(CNN) トランプ米大統領の中間選挙の夜は、FOXニュースを激しく批判することから始まった。共和党大敗の責任を保守寄りのFOXニュースになすり付けようとしたが、その主張には無理があった。
だが夜が更ける頃には、トランプ氏はFOXニュースのキャスターたちの電話インタビューを受けていた。FOXの報道を激しく非難しながらも、いかにそのプラットフォームに依存しているかが浮き彫りになった。
トランプ氏は米東部時間深夜0時前、SNSトゥルース・ソーシャル上で、FOXには「敗北を招いた責任がある。『バカ民主党』の反対勢力を繰り返し出演させ、そればかりかもっとひどい行為もあった」と言い切った。
ところが、数分後の電話インタビューでは、こうした理解しがたい論点を繰り返すことはなく、代わりに「民主党おめでとう」とコメント。一部の結果への驚きを口にした。
もっとも、FOXニュースへの短い批判を口にする場面も1度だけあり、実は業界内で高い評価を受けているFOXの世論調査部門を「ひどい」とこき下ろした。
これに対し、キャスターのブレット・バイアー氏は同僚を擁護。「実際、今夜の結果はFOXの世論調査で示されていた情勢に近い」と指摘した。
FOXへの電話でトランプ氏が口にした「もっと善戦すると思っていた」という言葉は、3日夜から右派メディア全体に広がり始めた厳しい受け止め方を象徴していた。
ラジオ司会者のバック・セクストン氏はX(旧ツイッター)に、「時には完膚なきまで叩(たた)きのめされ、負けて当然という場合もある。今夜の共和党がまさにそうだ」と書き込んだ。
「あまりにミスが多すぎた。情報発信の仕方も、候補者の顔ぶれも良くなかった。物価は高騰し、無用の戦争は約束通りには進んでいない。明日になればまた前に進むだけだが、ここから学ぶべきことはある」(セクストン氏)
ただ注目すべきは、セクストン氏がトランプ氏の名前を一度も出さなかったことだ。
多くの専門家の予想以上に深刻だった今回の共和党の敗北。FOXニュースの一部のコメンテーターやMAGA(米国を再び偉大に)派のSNSインフルエンサーたちはその理由を説明しようと、イランとのトランプ氏の戦争やそれに伴うガソリン価格高騰、未達に終わった過去2年間の公約の数々を挙げた。
ただ、その姿勢は慎重で、大統領の政策については批判しても、トランプ氏本人に責任があるとまではなかなか言い切れなかった。
バイアー氏がショーン・ハニティー氏に「もし米国がイランとの戦争に踏み切っていなかったら、今夜の情勢は大きく違っていたか」と尋ねる場面もあった。
ハニティー氏の答えは、「100%そうだと思う」。その後は一転、戦争を始めたトランプ氏の決断を擁護した。
やはりFOXニュースの司会者であるローラ・イングラハム氏も、トランプ氏の「政治的な判断は驚くほど的確だ。ただしイランとの戦争は別だ。これは非常に難しい問題で、十分な説明がなされていない。申し訳ないが、私はそういう見方だ。それに国民は単純に戦争が好きではないのだと思う。戦争に行きたくないという思いが強い」と語った。
FOXニュースのコメンテーターたちは、自分たちの発言がトランプ氏の耳に入る可能性を強く意識していた。
投票所が閉まり始める直前の3日の午後5時台には、トランプ氏はFOXニュースの番組「ザ・ファイブ」で唯一のリベラル派司会者、ジェシカ・タルロフ氏への怒りをあらわにした。
トランプ氏はタルロフ氏を「石のように頭が悪い」と呼び、声も耳障りだと痛罵。番組の別の司会者グレッグ・ガットフェルド氏にもテキストメッセージで反論を送り、ガットフェルド氏はそれを律義に番組内で読み上げた。
タルロフ氏は選挙関係のスパムメッセージでも届いたかのようにこれを受け止め、ガットフェルド氏に「STOP(配信停止)」と返信すればいいのでは、と冗談を飛ばした。
その後、タルロフ氏はXでもトランプ氏に反論。「現実というのは厄介なもの。トランプ氏はもっと現実に向き合った方がいい」と投稿した。
FOXニュースが共和党の選挙結果について悲観的な論調を打ち出す中、トランプ氏はFOXの世論調査の質問やゲストの人選にも不満を表明。今後スケープゴートとして利用していく可能性をほのめかした。
トランプ氏は「FOXニュースの視聴率が大幅に(27%も!)落ちているのは、反トランプのいかれた民主党員を取り上げるのに時間を割きすぎているからだ」と書き込んだ。
FOXニュースの視聴率がこのところ低下しているとの指摘自体は正しいものの、トランプ氏はその原因を忠誠心に欠ける報道内容に求めた。メディア分析の専門家の間では、FOX低迷の原因は共和党有権者の倦怠(けんたい)感にあるとの見方が多く、FOXコーポレーションのラクラン・マードック最高経営責任者(CEO)は「視聴者の疲れ」を理由に挙げている。
トランプ氏は自身の支持率の低さから目を背けている様子で、「問題は彼らであって、私ではない。私の数字はこれまでで最高だ」と主張した。
実際には、トランプ氏の支持率は多くの世論調査で最低か、それに近い水準にある。
FOXニュースを支配するルパート・マードック氏、ラクラン氏の父子がここにきて「ポスト・トランプ」の時代を視野に入れ、2028年大統領選を見据えている兆候もある。
しかし当面の間、FOXニュースとトランプ氏は気まずい関係ながらも共和党支持者という基盤を共有するしかない。トランプ氏が民主党関係者の出演に不満を示すのは、FOXの最も熱心な視聴者層が抱く思いを代弁しているとも言える。
トランプ氏はバイアー氏との電話インタビューの数分前にも、FOXニュースの有識者陣にデブラシオ元ニューヨーク市長が加わっていることに異議を唱えていた。
トランプ氏の書き込みによれば、デブラシオ氏は「狂人のようにわめき散らしていた」とされる。
デブラシオ氏が実際に語っていたのは、「庶民的な経済メッセージ」が米国で持つ力についてだった。共和党支持者はトランプ氏への抗議を込めて民主党候補に票を投じた――。それがデブラシオ氏の指摘だった。
◇
本稿はCNNのブライアン・ステルター氏による分析記事です。

1 時間前
1








English (US) ·
Japanese (JP) ·