は先週、米国が時間稼ぎをすることにより、イランに対してさまざまな面で圧力をかけられると主張した。
だが一方で、トランプ政権も今、時間に追われている。急ごしらえの停戦を繰り返したここ3カ月の間も戦争は続き、11月の中間選挙が近づいてきた。少なくとも下院では、民主党がトランプ氏の共和党を大敗に追い込む可能性がある。
トランプ氏はこれまで、全面戦争に戻る気はないと繰り返し強調してきた。政権内部からは、戦争を早く終わらせたいというひそかな本音も聞こえる。同氏は先月、国民が大規模な軍事行動をこれ以上望んでいない可能性を認めた。
全面戦争に対する国内での支持率は驚くほど低いことが分かり、それを再開するシナリオの魅力は間違いなく、日に日に薄れる一方だ。
トランプ氏は1カ月前、イランは米国に協力するふりをして引き延ばしを図っている恐れがあると繰り返したが、8日にも再びその可能性を指摘した。
同氏はNATO首脳会議で、イランについて「合意したいと言いながら実は望んでいない。中断したい、ハメネイ師の葬儀をしたいと言うので、私がそうさせてやれと言った」「そこで今度はミサイルを撃ち始める。いやもう、正気の沙汰ではない」
あるいはもしかすると、これまで何度も何度もあったのと同じことが起きていて、トランプ氏がただそれを認めたくないだけなのかもしれない。
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本稿はCNNのアーロン・ブレイク記者による分析記事です。

7 時間前
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